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雨宿り-第7話



作家名:城山アダムス
文字数:約3060文字(第7話)
公開日:2021年1月15日
管理番号:k070


ひろしの憧れの先生シリーズ第5弾 高校3年生のひろしは、憧れの香織先生と図書館の帰りに土砂降りに遭い、二人ともびしょ濡れに…。あわてて駆け込んだラブホテル・・・シャワーで体が温まった香織先生は、バスローブ姿で寝てしまった。ひろしは、香織先生のバスローブにそっと手を伸ばした。



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僕が香織先生の隣に座ると、

「ひろし君。こんなところで待ち合わせしてごめんなさい。学校の近くだと、他の生徒に見られるの不味いかなあと思って。」

と、申し訳なさそうな顔をした。

「大丈夫です。僕にとって県立図書館は特別な場所ですから。」

「ひろし君にとって、特別な場所。」

僕にとって県立図書館は、僕と香織先生を引き合わせてくれる特別な、大切な場所になっている。

「どういう意味かしら、ねえ、教えて?」

香織先生は不思議そうな表情で聞いてきた。

僕はその理由を正直に打ち明けるのがちょっと照れ臭かった。

「僕は県立図書館が大好きなんです。」

先生はキョトンとしていた。

「お腹すいたでしょう。私のマンションでサンドイッチ作ってあげる。」

僕は、先生のマンションに行けるのがとても嬉しかった。

胸が弾けそうだった。

タクシーは先生のマンションの車止めに止まった。



タクシーから降りると、先生とマンションのエントランスを通り、エレベーターに乗り込んだ。

僕と先生はエレベーターの中で並んで立っていた。

僕は先生の横顔を見つめていた。

先生も僕の方をちらりと見た。

視線が合うと、先生はニコッと微笑んだ。

僕は照れくさくて、少し下を向いた。

エレベーターが15階に止まり、先生の部屋に向かった。

「いよいよ先生の部屋だ。どんな部屋だろう。」

僕は、期待で心が弾んでいた。

部屋に着くと、先生はロックを外し、ドアを開けた。

「ひろし君。どうぞお上がりなさい。」

僕は、玄関で靴を脱ぐと、先生と一緒にリビングに入った。

広い窓から街が一望できる。

遠くに城山が見える。

「今サンドイッチ作るから、ソファーに座って待っててね。」

先生はブラウスにエプロン姿でキッチンに立った。

キッチンで冷蔵庫から食材を取り出している香織先生の後ろ姿を見つめた。

白いブラウスの背中にくっきりと水色のブラジャーのラインが浮き出ている。

僕は、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

先生は手際よくサンドイッチを作り上げると、ソファーの前のテーブルに並べた。

「コーヒーがいい?それとも紅茶?」

「コーヒーください。」

僕は、紅茶の方がよかったのだが、少し大人っぽく振舞いたかった。

「ミルクとお砂糖は?」

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「ブラックで。」

僕は家ではあまりコーヒーを飲まない。

たまに飲む時は、ミルクと砂糖をたっぷり入れる。

でも、先生の前ではちょっと背伸びをして大人っぽく振舞いたかった。

「ブラックでいいの?」

先生は、にっこり微笑んでブラックコーヒーの入ったカップを僕の前に置いた。

先生とソファーに並んでサンドイッチを食べた。

おとといは、先生とこうしてソファーに並んで一緒に紅茶を飲んだ。

その時は二人とも全裸にバスローブという格好だった。

「ひろし君とこうして一緒にソファーに座るの、2回目ね。」

「あの時は、僕も先生もバスローブ姿でしたね。」

「嫌だ。今、思い出すと恥ずかしいわ。」

先生の頬が少し赤くなった。

「でも、とっても楽しかった。ひろし君とこうして一緒にいると、なぜかとっても楽しいの。」

サンドイッチを食べ終わると、先生と一緒に食器を片付けた。

狭いキッチンに先生と二人でいると時々身体が軽くぶつかる。

その柔らかな感触がとても心地よかった。

片付けが終わると、また一緒にソファーに座った。

「ひろし君。本当は紅茶の方がよかったんじゃない?」

先生は僕を見て、悪戯っぽく微笑んだ。

「どうしてわかるんですか?」

「だってあんなに苦そうな顔してコーヒー飲むんだもの。あれでもアメリカンよ。今度は紅茶を入れましょうね。」

