アナルファンタジー(5)激変-第13話
作家名:優香
文字数:約3050文字(第13話)
公開日:2021年2月8日
管理番号:k066
麗子さんが二日続けて喫茶店に現れなかった。
渡欧するとは聴いていなかったし、他の用で忙しいなら、そう言うはずであった。
今日来なかったら、彼女のマンションを訪ねてみよう。
いきなり行っても、彼女が怒るはずはないと、想った。
思案を重ねながら仕事をしていると、何時もの時間よりもずっと遅く彼女が現れた。
人目を偲んで、私に両手を併せて謝った。
彼女の何時もの姿を観て、私は思わず涙を溢れさせていた。
トイレに行って涙を拭い、気を取り直して仕事に戻る。
こんなに彼女を愛していた。
二日彼女を観ないで、不安に駆られる程。
そして彼女の無事な姿を観て、涙する程。
私は今更ながらに、自分の彼女への愛の深さを想い知っていた。
しかし、一抹の不安は残った。
未だかつて、私に事前の話もなく、一日たりとも、喫茶店に姿を現さない事はなかった彼女が、何故二日も来なかったのか?
「大切な話があるの。今夜来て」
何時もと違う、彼女のメモ。
何時もと違う彼女の態度と視線。
私は不安を抱えたまま仕事を終え、彼女のマンションに向かった。
部屋の鍵は開いていた。
麗子さんは、初めての夜愛し合ったソファーに腰掛け、物憂げにワインを?んでいた。
「優香。貴方に大切なお話があるの」
「な、何ですか?」
胸騒ぎが一層高まった。
私にとって、良い話ではないのは、間違いなかった。
ワインに注がれたグラスを受け取り、一口?んだ。
「仕事が順調になって、オフィスをパリに移す事になったの。私もここを引き払って、パリに引っ越さなきゃならないわ。日本に帰って来るのは、半年に一度か二度くらいになるわ。貴方。一緒にパリに行くのは無理でしょう?」
彼女が上目遣い気味に私を見詰めた。
「ああ、きゅ、急過ぎるし、わ、私、し、知らない世界みたいに想える」
パリでの生活。
彼女との生活。
それは夢物語のように感じられた。
学友で、海外旅行に勤しみ、パリやニューヨークに住みたいと言っている女の子であれば、飛びつく話ではあっただろう。
しかし彼女の口調と表情は、私を連れて行くのを最初から予定に入れていないような風だった。
断った方が、彼女の希望に沿うように想えた。
「そ、そうね?学校だってあるし、私の都合で、貴方の将来を壊したくないし」
私が、一緒に行くと言えば、彼女は困るだろう。
私はそう直感した。
それでも、彼女と離れる生活など想像も出来なかった。
涙が溢れた。
「ああ、優香。私、貴方と離れたくない。でも仕事だし、パリで仕事をするのは、私がこの仕事を始める前からの夢だったのよ。解って頂戴」
彼女も泣いていた。
「に、日本に帰った時は、か、必ず逢って、だ、抱いて下さいっ」
「も、勿論よ。貴方を、こんなに愛してるっ」
彼女が立ち上がって忙しなく全裸になり、私を抱いた。
私を抱き締め、キスを貪りながら、私を全裸にして、乳房をきつく吸い立てた。
「ああ、れ、麗子さんっ。あ、愛してるっ。は、離れたくないっ」
「わ、私もっ、あ、貴方とっ、は、離れて暮らすなんてっ」
何時ものように彼女が逆向きに圧し掛かって私の両脚を大きく拡げた。
私の眼の前に愛液を溢れさせた女性器が突き出された。
私は麗子さんの太腿を両手で抱え、尻肉を力任せにわし掴みにして拡げ、女性器全体を口に含んで夢中で吸い立てた。
彼女も同時に、同じように私の女性器を口に含んだ。
互いの激情をぶつけるかのような荒々しい愛撫は、未だかつてない刺激をもたらせた。
舐め上げ、吸い立て、しゃぶり、溢れる愛液を啜って飲み込み、互いの乳房を擦り合わせ、膣孔に挿入した指で膣粘膜を擦り立てる。
二人の粗い官能の喘ぎと、膣粘膜に指が出挿いりする度に鳴る淫猥な愛液の濁音が室内に響く。
