アナルファンタジー(5)激変-第18話
作家名:優香
文字数:約3120文字(第18話)
公開日:2021年3月15日
管理番号:k066
私の目の前が、驚きと怒りと嫉妬で真っ赤に染まった。
「ああ、さ、最初はっ、お、おま○こでっ、で、でもっ、イ、イク時はっ、ア、アナルでっ、お、お願いよっ」
アナルセックス。
肛門で勃起を受け容れて愉しむセックス。
週刊誌などで、アナルセックスがマイナリティな存在ではなくなって来ているような特集などを眼にしたりした事はあった。
しかし自分がアナルセックスをしたいと想った事もなかったし、かつて交際った相手に望まれた事もなかった。
あれほどセックスした琢磨は、私の肛門に興味を示した事はなかった。
最近になって、放尿、排泄を脳裏に現れる傍観者に曝してエクスタシーを貪るようになった私は、琢磨とのセックスで四つん這いになり、肛孔を琢磨の視線に曝し、琢磨が口で、指で触れ、愛撫してくれる事を熱望するようになっていた。
その私の肛門に決して興味を示す事がなかった琢磨が、母親とアナルセックスを!
「いやらしいママは、やっぱり、最後はけつの孔でイキたいんだ。おれが高校生の時からだから、もう十年以上になるけど、今でもアナルでするのが好きなんだな?」
「お、おま○こっ、た、琢ちゃんのっ、ち、ち○ぽでっ、い、一杯っ、そ、そんなっ、い、虐めないでっ。だ、だってっ、ま、間違って、に、妊娠したらいけないからっ」
「ああっ、ママのおま○こっ、最高だよっ」
二人が、淫猥な言葉を吐き散らした。
部屋の壁に向こうでの二人の痴態が透けて見えるようだった。
こみ上げる激情のような嫉妬と怒りに、身体が激しく震え出した。
「す、すごいのっ。い、良いわっ。イ、イキそうよっ。ね、ねえっ、も、もうっ、ア、アナルにっ、ち、ち○ぽっ、い、挿れてっ」
私はいたたまれなくなって、部屋を飛び出した。
何という性愛だろうか。
母親と息子がセックスする。
それも母親が肛門で、息子の勃起を受け入れて歓喜する。
同性愛の男性同士は、女性器の代用として肛門を使用する。
母親と息子、或いは、父親と娘がセックスし、誤って射精して妊娠したら、当然子供を出産する訳にはいかないだろうから、堕胎せざるを得ない。
それを完全に回避するには、避妊処置を取る以外には、口や肛門で受け容れる、という発想は、不思議な事ではない。
同性愛に関しても、太古の昔から存在していたようだ。
女性の場合、江戸時代の大奥で代表され、尼寺や、また現代では刑務所内でも行われて来ていたそうだ。
男性の場合、お小姓と呼び、戦国時代に、殿様が若く愛らしい武士を戦場に同伴させ、性愛の対象としていたのは、公然の秘密であった。
一説によると、暴力団と称される組織の人達に於いて、同性愛者が多いそうだが、やはり刑務所で、その性癖に目覚めるのだそうだ。
それにしても、近親相姦、アナルセックス、そんなイレギュラーな性愛は、自分の生活とは何処か遠い世界の話であるように感じていたが、それが現実の生活に起こった。
まして、私の恋人と、その母親が、である。
琢磨はかつて一度たりとも、私の肛門に指で触れた事すらなかった。
かく言う私も、亜紀さん、麗子さんの二人と同性愛の関係であったし、過去、幼い頃、「検便」と呼んで、佳奈ちゃんと一緒に、浩ちゃんにお尻の孔を綿棒で弄られたりしたし、琢磨と知り合って、セックスする関係になったとたんに、セックスや排泄を、他人に観られる事を意識して、異常な快感にのめり込むようになったのだから、人の行為や性癖をとやかく言える立場ではなかった。
その私を差し置いて、事もあろうに母親と。
背徳的な、人には明かせない性癖を身に付けてしまった私が、自己弁護する。
一体、どんなセックスが真実で、どんな性癖が異常なのだろうか?
その境界線は、何処にあるのだろうか?
恋人の性器を口で愛撫するのは許されて、赤の他人の性器を口で愛撫するのは許されないのか?