先生は紅茶の入ったカップを僕の前に置いてくれた。

「おとといも紅茶だったわね。」

先生は、またおとといの話を切り出した。

僕は嫌ではなかったが、少し気恥かしかった。

そして、気まずさもあった。

「香織先生は、僕が先生が寝ている間にあんなことしたなんて、夢にも思っていないだろう。」

僕は先生が寝ている間、先生の身体を触ってしまったことを、少し心苦しく思った。

「あの時は、ひろし君だけ部屋に残して先に帰ってしまって、ごめんなさい。」

先生は申し訳なさそうな顔をした。

「大丈夫です。全然気にしてません。」

先生に謝らなければならないのは僕の方だった。

「ひろし君。ほら、城山が見えるでしょう。」

ソファーの前には大きな窓があり、遠くの方に城山が見える。

「また、ひろし君と城山に登りたいな。」

「ぜひ、登りたいです。」

先生は満面の笑みを浮かべて僕を見た。

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「ひろし君。約束よ。」

「もちろんですよ。」

先生は、僕と城山に登ったことがよっぽど楽しかったのだろうか?

また香織先生と城山に登れると思うと心が弾んだ。

「また土砂降りになるかもしれませんよ。」

僕が嫌味っぽく言うと、先生は、

「その時は、またドライヤーで服を乾かしましょうね。」

と挑発するような言葉を発した。

僕が冗談っぽく

「またあのホテルで?」

と聞くと

「他にどこがあるかしら?」

先生はまた悪戯っぽく笑った。

そして、僕の目を見つめて、

「私とホテルで雨宿り。ひろし君、嫌なの?」

と、さらに挑発してくる。

「嫌じゃないです。でも・・・」

「でも・・・なあに?」

僕は、先生の挑発的な発言に戸惑っていた。

僕をからかっているのだろうか?

それとも本気で僕を誘っているのだろうか?

「先生は、本気で僕とまたホテルに行きたいと思っているのですか?」

僕は真剣な表情で先生を見つめた。

「本気よ。」

先生も僕の顔を真剣な表情で見つめている。

しばらくすると、先生はプッと噴き出して笑った。

「冗談よ。ひろし君をちょっとからかってみただけよ。」

僕はムッとした表情で先生を見返した。

「ひろし君。そんなに怒らないで。ごめんなさい。気を悪くした?」

僕は黙り込んでしまった。

別に気を悪くしているわけではない。

どう、リアクションしていいか分からなかったのだ。

「ひろし君ったら。赤くなって・・・可愛い。」

「先生。からかわないでください。」

僕は目の前の紅茶を一気に飲み干した。

紅茶はまだ熱かったのでむせてしまった。

僕が苦しそうに咳き込んでいると

「大丈夫?」

先生は僕の背中を優しくさすってくれた。

僕の背中をさする先生の手の感触がとても心地良かった。

咳が治まっても先生の手のひらは僕の背中に置かれていた。

先生の手のひらから暖かい体温が伝わってきた。

僕は先生に少し体を寄せた。

「ひろし君。ちょっと聞きたいことがあるの。」

「何ですか?」

「城山で、ひろし君、私と矢野先生がいとこ同士だって分かった時、とても喜んでいたよね。どうしてなの?」

僕は、どう答えていいか分からなかった。

香織先生と矢野先生の関係を疑っていたのは間違いない。

そして、矢野先生に強い嫉妬を感じていた。

それは、僕が香織先生に好意を抱いていたからだ。

だから香織先生と矢野先生がいとこ同士で恋愛関係ではないと知った時、とても嬉しかったのだ。

「どうしてそんなこと聞くんですか?」

「なんとなく・・気になって・・・」

僕は何も答えなかった。

先生は僕の背中に置いた手を伸ばし、肩に回してきた。

僕の肩と先生の肩が触れている。

先生は僕の顔を真剣な目で見つめ、

「ひょっとして、ひろし君。私のこと好き?」

いきなり僕の心のど真ん中を突いてきた。

僕は、先生の勢いにつられて、本心を打ち明けようと思った。

でも、

「先生のこと、好きです。」

という言葉が出てこなかった。

僕は今まで何人も女性を好きになったが、自ら告白したことは一度もない。

僕の心臓の鼓動は高鳴り、息苦しさを感じた。

僕の肩に回した先生の手に力が込められた。

僕の肩が先生の肩に密着した。先生の肩は熱かった。



(続く)





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