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記憶の中の女達〜(24)レズカップルの部屋-第48話



作家名:淫夢
文字数:約3620文字(第48話)
公開日:2021年8月27日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

優依から訣別を告げられたのは、そして彼女が結婚したのは、私を酷く落ち込ませた。

優依に結婚を望まれ、それをうやむやにして拒んだせいで、優依が私を諦めたのだから、私のせいではあっただろう。

ただ、後日、と言っても、44年も経って、私がある随筆を寄稿していた地方文学研究者のHPで私の名前を視付けた優依がアプローチし、その文学研究者を通じて、私にメールをよこし、奇跡的な再会を果たした。

優依のメールの最初の一言は、“あの時、あなたを傷付けた事をずっと後悔していて、謝りたかった”だった。

私は、“おれの方こそ、あなたを酷く傷付けて、後悔していた”と送った。

私に妻がいて彼女も夫がいるので具体的に接触する事は慎んでいるが、他愛のないメールの遣り取りを毎日している。


私は、優依を失った心の隙間を埋めるように、また性的欲望のやり場を求め、誘われれば、契機さえあればセックスする淫蕩生活に戻っていた。


睦美と美尋が常連になって半年近くになる。

カウンターに掛けた二人のボトルを出し、水割りのセットを用意する私に二人が声を揃えた。

「優依ちゃんにフラれたんだって?」

またか!

コーラスでハモるな!

「お前ら、どいつもこいつも、挨拶みたいに言いやがって」

私は想わず吐き捨てる。

「やっぱ、ホントなんだ」

「マスター、ざーんねーん」

「ほっといてくれ」

睦美が氷を入れ、美尋がウイスキーを注ぎ、睦美が水を注ぎ、美尋がマドラーでかき混ぜる。

カウンターに置いている私のグラスを手にして、同様にロックを作ってくれる。

二人の仕草は何時も呼吸がぴったり合っていた。

私は二人がレズではないかと何時も感じていた。

ゲイバーの“R”で1年半バイトして培われた感覚であった。

女性同士で手を繋いだり、じゃれて抱き合ったりするのは普通でも視掛けるが、二人には、“R”に来ていたホモのカップルと共通する、何処か妖しいムードがあった。

二人は20歳。

長野県の同じ高校を卒業して同じ短大に通っていて、小田急線の経堂で、風呂付のアパートで一緒に暮らしていると言っていた。

今でこそ賃貸住宅に風呂があって当たり前だが、当時は未だ珍しく、学生の身で風呂付きアパートに住んでいるというだけで、経済事情が測り知れた。

今までも二人に何度か、部屋に誘われた事があったが、優依に義理立てして我慢していた。

二人とも容姿は悪くはなく、睦美は肉感的で、美尋はボーイッシュなタイプだった。


「今日、部屋においでよ」

「優依ちゃんと別れたなら、もう平気でしょう?」

小一時間ほど飲んで、二人が声を揃えた。

女二人相手か。

暴力団組長の娘と警察署長の娘とのレズカップルと知り合い、成り行きのまま暴力団組長の自宅で二人とセックスした一夜が脳裏に浮かぶ。

以前は想い出す度に恐怖を覚えて背筋が寒くなっていたが、最近はそれもなくなって、ただ異常で淫猥なセックスをしたという記憶が、性欲を伴って脳裏に浮かぶようになった。

この二人と、あんな風に。

男根に疼きが生まれる。

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あの二人と違って、睦美と美尋は薄化粧、年齢相応のイメージで、遊んでいる風でもなくセックス経験も浅そうで、まさか悪夢の再現はないだろう。

「二人とも相手してくれるのか?」

「三人でしてみたいの」

睦美が恥じらいながら微笑む。

「どっちかだけって、不公平だよ」

美尋が恥じらいながら口を尖らせた。

ジーパンの中で男根が勃起し始める。

                                                                                                         「良いぜ。たっぷり慰めて貰うか」


経堂の部屋までも、私と他愛ない会話はするが、二人はやはりずっと手を繋いでいた。

途中の食料品店でウィスキーと缶ビール、ツマミと食料を買ってから、彼女達の部屋に誘われる。

「おお、さすが、女子大生」

1DKで、6帖程のDKにテーブルと冷蔵庫、ステレオと小さなレコードラック、奥の6帖の部屋に女の子らしい布団が二組並び、壁に向って勉強机が二つ並び、二つの本棚には勉強用の書籍などよりも漫画の方が多く並んでいた。

「女の子の部屋、初めてじゃないくせに」

店を出てから言葉少なかった美尋が、テーブルに缶ビールとツマミの袋を並べながら私を振り返った。

睦美が石油ストーブに点火し、Beatlesの“Abbey road”を掛けた。

テーブルは二人掛けで、椅子も二つしかない。

「女子大生二人も相手するの、初めてだから、ぼくちゃん、怖い」

冗談交じりに応えてテーブルの椅子に座って缶ビールを開け、一気に半分ほど飲む。

DKの壁にBeatlesのポスター、奥の部屋にはやはり若い女性の部屋らしいポスターが貼ってある。

睦美が向かいに座ってツマミの袋を開け、ビールを開けて飲み始めると、食料を冷蔵庫に片付けていた美尋が、缶ビールを開けて睦美の膝の上に掛けた。

男の気配はなかった。

今までに私以外の男を招いてセックスした事があるのだろうか?

