記憶の中の女達〜(42)聴こえて来た“トロイメライ”-第89話
作家名:淫夢
文字数:約4130文字(第89話)
公開日:2022年6月17日
管理番号:k057
この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。
私は、静子を傍のボックスのソファーに横たえ、急いで全裸になる。
静子は眼を閉じて熱く喘ぎ、開けた胸元から露わになった二つの乳房を上下させていた。
江戸小紋の裾が捲れ、真っ白な太腿が覗いていた。
私は静子に覆い被さって片手で抱き、再び乳房を口で愛撫しながら、裾を割った。
「い、いやっ、は、恥ずかしいっ」
当然、ショーツも着けてはいない。
静子が喘いで裾を正そうとする、その手を払い除けて露わになった恥部を視詰める。
昔からそうしていたのか、夥しく生え茂った恥毛の叢に覆われた茶褐色の女陰の襞が滴った粘る愛液に塗れてうねった。
乳房を愛撫しながら、女陰の襞を指で開く。
滴った愛液に塗れた女陰の襞が妖しく蠢き、大粒のクリトリスが勃起していた。
裸身をずらして静子の女性器全体を口に含んだ。
「ああっ、い、良いっ」
静子が尻肉を浮かせ、女性器を私の口に向かって突き出した。
静子が、私とのセックスに心身を委ねたのだろう、私が裾を腰の上まで絡げると静子が自ら袋帯を解いた。
私は江戸小紋を完全に開けさせ、成熟した尻肉の下から伸ばした手で乳房を愛撫しながら、女陰とクリトリスを吸い立て、舌で舐め上げ、膣孔に二本の指を挿入して膣粘膜を擦り立てた。
「ああっ、こ、こんなんっ」
静子が眼を閉じたまま快感に眉を顰め、美しい唇から熱い喘ぎを洩らして裸身を仰け反らせ、私の掌に乳房を突き出し、尻肉を浮かせて私の口に向かって女性器を突き出す。
静子の裸身が痙攣を起こし、私の指を咥えた膣粘膜が収縮弛緩を繰り返し始めた。
このまま指で愛撫を続けると、潮を噴いてしまいそうだった。
和服を汚すと困るだろう。
私は指での愛撫を軽くした。
「い、いやーっ、イ、イクわっ、イ、イクイクーッ」
それでも、静子がエクスタシーの絶頂を極め、和服を乱しに乱して何度も痙攣する裸身を仰け反らせた。
尚も熱く喘ぎ、女性器を突き出したまま、美しい裸身を悶えさせる妖艶な静子の恥態に、痺れるような射精感が生まれる。
熱い喘ぎが洩れ続ける唇を貪り、乳房を揉み立てながら、勃起の先端で女陰の襞を別け、愛液に潤った膣孔に潜り込ませた。
「ああっ、い、良いっ」
静子の熱い愛液に潤った膣粘膜が、私の勃起を根元まで咥えて収縮弛緩を繰り返す。
憧れの静子とのセックス。
一度だけなら、尚更時間を掛けて愉しみたい。
少し冷静な自分を取り戻し、ゆっくり抽送するが、それでも、粘り気のある愛液の淫猥な濁音が響く。
ふと、気付くと、“引き潮”のカラオケが鳴っていた。
憧れていた静子と最初で最後であろうセックスをしているのに、私は意外に醒めていた。
“引き潮”はセックスそのものの歌だ、と想う。
抱き合い、愛撫し合い、互いの心を充たす熱い愛情と、身体の奥底に生まれた快感の波が次第に大きくなり、ついには共にエクスタシーの大波に飲まれ、“You’re love!You’re real!”。
何時も、何時までも、永遠に続くこの一瞬。
そして、やがて波が鎮まって行き、ゆっくり引いて行く。
高校生の頃、何度か静子の部屋で、二人っきりでこの曲を聴いた。
あの頃、辞典で調べて、この歌の詩の意味が解っていたら、想い切って静子を抱こうとしたかも知れない。
