記憶の中の女達〜(34)初めてのアナル セックス-第69話
作家名:淫夢
文字数:約3240文字(第69話)
公開日:2022年1月28日
管理番号:k057
この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。
ある夜、仕事を終えた後、常連と一緒に“R/Z”で飲んでいると、しなやかな、と言うより痩せた肢体が隠れるほど幾つものバッグと紙袋を抱えた女性が入って来た。
「ここに置けよ」
立ち上がってカウンター脇の空いていたボックス席に誘ってやる。
彼女が椅子の上に荷物を置こうと前屈みになった瞬間、大きく緩んだティシャツの胸元から、ノーブラの乳房全体が視えた。
「視たでしょう?」
彼女は恥じらいもせずに微笑んで私を睨んだ。
「視せただろう?」
「無料で良いわ」
「ありがとう」
私が冗談で返すと、彼女が微笑んだままもう一度睨んだ。
面白そうな女だと想ってカウンターに立つと、彼女はボタンを開けてはいたが、乳房が隠れるようにロングコートを羽織ったまま、カウンター席に座った。
外は寒かったが、暖房は効いていた。
それでも、さっきは偶然だったが、ティシャツで隠れているとは言え、コートを脱いでノーブラの乳房を赤の他人の視線に晒すほど無神経な女性ではないだろう。
「あなた、何飲んでんの?それ、ボトルで頂戴」
「水割りか?」
「そうね」
初めて視る女性だったが、ボトルをキープするという事は、これからも来るつもりなのか。
まさか、一本空けて帰るつもりではないだろう。
サントリー角の新しいボトルとマジックを手渡し、セットを用意してやる。
彼女はか細く痩せていて、先刻、垣間視た乳房はほとんど平坦に近いくらい小さく、しかし乳首が随分大きかった。
自分の事を自分で“多恵ちゃん”と言っていた美しい多恵子を想い出す。
彼女も痩せて華奢で、平坦に近い乳房で、乳首が異様に大きかった。
一年程前の夏辺りから、タンクトップのティシャツの上に、何かの季節物を羽織って、ミニスカートとロングブーツというファッションが流行ったが、この冬でも、上にロングコートを羽織るのが残っていた。
しかし、ティシャツの下がノーブラというのは、よほど乳房に自信があるか、でなければ無頓着なのか、或いは、流行したファッションを気に入って続けているのかの、どちらかだった。
“R/Z”の常連でも、ティシャツの下はノーブラで、それを隠すのに上着を羽織る女性もいて、母親にセックスを視られた秀美もそうだった。
彼女の場合、少なくとも乳房に自信があるようには視えなかった。
マジックでボトルに“響子”と書いて封を切り、私のグラスに並々と注いでから自分の水割りを作る。
長めに伸ばしたセシールカットのストレートの黒髪が、エナメルを施しているかと想えるほど美しい。
こけしの貌を人間の女性に具現化したような貌立ちで、ふっくらとした下唇がセクシーだった。
30歳くらいか。
年齢に応じた妖艶さはあったが、ふと、響子が、今までセックスした女性にはなかった、何処か異質な翳りを漂わせているように感じた。
「あなたがここのマスター?」
「そうみたいっすね」
酒に強いのか、割とハイペースで飲む。
「それでエラそうなのね?」
「そうっすか?そんなつもりはないっすけど」
「でも、すぐに判るわ」
「ここは何で知ったんだ?」
「知り合いが話してた。結構なヴォリュームでロック鳴らしてる面白い店があるって、教えてくれたの」
「で?おねえ様のご感想は?」
「なかなか、ね」
当時の東京には、ロックを聴かせる喫茶店やスナックが多く出来ていたが、“R/Z”ほどの広さで、大音量でロックを鳴らしてる店は数件しかなかった。
「暖まったから帰るわ」
一時間程私と話して飲んでから、響子がカードやレシートが煩雑に入った財布から1万円を出した。
レジから釣り銭を取って来て渡す。
響子が大きなショルダーバッグを抱えようと前屈みになった時、もう一度乳房が大きく露わになった。
「また、視たわね」
「つい、習性で」
「おっぱい視たお礼に、普通は、荷物運ぶの手伝うでしょう?」
今度は私を睨む事なく、平然と言う。
「はーい。おねえ様」
先刻まで一緒に飲んでいた常連達が、私と響子の遣り取りを面白そうに眺めていた。
4つの大きな紙袋を持って彼女の後に従う。
表の新宿通りに出てタクシーを拾い、2つの大きなショルダーバッグを膝に抱えて奥の席に乗り込んだ彼女の手前の席に紙袋を置いてやり、ドアの外に立っていた。
「この沢山の荷物を私独りで持って帰れって言うの?」
彼女が膨れっ面を視せた。
来た時は独りで全部担いで来たんだろう?
