記憶の中の女達〜(40)“ナナハンレディース”の二人-第83話
作家名:淫夢
文字数:約3550文字(第83話)
公開日:2022年5月6日
管理番号:k057
この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。
英会話教材の販売会社が倒産して、次の仕事を探していたら、オーナーが、何か重大な変化が起こったのだろうか、東京を引き揚げて愛媛の実家に帰る事になったから、これからは援助してやれないので、自立しろと言った。
高校時代の悪友に誘われ、客として行ったゲイバーで、いきなりアルバイトを頼まれるという奇妙な関係が始まり、それから10年余りを共に過ごし、私の希望を適えてくれて“R/Z”をやらせてくれたオーナーとの付き合いも、これで終わる事になる。
いや、オーナーと出遭い、共に過ごし、“R/Z”をオープンして貰い、7年間やらせて貰ったからこそ現在の私がある、という意味では終わってはいない。
社長愛人のおばちゃん、ピンサロのおねえさんと共に、私の人生を決定付けた大変な恩人である。
10年程前に、愛媛県内の、何ヶ所かの市役所に問い合わせたら、既に他界してしまっていたが、幾ら感謝してもし切れない程の恩を受けた。
英会話教材業界での就職が最も簡単だったが、英会話業界は既に悪評に充ちていたし、薄汚い部分も良く知っていた。
物は試し、と、求人情報誌の一番デカかった営業マン募集の広告に応募し、採用されてしまった。
成り行きで、その不動産会社に入社し、営業にも馴れた頃、浩美に迫られる。
「もう結婚しても良いでしょう?パパとママも、あなたを認めてるし」
私は、ついに、これもほとんど成り行きで、浩美に圧し切られるように結婚した。
ロックの世界に戻る、という想いも心の隅にあったが、演奏活動を辞め、“R/Z”を失った今、私の居場所はないように感じた。
しかし、結婚の為にロックの世界から離れるのであれば、優依の時にそうしてやれば良かったのではないのか?
取り返しのつかない想いが何度も心を占めた。
当時、高額所得者が、立地の良いワンルームマンションを税金対策用に購入し、賃貸物件として運用し、将来の資産価値上昇を狙う、というシステムが静かなブームを起こし始めていた。
医者、弁護士、会社経営者などのリストで電話営業をして、簡単に説明して興味を持たせ、アポイントを取って訪問し、詳しい説明をして契約して貰うのだ。
私は、英会話教材販売でも電話営業を経験していて、違和感がなかったせいで、自分でも驚くほど成績が上がり、英会話教材の営業時代のように、入社三ヶ月で主任、一年後には係長に昇進した。
英会話教材販売業界がそうだったが、この投資用不動産の販売業界も、そして、関西に移住してから就職した不動産会社も同様だったが、営業会社というのはやたら、成績発表会というのをやりたがるものらしい。
しかし、そのおかげで私は、入社した年の最優秀新人賞、半期最優秀社員賞、半期最優秀指導者新人賞、翌年は半期と年間の最優秀指導者賞を貰い、賞金だけで300万くらいになった。
やはり、振り返って、どうして蓄えて置かなかったのかと、後悔する。
入社一年目の、私が係長に昇進した、年度末の成績発表会。
一流ホテルの会議場で行われ、その後はやはりホテルの宴会場でパーティーになり、その後二次会、三次会に行く。
新宿西口のラウンジでの三次会が終わった時には、私、総務部の亮子、営業部長と設計部主任の女性の4人だけになっていた。
営業部長と設計部主任との不倫関係は社内で公然の秘密であり、私と亮子は邪魔者であった。
ここは、気を利かせなければ。
「駅まで送るよ。家は何処?」
亮子に尋ねる。
「西武新宿線の都立家政です」
私は亮子と歩き出した。
亮子も割と飲んだはずだったが、足取りは意外に確かであった。
地味な貌立ちではあるが、涼やかな眼差しと何時も濡れたような唇がセクシーな女性だった。
私より4歳下の26歳だったが、社内では私より先輩である。
西武新宿駅の改札まで送ると、亮子が振り返った。
「係長、帰っちゃうんですか?」
何だ?
亮子の表情を覗う。
少し拗ねた表情で私を視る眼が、酔いも手伝ってか、少し潤んでいた。
「いや、家には、遅くなったらサウナに泊まるって言ってある」
そう応えると、亮子が券売機で切符を買い、私によこした。
「私、独りだから」
良いのか?
