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記憶の中の女達〜(33)「明日の朝まで私だけのものになって」-第67話



作家名:淫夢
文字数:約3270文字(第67話)
公開日:2022年1月16日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

何時も“R/Z”に二人で来る女性がいた。

25、6歳くらいか、二人とも知的なタイプで、上品そうでオーソドックスな服装からして、それなりの会社のOLのようだった。

その一人が久美子だった。

ものすごい美人というほどではなかったが、清楚で上品な貌立ちで、体型も華奢で、私の好みのタイプであった。

週に二度ほど来るようになって、3ヶ月くらいになる。

ボトルキープしていて、2時間くらいで水割り4、5杯飲んだ。

私は彼女達に誘われ、何度か一緒に飲んだ。

飲みながら久美子に性的な感情を抱く事もあったが、何時も上品に酒を飲んで話し、上品に笑う彼女は、私とセックスしてくれるようなイメージがなく、何処か違う世界の女性のように想えたし、何時も同僚が一緒に来て一緒に帰ったので、そんな流れになるようなチャンスもなかった。

処が。


ある火曜日の夕方、久美子が初めて独りで来て、何時もはボックスに席を取るのに、今日は独りだからか、私の前のカウンターに掛けた。

「独りって、珍しいな」

キープしているボトルとセットを出してやる。

「今日はね」

何時も同僚と飲みながら楽しそうに雑談していて、会話していない時も静かな微笑みを浮かべている久美子が珍しく怒っているような真貌だった。

自分で水割りを作り、カウンターの上の私のグラスにウイスキーを注いでくれる。

彼女が差し出したグラスに重ねて鳴らし、コーヒーをドリップしながら飲む。

しばらくして、傍にバイトがいなくなった時、久美子がイスから尻を浮かして私に貌を寄せ、小さく囁いた。

「マスター、明日お休みでしょう?」

「何でそんな事知ってんだ?」

「3か月も通ってたら判るわよ」

大人っぽい彼女が唇を少し尖らせた、子供のような膨れっ面が愛らしい。

「明日の夜は空いてる?」

セックスの暗示に敏感な私の下半身が反応する。

久美子が独りで来て、明日の夜、空いてるかと訊く。

それなら予定があっても空ける。

「何もない」

バイトが客席から戻って来た。

久美子が慌ててそっぽを向いた。

バイトがいなくなると、久美子が再び声を顰めた。

「頼みたい事があるの。明日の夜、逢ってくれる?」

久美子が清楚な美貌に恥じらいを浮かべた。

やっぱり、だ。

「良いぜ」

「じゃあ、K書店の前で7時」

「判った」

暫くして、私のセックスフレンドがやって来た。

久美子は少し怒った表情になって彼女を一瞥すると、すぐに会計をして帰って行った。


何だろうな、頼み事って。

セックスをするなら、“頼み事”などとは言わないような気がした。

しかし、一瞬恥ずかしそうにした。

ただの頼み事なら恥ずかしがる事はないはずだ。

いずれにしても明日の夜には判る。

6時になり、私はセックスフレンドを連れて“S”へ飲みに行った。


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翌日、長居したがっているセックスフレンドを帰らせ、休日恒例の洗濯掃除を済ませ、ギターを弄って、約束の時間にK書店に行って久美子を待つ。

10分程待ち、7時を少し回ってから久美子が現れた。

「ごめんなさい。待った?」

「いや、今来た処だ」

一度家に帰って着替えて来たのか、何時も店に来る時のOL風の装いではなく、ブルージーンズの上下に白のティシャツを着た久美子が新鮮に視えた。

ティシャツの下にピンクのブラジャーが透けて視えた。

何時も“R/Z”に来る時は、長いストレートの黒髪をアップにして髪飾りで止めていたが、今日は肩まで垂らしていて、少し若く視えた。

時折吹いて来る風に、美しい髪が靡く。

「何時の髪型より若く視えるな」

「どっちが良い?」

どちらかが良いと言って、久美子ががっかりするような発言はしない。

「うーん。両方良い、かな」

「何よ。その適当な言い方」

久美子が膨れっ面をする。

やはり可愛い。

「で、どっかに行くのか?」

尋ねると、少し思案した久美子が応えた。

「そうね。その前に、あなたとお酒飲みたい」

その前に?

何の前だ?