静子は英語が得意だったし、勉強好きだったから、知っていたかも知れない。
そして、応じてセックスしてくれたかも知れない。
そうして、静子とずっと交際ったら、私の人生も静子の人生も変わったかも知れない。
かも知れない、ばかりだ。
乳房を緩やかに愛撫しながら、妖しく蠢いて私の勃起を咥えている膣粘膜の感触を愉しんでいると、“引き潮”の演奏が終わった。
そして、あの頃、何時も私に向けてくれた清純な微笑みを湛えた美貌が脳裏に浮かんだ時、何時ものように、耳の奥に“トロイメライ”が聴こえて来た。
それは、中学時代からずっと変わらなかった。
静子を想い浮かべる時、必ず“トロイメライ”が耳の奥で鳴っていた。
今の静子も、年齢こそ重ねたが、清楚で上品で美しかった。
しかし、眼の前で、江戸小紋の開けた胸元から豊かな乳房を突き出し、裸身をくねらせ、裾を大きく絡げて尻肉を振り立て、愛液に塗れた女陰で私の勃起を咥え込んでいる静子は、長い年月、私の心の中に存在した静子ではなかった。
判っていたはずだった。
希実枝と同じだった。
恋心を覚え、憧れ続けた、想い出の中の清純可憐な美少女。
43年生きて来て、様々な体験をして様々な想いをし、傷付き、立ち直り、勿論、数限りなくセックスを繰り返し、心も肉体も、成熟した女性へと変貌していた。
今、現実に、眼の前で恥態を曝している静子は、幼い恋心を覚えていたあの頃の静子ではないのだ。
やはり、希実枝と同様、想い出のままで心に秘めて置けば良かったのではないか。
「ああ、し、してっ、ねえっ、イ、イカせてっ」
静子が私の両腕を引いて私に抱き着き、女性器を何度も突き出した。
やっと我に返る。
「中でも良いのか?」
「だ、出してっ、ちょ、ちょうだいっ」
しかし、勿論、静子とのセックスに後悔はなかった。
私は、静子に覆い被さり、豊かな尻肉を抱えて勃起を激しく抽送した。
「ああっ、か、かんにんっ、イ、イクわっ、イ、イクイクーッ」
静子が“かんにん”と叫んだ。
真に京女であった。
25年の年月、京都で暮らし、京都の男性とセックスを繰り返した証であった。
一瞬、覚め掛けたが、静子を強く抱き締め、激しく抽送した。
尻肉を大きく浮かせ、女性器を突き出したまま裸身を痙攣させ、エクスタシーの絶頂を極めた静子の膣粘膜奥底に、夥しい精液を噴き出していた。
ボックステーブルの上のティッシュを取って静子の女性器を拭ってやり、自分で勃起を拭っていると、起き上がった静子が私に背を向けて立ち、江戸小紋と肌襦袢を開けて皺を伸ばしながら、着付け直した。
「やん、こ、こっち、み、視ないでっ」
私の精液が流れ出たのだろう。
静子が私に背を向けたまま裾を絡げ、膝を割って女性器を突き出し、ティッシュで拭った。
私も洋服を身に着け、カウンターに座った。
まとめていた髪が乱れたせいか、止めずに垂らし、カウンターに戻ってロックと水割りを作った。
「あんた、随分、女、泣かしたんやろ?」
静子が上品な京女に戻って、恥じらいを残しながらも私を睨んだ。
しかし、あからさまで下世話な言葉と口調は、さすがに気の強い漁師町育ちであった。
私とのセックスで、それ程感じて、満足してくれたのか。
それを言うと、静子に恥をかかせる。
「泣かしてはいません。悦んでいただいただけです」
「ア、アホな事言わんといて」
それでも、私とのセックスにのめり込み、自ら勃起の抽送を催促し、エクスタシーの絶頂を極めた自分に恥じらったのか、官能を浮かべて視線を逸らした。
あっ。
フェラチオさせるのを忘れていた。
30年近く憧れ続けた静子とセックス出来る、余りの興奮に、何時もの自分を失っていた。