「言っとくけど、他の男入れた事ないわよ」

睦美が私の想いを感じ取ったかのように悪戯っぽく微笑んだ。

「マスターが初めてだよ」

美尋が言い、すぐに恥ずかしそうに俯いた。

「それは光栄。で、お前ら、経験は?まさか処女じゃねえだろうな?」

「高校時代、友達同士でカップルだったの。卒業式の日に、最後だからって、四人でして、処女あげちゃった」

睦美があっけらかんと微笑んだ。

「おい、処女で乱交か!」

「だって、したかったんだもん」

美尋が恥じらいながら口を尖らせた。

「ったく、今時の若い女は」

優依と出遭う前、Tとルームシェアしていて、Tと和美、私と圭子、隣合わせでのセックスを週に2度くらい愉しんでいた私も、今時の若い男だった。


ふと、高校時代に交際った2歳年下の少女の可憐な美貌が脳裏に浮かんだ。

卒業式の日に初めてキスをしただけで、そのままになってしまった彼女は今どうしているのか。

あの時、抱いてセックスしようと想えば出来ていたかも知れない。

考えれば、彼女は、この二人と同い年だった。

卒業後、就職したのか、大学に行ったのか、電話をよこす親とたまに話すくらいで故郷と疎遠になった今は、知る由もなかった。

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後に、墓参りで帰郷した際、彼女と20年振りに再会し、一度だけセックスする。


ふと視ると、睦美が美尋のセーターの裾から手を潜らせて乳房を揉み始めた。

「いや、睦美っ、は、恥ずかしい」

美尋が私をちらっと視てすぐに俯いた。

言葉に反して隠そうともせず、胸を反らす。

「良いじゃない。どうせすぐに視られるんだから、ほら、マスター、視てやって」

睦美が美尋のセーターを首までたくし上げ、ブラジャーをずらした。

美尋の未だ幼そうな愛らしい乳房が睦美の掌で淫猥に歪む。

小さな乳首が勃起していた。

「さ、寒い」

美尋が肩を竦めて喘いだ。

興奮からか、本当に寒いのか、睦美の掌で歪む乳房が粟だっていた。

血管が青く透けて視える程、色白だった。

4月の半ば、ストーブは点いていたが、未だ部屋全体は寒かった。

「ねえ、お、お布団で」

美尋が官能を浮かべた眼差しで私を視詰めたまま喘いだ。

「マスターもおいでよ」

睦美が美尋を抱いたまま、立ち上がる。

二人が抱き合うように奥の部屋に行き、その後を缶ビールを持って着いて行く。

睦美が部屋の照明を点ける。

「ああ、明るくしないで」

美尋が声を震わせた。

「二人でセックスしてる処、マスターに視られたいって、美尋が言ったんじゃない」

睦美が美尋を布団に圧し倒す。

私に視られたい?

美尋が?

「い、言っちゃだめ。は、恥ずかしい」

「おれに、視られたい?って?」

「マ、マスターは、睦美と同じ感じなの。お、男臭くなくて、だから、さ、三人で、し、してみたいって」

美尋が、睦美の愛撫に乳房を反らした。

「私も、普通の男は厭だけど、マスターなら、って感じてた」

睦美が美尋の乳房を愛撫しながら、呟くように言った。


荒くれ漁師町で生まれ育ち、高校時代は、女性に晩熟で超硬派を気取っていたし、“R/Z”でも男っぽくしているつもりだが、皆からは女性っぽく観えるのか?

“R”でアルバイトして1年半、彼らとセックスは勿論しなかったが、ホモさん達ばかり相手していて、私の感性が変わったのだろうか?

彼女達以外に、出合頭の成り行きでセックスした女性も、ほとんどが彼女達の方から私に近付いて来ていたし、何人かの女性から「男臭くないから」、「女みたいな雰囲気だから」、抱かれるのに抵抗がないというような言われ方をした。

そうであれば、オーナーと出遭って、いきなり店を手伝えと言われ、“R”でバイトを始めた事に感謝しなければならないだろう。

オーナーも、何処かの会社の優しい社長さんという雰囲気で、ホモだったので当然だが、余り男臭くなく、だからと言って、ホモらしい雰囲気もなく、女性の常連客にも人気があった。

勿論、女性とセックスしたりはしなかったようだが。

彼は、“R/Z”を始めてからも、開店時と閉店時にレジの集計に来るだけで、何処かで若い男性をハントしているらしく、レジの集計に来る朝晩に若い男性を伴っている事もあった。

また、時々、ロックには無縁そうな若い男性を、“アルバイトで使うから”と連れて来る事もあった。



(続く)





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