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記憶の中の女達〜(32)セックス&ミュージック パートナー-第66話



作家名:淫夢
文字数:約4760文字(第66話)
公開日:2022年1月7日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

その翌日から、志織は毎日のように、他の女の子達と一緒に、時には独りで“R/Z”に来た。

私の仕事が終わると、他の女の子達から抜けてさえ、一緒に“S”で飲んでから部屋に帰り、セックスしてから駅まで送ってやる。

クリスマスイヴの夜、初めてセックスした日は、大人しくて口数も少ない志織だったが、意外にも明るく、良くしゃべる女の子だった。

物おじせず、少し舌っ足らずの甘えた話しぶりも愛らしかった。

そんな志織は、“S”の酒飲み連中の間で、あっと言う間に人気者になった。

彼らは、志織の前でも、私をからかった。

「今度は大丈夫だろうな?」

「志織ちゃん、泣かせるんじゃねえぞ」

「他の女連れて来たら、教えてあげるからね」

志織は、私の女性遍歴のほとんどを知っている“S”の大酒飲み達も味方にしてしまった。

彼らは、無口で人見知りがちで上品な千尋よりも、明るく無邪気な志織の方を好んだようだった。


志織は、初めて私とセックスした出遭いが出遭いだったし、私の淫蕩癖を知っていたからだろうか、私を独占したがるような素振りは一度もしなかった。

その後にも、志織が高校を卒業して英会話学校に通っていた頃、志織に誘われて、志織が英会話学校で仲良くなった年上の美人OLの部屋に3度泊まりに行った。

最初に行った夜、酒を飲んでいるうちに二人が酔っ払って妖しい雰囲気になり、ついには3人で全裸になって愛撫し合った。

私は志織に遠慮して美人OLとはセックスせず、彼女を指と口で愛撫し、エクスタシーの絶頂を極めさせてやった後、最後は志織とセックスし、志織の中で射精したが、それでも志織はそれを嫌がる風でもなく、むしろ、美人OLとキスを貪り合いながら、私と一緒に彼女の乳房や女性器を愛撫したりした。

美人OLの部屋には、その後2度泊まりに行って、やはり酒を飲みながら3人で全裸になって愛撫し合った。

私は、当然、美人OLともセックスしたかったが、志織に、彼女とセックスしても良いとは言われなかったし、彼女も恐らく志織に遠慮したのであろう、私に勃起の挿入を求めたりしなかったので、やはり志織に遠慮して我慢した。

3度目に行った時、私は美人OLにフェラチオされたが、それでも志織は厭な表情も視せず、彼女と並んで私の脚元に膝ま付き、彼女のフェラチオを視詰めながら彼女の乳房や女性器を愛撫した。

そして、私が彼女の口に射精した直後、美人OLと一緒に私の勃起を咥えて吸い立て、彼女とキスを貪り合い、私の精液を分け合って飲んだ。

志織と別れて、その痴戯も終わってしまったが、やはり、あのクリスマスイヴの夜、友人2人と一緒に私の勃起を愛撫したのを想い出すにつけ、また美人OLとの夜の淫猥な痴戯は、志織と美人OLが酔った勢いでキスをしながら乳房を愛撫し合う処から始まったので、志織も友人達とのレズの経験を経ていて、レズの感覚があったのかも知れなかった。

さらに、志織は、その感覚のせいで、私が他の女性と愛撫し合うのを嫌がらなかったのかも知れなかった。


私は、志織を愛しているかどうか、自分でも判らなかったし、それを言葉にした事もなく、志織から“愛してる”と言われた事もなかったので、彼女が私を愛しているかどうかも判らなかった。

だから、私は志織はセックスフレンドとして、千尋は恋人として認識していた。

千尋という美しい恋人がいてセックスもしているのに、志織ともセックスする。

男性の風上にも置けない素行だったが、言い訳がましく敢えて言わせて貰えば、それだけ志織が、私にとって魅力的だったし、何時も私の傍にいる親友のように感じていたのだ。


冬休みに入って、志織は毎日のように、10時の開店から来て、週に2、3度、私の部屋に泊まり、“R/Z”の開店にも一緒に入った。

千尋も、冬休みでも門限は厳しかったようだが、日曜日以外にも“R/Z”に来るようになり、当然、千尋と志織が“R/Z”で一緒になる事が何度もあった。

志織は、千尋が私の恋人だとすぐに判ったようで、千尋が傍にいる時は、千尋に対して遠慮して常連同士のように接し、また千尋の前では、私とセックスしている関係である事を千尋に感付かせるような振る舞いはしなかった。