口で性器を愛撫するのは正常で、射精した精液を口で受けるのは?
飲み干すのは?
膣内に射精するのは正しくて、口の中に射精するのは異常なのだろうか?
肛門を口で愛撫された事も、した事もないが、性器を口で愛撫するのは正常で、肛門を口で愛撫するのは異常なのか?
今の私なら、肛門を愛撫されて、快感を得る事が出来るようになった。
まして、勃起で貫かれ、抽送されたら、エクスタシーさえ覚えるに違いなかった。
それは、異常な事なのだろうか?
私の頭の中は、完全に錯乱状態であった。
何処をどう歩いて、どうしたのか解らないまま、気が付いたら、山手線に乗っている自分に気付いていた。
腕時計をした事がなかったので、目黒駅に停車した時、ホームの時計を見ると六時前だった。
「随分と、何か考え事をしていらっしゃったようですね?」
ふと、向かいの中年の紳士がにこやかに微笑んだ。
中学か高校の教師?
大学の教授風、いや、学者にも見える風情だ。
見回すと、周囲には誰もいない。
私が無言でいると、彼が二度口を開いた。
「山手線を一周半してますよ」
琢磨のマンションは西武池袋線で、池袋から山手線に乗った事すら記憶になかったが、時間を計算したら、彼の言う通りだろう。
しかし自分の部屋に戻る気もなかったし、何を何処でどうして、という気分でもない。
彼は何時から私を観てたのだろうか?
「あ、貴方は?ず、ずっと?」
「貴方が池袋から乗って、ここに座った時から、何か酷く思い詰めた様子だったので、暇潰しにお付き合いさせてもらったのですよ。夕方まで暇だったし」
頭の中が混乱したままなのか、彼の言葉に続く応えが浮かんで来ない。
「お暇そうだし、お付き合いして戴けませんか?」
彼が眼を細めて微笑んだ。
悪い人でもなさそうだし、悪意もなさそうだった。
いや、今の私は、相手がどんな人でも、誘いに応じただろう。
恵比寿で降りて、喫茶店に入る。
「行きたい処があるのだけれど、未だ開いてないのでね。少し時間を潰そう」
喫茶店に入ってコーヒーを注文する。
彼の優しい笑顔を見て、ふと、口の周りと顎にふさふさの髭を伸ばしたら、昔何かの教科書で見た哲学者の写真に似ていて、似合いそうだと、場違いな事を考える。
「何を、思い詰めていらっしゃったのかな?山手線を一周半お付き合いした私に、嫌でなければ、お話ししてみませんか?他人には話せないような事ですか?」
彼がコーヒーを一口?んでから、また貌を綻ばせた。
「べ、別に、お話しても構いません。ほ、本当は他人に話せるような事じゃないかも知れないけれど、い、いえ、他人だから話せるかも」
事実、遭ったばかりの男性に話せるような内容ではなかったのだが、私の脳裏で錯乱しているイメージを言葉にして吐き出せば、少しは気が収まるかも知れないと想ったのかも知れない。
私は、琢磨との関係を話し、数時間前の体験を話し、そして山手線の中で脳裏を駆け巡った様々な思いを語った。
勿論、私の性癖は隠して置いた。
遭ったばかりで素性の知れない彼に、そこまで曝す必要はないだろうと感じたからだ。
しかし彼は、私の話を聴いて、既に悟っていただろう。
私は、自分の思いを一気に語った後、大きく溜息を付いてから、コーヒーを啜った。
「貴方は、他人には言えない性癖をお持ちのようですね?」
《何?どうして?判ったの?》
私は一瞬貌を強張らせて彼の眼を見て、俯いた。
「貴方は、食べ物の種類で何がお好きですか?例えば、肉類か魚介類か?」
何の話だろうか?
意外な質問が彼の口を付いた。
「ど、どちらかと言うと、魚介の方が好きですけど?」
「魚介も、お刺身で食べる、煮る、焼く、フライにする、天ぷらにする、色々ありますけど、どうですか?」
「どんな調理方法でも、好んで食べますけど、一番好きなのはお刺身です」
「うん。お寿司屋さんで、そうだね、マグロにしようか?赤身、中トロ、大トロでは?」
(続く)
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