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記憶の中の女達〜(38)社長室長-第79話



作家名:淫夢
文字数:約3890文字(第79話)
公開日:2022年4月8日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

英会話教材の販売会社に勤務して1年、相変わらず大変な英会話教材ブームで、私は時流にも乗り、また幸運にも恵まれ、営業課長を務めていた。

フル コミッションという給与体系のせいで営業マンの入れ替わりが激しく、それでも常時6人くらいの部下がいて、週に15〜20万くらいの収入があった。

毎晩のように部下を連れて飲み歩いても預金残高が減らなかった。

振り返る度に、蓄えをして置けば良かったと、昔も今もお金に無頓着な自分の性格が恨めしい。


ある日、私は部下の接客の結果待ちで、他の部下を帰らせ、独りで会社に残った。

契約が取れたという報告を受け、社長に報告してから帰ろうとしたエレベーターホールで、室長の久美さんと出遭った。

「契約だそうですね。おめでとうございます」

「ありがとうございます。社長と一緒じゃないんですか?」

「社長は課長の内線を受けて、すぐ帰られました」

今日は、社長は他の女か。

51階建て高層ビルの45階のオフィスなので、夜は8基もある台数の稼働を減らしていて、なかなかエレベーターが来ない。

斜め後ろに立って久美さんを眺める。


社長室長の久美さんは確か29歳、もう一人律子という社長秘書がいた。

社員数が100人くらいの会社で、社長室長と社長秘書の仕事の区別も判らず、二人も必要だとは想えなかったので、社内では、二人とも社長の愛人だという噂だった。

尤も、先輩の営業部長も自分の恋人を秘書で使っていて、そんな会社であった。


久美さんは、ノーブルな和風美人で、体型は華奢で痩せていて腕も脚も細いのに、砲弾型の乳房がブラウスを圧し上げていた。

しかし、全体の面積と容積は大きくなく、所謂巨乳と言うイメージではなかった。

エレベーターのドアが開き、先に乗り込んでB1のボタンを押し、久美さんを眺めていたくて、後から乗り込んで来た久美さんの背後に少し離れて立つ。

久美さんが付けている、上品な薫りのオードトワレが漂っていた。


「これからどうなさるの?」

久美さんが、ふと、私に向き直った。

「何処かで、少し飲んで帰ろうかと」

久美さん程の美人と貌を合わせると心がときめく。

「お独りで?」

「困った事に相手がいません」

久美さんが手の甲を口に当てて小さく笑い、小首を傾げて微笑んだ。

「大学時代の友人が表参道にショットバーをオープンしたの。これから開店祝いに行くのだけれど、ご一緒しません?」

久美さんが私を誘う?

表情を窺うと、微笑んだまま私の応えを待っていた。

「私?ですか?」

「そうです」

「あなたと?ですか?」

「はい。お嫌?」

「とんでもない」

「じゃあ、行きましょう」


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ビルの地下街の花屋で久美さんが花束を買い、タクシーを拾って表参道に行く。

以前、千尋と一緒に昼食を摂った想い出の、2階にガラス張りの喫茶店がある、Vレコードのビルの横手の路地を入って少し歩いた、小さなビルの2階にあった新装の店に入る。


千尋の悲しげな美貌が脳裏を覆う。

先日、再会した時、“また逢いたい”と言ったら“もうあんな想いはしたくない”と拒まれた。

もう忘れよう。

いや、忘れる事など出来ないのだが。


「あら。久美子、来てくれたのね」

久美さんの友人らしい女性が久美さんから花束を受け取り、私に軽く会釈した。

他に客はいない。

モノトーンの店内にオールディーズが流れる、好みの店だった。

奥のテーブルに案内され、年上の久美さんを壁側のシートに誘い、私は向かい合って座る。

「課長、こっち」

久美さんが、子供のように少し膨れっ面を視せて自分の傍のシートを掌で叩いた。

久美さんの隣に座り、私はワイルドターキーのロックのダブルを、久美さんはマテウスロゼを頼む。

「恋人?」

飲み物を運んで来た友人が久美さんに微笑み掛ける。

“違います”と言い掛けると、驚いた事に久美さんが私の腕に腕を絡めた。

「そうよ。良いでしょう」

あらら。

「あら、お熱い事」

友人が微笑んで背を向けた。

肘に触れている久美さんの乳房の膨らみを一瞬愉しむ。

すぐに離れるだろうと想ったが、久美さんの乳房は私の肘を圧し続けた。

どういうつもりなのだろう?

乾杯してからもそのままだ。

しかし、私にとっては願ってもない状況ではあった。

営業の私と社長室長の久美さんに、会社の話以外に共通の話題などあるはずもないが、そんな話はムードを壊すだけである。

店内で鳴っているオールディーズの話や、友人を交えて久美さんの大学時代の話などをしているうちに1時間程経った。

私も久美さんも一度トイレに立ったが、戻るとまた久美さんが腕を絡めて来た。

久美さんが少し酔ったのか、二度目にトイレから戻る脚取りがふら付き、時々深呼吸をするようになった。

久美さんが3杯目を空にした。

もう帰るだろう。

私もウィスキーを飲み干した。

私は女性と酒を飲む時、女性のペースに併せるようにしていた。


その時だった。

久美さんが、私の腕を抱えたまま、私に向いて座り直した。

「課長ってぇ、こいびろがいるのにぃ、セックスフレンロもぉ、いるんれすってねぇ?」

いきなり何だ?