千尋は、“R/Z”に来た時に、志織がいても、私が千尋の方を優先したので、私と志織の関係を明確に知る事は、未だなかった。


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志織は私の愛撫にすぐ馴染み、最初よりも深く激しいエクスタシーの絶頂を極めるようになり、フェラチオで私の精液を飲むようになった。

さらに私の指で潮を噴くようにもなり、勃起の抽送でも潮を噴くようにさえなっていた。


志織は、私が過去にセックスした女性の中で、最も性的刺激に敏感で絶頂の極め方も深く激しい女性だった。

そして、私の勃起と志織の膣粘膜が測ったようにぴったり隙間なく収まり、蓉子、多恵子、圭子、優依のように、勃起を挿入したままで、抽送しなくても、キスを貪り合っているだけでエクスタシーの絶頂を極め、私も射精出来た。

また志織を抱くと、私の躰と志織の躰がぴったり嵌った。

何時か、志織の方から私にセックスを求め、セックスしなくても愛撫を求め、また二度目も志織の方から求めて来るようにもなっていた。


そして、千尋を失う事になった出来事が起こる。

2月半ばの寒い夜、仕事が終わり、志織と一緒に“S”で3時間近く飲み、部屋に戻ろうと、志織と抱き合って新宿通りを歩いていた時、千尋とばったり出遭ってしまったのだった。

家が厳しく、門限が8時だと話していた千尋が、まさか、平日の9時過ぎに新宿を歩いているなど、想像もしていなかった。

千尋は凍り付いた様に立ち止まって私と志織を視詰め、眼を涙で潤ませて悲しみに美貌を歪め、振り向いて走り去った。

千尋は、勿論、それ以降、私の前に姿を現す事はなくなってしまった。


その夜、志織は、千尋を酷く傷付け、そして恐らく千尋を失ったであろうショックで、部屋に帰って一緒に全裸になってベッドに入っても、茫然としてキスさえしようとしない私に気遣って、自分から欲しがる事もせずに抱き着いたまま、じっとしていた。

そして、私の腕の中で志織がふっと呟いた。

「千尋ちゃん。ごめんね」

“何?”と私は訊き直したが、“何でもない”と志織が私の唇に唇を重ねて貪った。

志織はごまかしたが、私の耳には志織の言葉がはっきり残った。


志織は、彼女自身が意識してそうしてくれたのだろうが、千尋を失った私の心を埋めてくれる存在になった。

私は志織を一層愛おしく感じるようになり、それまで以上に志織を求め、志織も私の気持ちに応えてくれた。

私と志織は、セックスの相性だけでなく、食べ物の好みもそれ以外の趣味も、そして性格も合っていた。


さらに志織とロックの話をしているうちに、音楽的な嗜好もほとんど共通している事に気付く。

志織は子供の頃からピアノを習っていた。

楽器店でピアノを弾かせると驚くほど巧く、また私の感性に合っていた。

「おれと一緒にロック奏るか?」

志織は二つ返事で頷いた。

それまで、私はベーシストとドラマーのトリオでバンドを組んでいたが、音楽的な志向が変わり、自分で作曲作詞をするようになっていて、どうしてもシンセサイザーを採り入れたいと考えていた。

因みに、シンセサイザーを使ったロックグループは、当時、ヨーロッパではビッグネームが沢山あったが、日本では未だほとんどなかった。

ちょうど二本目に購入した、ギブソンのSGダブルネックギターとギターアンプのローンが終わる処でもあったので、志織に使わせる為に、モノフォニック(単音)シンセサイザー、ハモンドのB3のデジタル版であるX1とロータリースピーカー、それらのキーボード専用のミキサーを買った。