久美子が私の腕を取って、雑踏の中を歩き始めた。

華奢な肢体から想像出来るように小振りだが、引き締まった乳房が肘を圧す。

「ピザ屋さんで良い?多分だけど、美味しい処知ってるわ」

「おれ、金ないぜ」

「あなたのお給料の半分以上が、楽器のローンで消えてるのは知ってるわ。お姉さんに任せなさい」

「へーい」

久美子が乳房で私を圧すように歩く。

その乳房の感触を愉しみたくて、わざと方向が判らないかのようにゆっくり歩く。

K書店の裏通りにあった、若者で賑わうピザ屋に入る。

ワインを飲み、美味しいピザに舌鼓を打ち、他愛ない話をして一時間ほど過ごす。

期待していたような展開じゃないな、と想いながらも、久美子が「頼み事がある」と私を誘ったのだから、私の方から切り出す事はないと想い、その時を待っていた。

「もう少し飲みたい」

「良いぜ」

ワインが一本空になったので、今度はデカンタで注文した久美子が、急に頬を染めた。

ウエイターが運んで来たデカンタのワインを二つのグラスに注ぐと、半分ほど一気に飲んだ久美子が声を潜めた。

「あ、あのね」

「うん」

「明日の朝まで、わ、私だけのものになって欲しいの」

久美子が恥じらいを美貌に浮かべ、愛らしい唇を震わせて、視線を伏せた。

意外な言葉に驚いて、久美子を視詰める。


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昨日からの話だから、酒に酔っての勢いではないだろう。

つまり、明日の朝まで一緒にいて、セックスしたいと。

“私だけのものになって”と言う事は、二人っきりでセックスする?

いや、セックスするとは限らない。

ただ一緒に何処かに行って、朝まで過ごしたいだけなのかも知れない。

早合点して期待外れだったら、一気に疼き出した男根が可哀想だ。


「お前だけのものって?」

久美子が美貌に恥じらいを浮かべたまま私を視詰め、再びすぐに視線を伏せた。

「あ、あのね、い、今から、わ、私と一緒に行って欲しい処があるの」

久美子が一言一言選ぶように言葉を繋げた。

セックスする可能性は大きいが、未だ判らない。

しかし、久美子の頼まれて付き合う事にしたのだ。

“私だけのものになって”と言う意味を知りたい。

「良いぜ」

「良かった。じゃあ、行こう」

深く溜息を付いた久美子が何時もの微笑みを戻し、伝票を手にして立ち上がった。


靖国通りに出てタクシーを拾う。

「西口のKホテル」

Kホテル!

やはりセックスする気なのか。

しかし。

セックス前提でタクシーに乗る女性は大抵、身体を密着させて来るとか、手を握って来るとかくらいはする。

久美子は、むしろ私から離れて座り、窓の外に流れる景色を眺めていた。

久美子の口から、私とセックスする、という言葉は未だ出て来ていなかった。

新宿西口のKホテルのエントランスでタクシーを降り、中に入る。

「部屋を予約してたの」

久美子が私をロビーに待たせてフロントで手続きをする。

私とセックスするためにKホテルの部屋を予約したのか?

超の付く有名な高級ホテルだ。

安いはずがない。

断るはずはなかったが、私が今日になっていきなり久美子の願いを拒んだら、どうするつもりだったのだろう。

料金が無駄になる。

それを承知で。

私が拒むはずがないと、判っているようであった。

胸に手を当ててみれば、他の何を差し置いても久美子と逢おう、そう考えた私であった。

手続きを終えた久美子が、キーを持って恥ずかしそうに小走りで私に駆け寄った。

久美子がやっと私の腕を取り、さっきのように乳房で私の腕を圧すように歩き出した。

久美子に従って、エレベーターで上がって部屋に入る。

さすがの高級ホテルだ。

調度品も質素ではあるが、高級なのが判る。


セミダブルのベッドの傍に立ち、抱き寄せてキスをしようとすると、久美子が私の腕を払った。

「だめっ、あなたは私に何もしないの」

何もしない?

意外な久美子の言葉に再び驚く。

「ホテルに一緒に来て、明日の朝までって?セックスするんじゃないのか?」

久美子が私に寄り添って、私の洋服を脱がし始めた。

「あなたは明日の朝まで私のものになったんだから、私があなたを想い通りにするの」

私がもう一度久美子を抱き締めようとすると、やはりその手を払い退ける。

どういう意味だ。

未だ要領を得ないが、セックスはするようだ。

言い成りになるしかないな、と覚悟を決める。



(続く)





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