可愛いな。
確かにバッグも大きく、紙袋は軽かったが嵩張っていて、華奢な響子が全部抱えるには無理そうだった。
セックスフレンドも来てなくて暇だったので、この風変わりな女にもう少し付き合う事にして、4つの紙袋を膝に抱えてタクシーに乗り込む。
運転手に“笹塚”と伝えた響子が、前を向いたまま、口を開いた。
「気が利くのね」
「何が?」
「紙袋を脚元に置かないから」
「常識だと想いますけど」
「あなたって冷たいのか、優しいのか、判んないわね」
「女性には優しいつもりです」
「そう?」
遣り取りしている間に笹塚に着く。
甲州街道沿いの8階建てのマンションだった。
先に降りて響子を視ていると、尻肉をずらしながら降りて来る彼女のミニスカートが脚の付け根までめくれ上がり、濃い紫色のショーツに覆われた恥部が丸視えになった。
「今度はショーツ視た」
「習性なんですったら」
タクシーを降り立った彼女の前へ紙袋を差し出した私に、また彼女が口を尖らせた。
「独りで部屋まで運ばせるつもり?」
「お気の召すままに」
紙袋を下げて、彼女の後に従い、エレベーターで6階まで上がる。
「ちょっと持ってて」
響子に大きなバッグを二つ差し出され、慌てて紙袋を下げた両手で抱える。
彼女がショルダーバッグから鍵を取り出してドアを開け、照明を点けて中に入る。
「あのー、部屋の中まで、でしょうか?」
応えもせずにリヴィングに入って行く彼女の後に、仕方なく付いて中に入る。
奥のベッドルームは薄暗くて視えなかったが、10帖ほどのリヴィングルームには大小様々な箱が積んであり、テーブルと冷蔵庫、ステレオとレコードラック、テレビ、洋服ダンスとドレッサー、脚の踏み場もないほどのハンガーパイプに洋服が吊してあった。
全てが普通の洋服ではない。
まるで歌手のステージ衣装か、女優、モデルの撮影用の衣装だ。
エアコンを入れ、ショルダーバッグをテーブルの椅子の上に置いてロングコートを脱いだ響子が、私が抱えていた大きなバッグと紙袋を一つずつ取って、床に並べたり、箱の上に積んだりする。
「おねえ様は、歌手か女優か、何か、ですか?」
響子はノーブラの乳房を隠すふうでもなかった。
「まさか!違うわよ」
荷物を片付け終わった響子が冷蔵庫から缶ビールを取り出して一つをくれた。
レコードラックからCarly Simonの“Anticipation”を取り出して鳴らす。
なかなか良い趣味だ。
響子のイメージに合っていた。
「荷物、ありがとう」
テーブルに向かい合って缶ビールのプルを引き、乾杯する。
「おっぱいのお礼っす」
暖かいエアコンの風が吹いて来た。
「そうね」
ティシャツの下の乳首が自己主張していた。
じっと視詰めるのも物欲しそうだし、かと言って、響子が隠さない以上は視ないと失礼だろう。
適当に視て、適当に視線を逸らす。
私の視線に気が付いた響子が、ビールを飲み込んだ後、微笑んだまま私を睨んだ。
「私のおっぱい視たかったらちゃんと視なさいよ。あなたに視られるのは厭じゃないから隠してないんじゃない」
「そうなんすか」
平然とした響子の態度に、私の方が戸惑ってしまう。
「あなたには話しても良いわね。私、OHの専属スタイリストやってんの」
OHは当時の人気アイドル歌手で、清純なルックスと伸びやかな高音ボイスで一世を風靡した。
「ふーん」
「あら、興味なさそうね?」
響子が微笑んで小首を傾げた。
「お前に興味がなきゃ、着いて来ねえよ。芸能界なんかに興味がないだけだ」
「あなた、そんな感じだわ。だから話したの。みんなサイン貰ってとか、チケット取ってって言うから、面倒臭くて」
響子が立ち上がってバスルームに入った。
テレビの上の置き時計を視る。
バスタブにお湯が流れ落ちる音が聴こえて来た。
(続く)
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