やがて、何時ものように、二人同時にエクスタシーを迎え、互いのクリトリスを吸い立てたまま、獣のように呻いて夥しい愛液を噴き上げる。
間欠泉のように私の愛液が噴出し、彼女の貌や手に飛沫き、彼女の尿孔から噴出した愛液が私の貌や手に飛沫き、互いにそれを口で受け止め、飲み込み、舐め採り、啜り立て、尚も互いの膣粘膜をしゃくり、擦り立てて、互いにエクスタシーを究めさせる。
何度もエクスタシーに襲われ、裸身を激しく痙攣させながら、私はそして、彼女の女性器を口に含んだまま、失神していた。
一週間程、毎晩逢って、肉欲に狂い、そして彼女は旅立った。
空港には行かなかった。
見送りに行って、彼女への想いを抑えられる程冷静でいられる自信がなかったからだ。
彼女も同様に感じていて、それを言葉にした。
私はアルバイトを休み、独り部屋で彼女を想って狂ったようにオナニーをした。
失神するまで。
気が付くと、既に日が暮れていた。
麗子さんと、何時でも、望む時に愛撫され、愛撫し合う事はもう不可能になった。
私は、私が肉体に刻み込まれた彼女の手指と唇と舌の感触、私の唇と手指が憶えた彼女の唇と舌、乳房、女性器、膣粘膜の感触を想い出しながら、オナニーするだけの日々を過ごすことになった。
麗子さんが言った通り、二月か三月に一度、彼女は帰国し、多忙なスケジュールを割いて私と逢ってくれ、二人は時を惜しんで愛撫し合い、性愛を求め合い、満たし合った。
そして必ず、以前と同様にお金をくれた。
麗子さんからもらったお金は、口座に貯まり、七桁になっていた。
そうして、私は就職が決まり、短大を卒業した。
就職前に、東京に出てから初めて、帰省した。
省吾の消息は解らなかったが、知りたいという気持にはならなかった。
武雄は、町のスナックに勤める女性と出来ちゃった結婚をし、幸せに暮らしているようだったし、亜紀さんも子供を設け、漁師の妻として日々忙しそうに暮らしていた。
幼い頃、浩一と佳奈子と三人で禁断の遊びをした神社の境内を散歩してみた。
浩一も佳奈子も結婚はしていなかったが、都会暮らしをしているらしかった。
何故か、あれ程鮮烈だった過去の全てが、私の心の中の片隅の何処かで、スケッチブックに淡いクレヨンで描かれた場面のように、透けて見えている様に想えた。
今、浩ちゃんと佳奈ちゃんと、あの禁断の遊びをしたなら、私はどんな狂い方をするだろうか?
浩ちゃんは、そんな私を観て、悦んでくれるだろうか?
佳奈ちゃんも一緒に、観た事はない美しい裸身を悶えさせるのだろうか?
しかしそれはもう望んでも、遠い記憶でしかなく、現実にあり得る事ではなかった。
私は、そして、この町に私の心の居場所がない事を悟っていた。
就職した会社は、社員一〇〇名くらいで、業界では少しは名が知られていて、若者受けする比較的斬新なデザインのファッションを扱っていた。
麗子さんの仕事を将来手伝う、という私の希望に反して、3ヶ月間の研修を終えて私の落ち着いた部署は総務部であった。
夏の終わり頃に帰国した麗子さんと、一泊二日で西伊豆に旅行し、たっぷりと愛し合う合間に、その話をすると、彼女は、「それでも頑張りなさい」と言ってくれた。
それから一年も経った頃、私に琢磨という恋人が出来た。
総務部の四歳年上の先輩で、何処か高校時代に交際った呉服屋の跡取り息子にイメージが重なる、優しく女性的な立ち振る舞いの男性だった。
社内でも人気があって、仕事も上手くこなした。
麗子さんとは、二月、三月も逢えないようになっていて、自分で言葉にするのも恥ずかしいが、オナニーだけで、心身共に淫乱な私が収まるはずはなかった。
夏季休暇で、同期の女性から旅行に誘われた。
女二対男二の旅行。
彼女は恋人とカップルで、もう一人の男性が琢磨だと知り、悪くない相手だと想って計画に乗ったのだった。
(続く)
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