「何でそんな事?」

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久美さんの貌を視ると瞼が下がっている。

呂律も完全に回っていない。

「皆、うわらしれるわよぅ」

参ったな。

照れ臭くなって、片手でタバコを咥え、火を点ける。

久美さんが私の腕を揺すった。

「わらしはぁ?」

「はい?」

何だ?

「だららぁ」

また久美さんが腕を揺すった。

豊かだが、引き締まった乳房の谷間に、私の腕が嵌った。

「わらしはぁ?らめっ?」

久美さんが子供のように、愛らしく小首を傾げた。

「久美さん?が?私と?ですか?」

「そおよぉ?わらしとぉ、課長がぁ、セックスするのぉ。らめっ?」

酒を飲むと淫乱になる女性がいるのは、聞いて知っていたが、まさか久美さんが?

酔っているせいで上品な美貌に艶香を浮かべる久美さんに迫られ、照れ臭くなって周囲を視廻すが、他に客はいない。

音楽は鳴っているが、私と久美さんの会話が聴こえているのだろう、久美さんの友人がカウンターの中に立って、私たちの遣り取りを微笑みながら呆れ貌で視ている。

「わらしはぁ、あなたとぉ、セックスするのぉ」

久美さんが私の腕を抱いたまま私の肩に頬を載せた。

上品なオードトワレの薫りが、久美さんの体臭と融け合ったのか、酷くセクシーに感じる。

困ったな。

本気なんだ。

いや、酔っているから、本気ではないだろうが。

肘に乳房が触れた瞬間からずっと、男根に疼きは起こってはいた。


社内では、時折すれ違う事があっても、挨拶はするが、会話などほとんど交わさない。

成績発表会でも、常に社長の傍にいて、高根の花だった。

セックスの対象などと、想像した事もなかった。


縋り付いて来た久美さんを支えて肩を抱くと、乳房の豊かさの割には、やはり華奢であった。

「行こうよぉ」

「何処へ?ですか?」

「だららぁ、あなたがぁ、わらしとぉ、セックスする処にぃ」

「久美さんって、社長の恋人じゃないんですか?」

久美さんが初めて私から離れ、瞼の垂れた眼で私を睨み付けた。

「誰がそんな事!あんな脂ぎった男、仕事じゃなきゃ口も利きたくないわ。自分は仕事が出来て、カッコ良くて女にモテてって自惚れてて」

ちゃんと話せるじゃないか。

「わらしはぁ、あなたとぉ、ホテルに行くのぉ」

久美さんが酔っ払いの久美さんに戻り、今度は両手を拡げて私に抱き付いた。

「判りました。取り敢えず出ましょう」

相変わらず二人の遣り取りを微笑んで視守っている友人に会計の合図をした。

「久美子、お願いしますね」

会計をする時、友人が微笑んだ。

お願いされてもなあ。


私の部屋に行くか?

いや、久美さんのオードトワレの薫りが残ると、浩美が来た時にばれる。

スーツとワイシャツは薫りが移っただろう。

クリーニングに出さなければ。

タクシーに乗り、渋谷の道玄坂の奥のラブホテルに入る。

躰全体を支えなければならない程久美さんは酔っていた。

脚が地面に着いていない。

部屋に入り、ベッドに躰を横たえた瞬間、久美さんが寝息を立て始めた。

瞼をピンクに染め、セクシーな唇を軽く開いたままの、上品な寝貌も美しい。

仰向けになってもブラウスを圧し上げている乳房が、寝息に併せて上下する。

視詰めているだけで、疼き続けていた男根に力が漲る。

久美さんの女性器を口で愛撫し、美しいであろう乳房を揉み立て、眉を顰め、熱い喘ぎを洩らして仰け反る美貌を視詰めてみたい。


しかし。

たった1時間前まで、久美さんとこんな状況になるとは、爪の先程も想像もしていなかったのだ。

どうしようか。

久美さんは私とセックスすると言った。

しなければ、久美さんに恥をかかせる事になる。

しかしだ。

久美さんは寝てしまった。


久美さんが息苦しそうに喘いだ。

私は、久美さんの下着姿を視たい欲望も手伝って、スーツを脱がせ、ブラウスのボタンを外し、現れた上品な黒のレースのブラジャーのホックを外してやる。

完全に外さなかったが、ブラジャーを透かして、想像通りに美しい乳房と、小さな乳首が視えた。

さらに、スカートのホックも外してフロントファスナーを降ろしてやる。

やはり黒のレースのショーツの飾りを透かして、上品な和風美人に似つかわしくない恥毛の叢が透けて視えた。

暫くは、ベッドに腰掛けて、久美さんの下着姿を眼で愉しむ。

性欲は勿論湧いて来る。

気を抜くと、淫蕩な手が、乳房に触れそうになる。

しかし、久美さんの方から誘ってくれたからと言って、意識のない女性を抱くのは主義ではない。

無防備な状態なら、尚更だ。

久美さんの気持ちが判った今、がっつく必要もなかった。

今日は止めて置こう。

一緒に飲む関係になったのだから、機会はすぐに来るだろう。

疼いている男根を諫め、久美さんと並んで、洋服を着たままベッドに並んで横になった。



(続く)





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