総額で150万ほどだったが、毎月払える範囲での長期ローンだったし、志織が一緒にロックの道を歩んでくれるなら惜しくはなかった。

ピアノがキーを指で叩くのに対して、シンセサイザーとハモンドのX1はキーを指で押さえる、という違いがあったが、志織はすぐにマスターした。

私が作曲作詞した曲を、ギターを弾きながら歌って聴かせると、彼女はすごく気に入ってくれ、キーボードのパートのアレンジも一緒にやった。

処が、バンドの二人に志織を紹介して、バンドの志向を変えると話すと、二人はそれまで奏っていたブルースロック志向を変えたくないと言い張り、二人とは袂を分かつ事になる。

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志織はそれをひどく申し訳なさそうにしていたが、バンドのメンバーなんて志向が変われば変わるものだと納得させた。

案の定、“R/Z”の常連で、私と同じ傾向のロックが好みのベーシストとドラマーが一緒にやりたいと申し出てくれた。

二人は高校生だった頃からアマチュアではあったが活動していて、私も、彼らのコンサートを何度か観に行った事もあった。

彼らの演奏は、私のギターのレベルよりはるかに腕が立ち、それぞれのファンも多かった。

そして、“R/Z”が閉店してから朝まで練習を重ねて8曲、演奏時間にして100分くらいのライヴが可能になっていた。


私達は本格的なライヴ活動を開始し、一般のアマチュアコンサートに出たりし、また、月に一度、マスターの特権を利用して“R/Z”でライヴをやるようになった。

その内に、“R/Z”の常連になった連中や、ベーシストとドラマーの人脈で、プロを目指す腕達者がゲストで出てくれるようになり、素晴らしい演奏が出来るようになってステージも盛り上がった。


モデルで歌手デビューした美人ポップシンガーALのハードロック時代でベースを奏ったES。

超絶テクニックのフュージョンバンド“SC”でドラムスを奏ったOY。

世界的に有名になったシンセサイザー奏者Kや、当時有名になったポップロックの天才と称されたSHをシンセサイザーでアシストをしたT。

取り分け、日本でのフュージョンミュージックブームの先駆けになった超絶テクニックグループ“P”のリードギタリストで、その素晴らしいギターテクニックが海外でも知れ渡っているWA。

みんな現在でも活躍している。

彼らは次第に有名になり始め、ワンステージ数十万のギャラを取るようになっていたようだが、それでも私のライヴのゲスト出演にはノーギャラで、来てくれていた。

最初は有難く感じていたのだが、私の中で次第に違和感が起こり、それがコンプレックスに繋がる。

永い間、素晴らしいミュージシャンの素晴らしい演奏を聴き続けていて、テクニックの差異は客観的に判断出来た。

ギターもヴォーカルも素人並みに下手で、プロ志向のないアマチュアの私のバンド活動に、腕達者で、有名になった彼らが、何故集まってアシストしてくれるのか、不思議でならなくなったのである。

その事を彼らに尋ねると、“面白いから良いじゃねえか”と笑うだけであった。

さらに、素晴らしい演奏をする彼らと一緒にステージをやる度に、どんなに一生懸命頑張って練習しても、上手くならない自分が惨めにさえ感じるようになった。

そして26歳になった頃、ついにバンド活動を辞め、“R/Z”のマスターの仕事だけに戻る。

しかし、不幸は不幸を連れて来る。

バンドの解散に不満を抱いた志織が、私から離れて行ったのだった。

セックスの相性も性格も合った志織を、女性として愛していたかどうかは、自分でも判らなかったが、音楽活動の相棒としても、生きている上でも大切にしていた彼女を失った事は、二重のショックであった。


志織は、一年後、バンド解散後サラリーマンになったドラマーと結婚した、と聴いた。

5年前、かつてのロック仲間と偶然遭遇し、彼の薦めで私が音楽活動を再開した事を知ったそのドラマーから連絡が来て、会って酒を飲んだ際に志織の消息を訊いたが、15年前に離婚して以降、連絡を取ってなくて判らないとの事だった。


志織は、私の7年間のバンド活動の後半の、私の人生の中で最も充実した3年間、共に歩んだ女性である。



(続く)





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