今から。
無理だろうな。
「再婚するのか?」
「未だ判れへん。こんな歳になって再婚やて、照れ臭いやんか」
再会した時からずっと故郷訛りだった静子が、京都弁を使うようになった。
さっき、エクスタシーの絶頂を極めた瞬間も、無意識であっただろうが、“かんにん”と叫んだ。
やはり、私が初めて恋心を自覚した頃の静子ではなく、30年を経て成熟した京女だった。
「お前、未だ若いよ。良い女だし」
「あら、喜ばせてくれるやんか。せやけど、もう、何にも出えへんよ」
静子が、軽く睨んだ。
「また来るよ。元気でな」
「うん、あんたもな」
私はロックを一気に飲み干して、立ち上がった。
静子が入口の鍵を開けてくれた。
軽く肩を抱いて、軽くキスをすると、静子も軽く応じて来た。
さらに、唇を貪るようにすると、静子も応じて来た。
私の悪い癖で、無意識に小紋の袖から手を挿し入れ、乳房に触れる。
「あ、あかんっ。ま、また、ほ、欲しなるやんか」
やっと、静子が唇を離して喘いだ。
私も、一度だけで良いと想った。
祇園の雑踏を駅に向かう私の耳の奥で、“トロイメライ”が鳴り続けていた。
静子とセックスしたいとの想いは叶ったが、心を占めるのは、たった今セックスした静子の妖艶な痴態ではなく、清純な微笑みを浮かべたあの頃の静子の美貌だった。
それからまた5年経った。
私は京都滋賀統括部長になって京都支店に勤務し、週に一度くらい静子の店に飲みに行くようになった。
静子は、あの夜のセックスを忘れたかのように、昔からの幼馴染のように私に接した。
私も、火事で焼け出されて妻の実家に帰していた妻の芙美子と娘を呼び寄せて一緒に暮らすようになり、男児も授かっていて、性欲も充分充たされていたので、淫蕩癖は現れてはいなかった。
抑え込んでいた、と言うべきか。
さらに5年経ち、会社が乗っ取りに遭い、役員だった私はいきなり解雇された。
その頃、私は、セックスを拒まれ続けていた妻に耐え切れず、別居して大阪でワンルームを借りて仕事を始めたので、再び静子とは疎遠になった。
今から5年程前、東京在住の、かつて“隣り合わせでセックス”していたTと再会してメールで親交を深めていたが、ある時、彼が京都観光に来ると言った。
私は、彼と待ち合わせ、想い付いて静子の店を訪ねた。
未だ営業していた。
10年振りであった。
いきなり店に入ると、静子は、相変わらず上品な京女のままで年齢を重ねた美貌を私に向けたが、前のように泣いたりはしなかった。
「あら、懐かしいやんか」
三人で酒を飲み、近況を語り合う。
「もう、女遊びしてないやろね?」
「はい、多分、です」
「ぼくは、淫蕩だった昔の彼は知ってるけど、今はどうなのか知らないから、何にも言えません」
横でTが笑った。
その二日間、三人で京都巡りを楽しんだ。
Tは、春は桜、夏は祇園祭、秋は紅葉の見物に京都を訪れるようになり、その度に静子も付き合ったが、私が与論島に移住してからは、Tの観光ガイドは静子だけでするようになった。
そして、移住を機会に三人でLINEを始めた。
静子が、「母親を看取ったら、私も与論島に移住するから、一緒に住む家探しといてな」と言い始めた。
優依も、夫と離婚するか死別するかしたら、与論島に移住すると言っている。
妻の芙美子も、3年後に定年退職したら移住すると匂わせている。
さて、三人ともセックスは出来ないだろうが、楽しくなりそうだ。
(続く)
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