私は既婚者だぞ。
総務部なら知っているはずだ。
亮子がバッグから定期入れを出して先に歩き出した。
後を追う。
終電近くの電車内は、それでも比較的混んでいた。
結婚して3年、初めての浮気になるのか。
結婚生活中、浮気した事はなかった。
浩美と結婚するまでは、淫蕩の限りを尽くして来た。
結婚という形式は取らなかったが、心から愛し合った蓉子、優依、千尋と交際っている間は、他の女性には眼もくれなかった。
眼をくれた事は何度もあったが、心中の淫蕩の虫を抑え込んでいた。
はずだ。
と、想う。
ような気がする。
浩美と結婚して三年間、「マスオさん」生活を我慢し続け、ついに離婚を考えるようになっていた。
両親のいる母屋と玄関が別の二階で生活していたが、食事は親と一緒で、食事中の会話はなし。
テレビを観るのも母屋の応接間だったが、寝そべってはだめ。
風呂も母屋にあったが、真夏の風呂上りに、パンツ一枚で歩くのもご法度だった。
私の母親は、池坊の華道と茶道の師範で、近所の女性に教えていたが、指導している時でさえ、真夏はシュミーズ姿だった。
親しくしているおばさん、親戚のおばさんが家にやって来ても、夏場は乳房丸見えの夏服だった。
近所のおばあさんの何人かは、私達が遊んでいる傍の、自宅の裏庭でスカートを絡げ、立小便をしていた。
そんな子供時代を過ごした田舎者の私は、何度も息が詰まりそうになっていた。
もっときつかった事があった。
結婚した時、浩美は25歳だったが、信じられないほど親離れしていなかったのだ。
二階で、気兼ねなくテレビを観たくて、3万円くらいの中古の小型テレビを買おうとしたら、「パパに相談してからにして」。
5万円の中古のフォルクスワーゲンを買うのに「パパに相談してから」。
二階のテラスに小型の物置を買って置こうと浩美に話したら「ママが厭がるかも知れないから、訊いてみて」。
一事が万事で、何かの話で、私と両親との意見が別れた時、浩美は必ず両親に味方した。
私は、浩美に対して、浮気という言葉はもうあてはまらないほど、愛情が醒め切っていて、契機があれば、自分からでも離婚を切り出そうと想う程、私の気持ちは固まっていた。
浮気?がばれて離婚して、慰謝料を請求されても払えるくらいの蓄えはあった。
都立家政で降りて少し歩いた住宅街に入った辺りで初めて亮子が腕を絡めて来た。
乳房は小振りだがしっかりその存在感を肘に伝えて来る。
暫く歩いてワンルームマンションの2階に上がり、亮子がバッグから鍵を出してドアを開ける。
灯りを点けた亮子を抱き寄せてキスを貪ると、亮子も私に抱き付き、軽く呻いて応じて来た。
唇と舌の蠢きはそれなりの男性経験を感じさせた。
キスを愉しみ、亮子の洋服を脱がしながら、部屋を覗う。
モスグリーンのカーテンに茶系の壁紙、ピンクの花柄のベッドカバー、本箱、テレビ、二人掛けのテーブル、ミニキッチンの横にユニットバス。
ワンルームマンションの間取りなどほぼ同じだ。
男の雰囲気はなかった。
「シャワーを」
淡いピンクのブラジャーとショーツを剥ぎ取る。
私は応えずに亮子をベッドカバーの上に横たえた。
小振りだが引き締まった乳房を口で愛撫しながら急いで全裸になり、何時もの姿勢になる。
引き締まった尻肉の下から伸ばした両掌で乳房を揉み立てながら、女性器全体を口に含んで吸い、女陰の襞とクリトリスを舐め、吸い立てた。
「ああ、は、恥ずかしいっ」
湧き出る愛液の淫猥な味が口一杯に拡がる。
「い、良いっ、ああ、そ、それっ」
亮子が熱い喘ぎを洩らし、乳房と女性器を私の愛撫に向かって突き出す。
亮子の裸身が痙攣し始め、熱い喘ぎがさらに昂まるに連れて、粘り気のある濃い愛液が口の中に流れ込んで来て、尻肉と乳房がさらに激しい愛撫を催促して蠢く。
「だ、だめっ、イ、イクわっ、イ、イクイクーッ」
望み通り、愛撫を強めてやると、すぐに軽くエクスタシーの絶頂を極めた。
官能に塗れた表情の亮子が痙攣の残る裸身を起こし、無言で私の勃起を握って唇を宛がった。
フェラチオも相応に上手かった。
しかし、私にしては飲み過ぎたからか、フェラチオを堪能出来てはいても射精感が湧いて来ない。
そもそも、一時間前まで、亮子とセックスするなど想像もしていなかったし、入社して一年、しょっちゅう貌を合わせていたが、一度も、良い女だとか、セックスしてみたいとか、感じた事のない、単なる会社の先輩の女性でしかなかった。
それがいきなりの成り行きで彼女の部屋に誘われ、全裸でフェラチオされているからといって、すぐに射精出来るほど、性欲が強い方ではない。
はずだった。
挿入して刺激すれば、射精するかも知れない。
「もう挿れるよ」
(続く)
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