雨宿り-第2話
作家名:城山アダムス
文字数:約2920文字(第2話)
公開日:2020年12月4日
管理番号:k070
ひろしの憧れの先生シリーズ第5弾 高校3年生のひろしは、憧れの香織先生と図書館の帰りに土砂降りに遭い、二人ともびしょ濡れに…。あわてて駆け込んだラブホテル・・・シャワーで体が温まった香織先生は、バスローブ姿で寝てしまった。ひろしは、香織先生のバスローブにそっと手を伸ばした。
気がつくと、城山に登っていた。
月曜日の午前中なので、展望台には人影がなかった。
僕は、香織先生と矢野先生が座っていた赤いベンチに、夕方までボーっと座っていた。
時々携帯が鳴った。
番号を見ると学校からだ。
僕は携帯の電源を切った。
太陽が東の空に沈みかけていた。
日没を過ぎると登山道は外灯がないので真っ暗になる。
僕は、重い足取りで登山道を歩いて下りた。
登山道の出口は県立図書館の横にある。
図書館の横を通り過ぎようとした時、
「ひろし君。」
と僕の名前を呼ぶ女性の声がした。
声の方を振り向くと、そこには香織先生が立っていた。
「ひろし君。こんなところで何してたの?あなたが急に学校からいなくなって、先生たち、とても心配しているのよ。」
香織先生は、僕に近づくと心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「さあ、私と一緒に学校に帰りましょう。」
香織先生は、携帯を取り出し
「今、ひろし君を見つけました。県立図書館の近くです。これから一緒に学校に向かいます。正門前で、タクシーを止めます。」
先生は、学校に連絡しているようだった。
先生たちは僕のことを心配していたんだ。
学校に迷惑をかけてしまった。
僕は、自分のとった行動の影響の大きさに、今更ながら気づいた。
先生は、タクシーを呼び止め、
「さあ、先に乗って。」
と僕をタクシーに促した。
僕がタクシーに乗ると、香織先生が僕の隣に乗り込んできた。
僕はタクシーとはいえ、香織先生と二人っきりになれたのが少し嬉しかった。
「ひろし君。どうして学校を飛び出したりしたの?」
香織先生が隣の席から心配そうに聞いてきた。
僕は、香織先生と矢野先生が原因だなんてとても言えなかった。
「先生。ごめんなさい。」
僕が謝ると、先生はそっと僕の手を握った。
「大丈夫よ。言いたくなければ、無理に言わなくていいのよ。」
先生はそう言うと、僕を見つめて優しく笑んだ。
先生の手は、柔らかくて、指が細く長く、僕の手を優しく包み込んでいた。
僕はずっと握っていたかった。
僕は先生が握った手を、ちょっと力を入れて握り返した。
すると、先生も僕の手を握り返してくれた。
タクシーが学校に着くまで、僕と先生はずっと手を握り合っていた。
握り合った手は、僕の膝の上に置かれている。
タクシーが揺れるたびに僕の手を握った香織先生の手の甲が、ズボンの布越しに膝を刺激する。
心地よい快感が膝から股間に響く。
いつの間にか僕の股間は熱く、硬くなっていた。
先ほどまで沈んでいた気持ちに少し明かりが差して来たような気がした。
僕はこのまま時間が止まってほしいと思った。
学校に着くと、矢野先生が正門で待っていた。
タクシーに乗る前、香織先生が携帯で連絡した相手は矢野先生だったんだ。
僕の気持ちは再び沈んでしまった。
「ひろし。いったいどうしたんだ。心配したんだぞ。」
矢野先生が厳しい表情で僕に聞いてきた。
僕は、黙ってうつむいていた。
「矢野先生。もうこれ以上ひろし君を責めないで。無事に帰ってきたんだからいいじゃない。」
香織先生が、僕をかばってくれた。
タクシーの中の香織先生の手の感触を思い出した。
「ひろし。まだ教室は開いてるから、道具を持って早く家に帰りなさい。僕も一緒に教室に行こう。」
「大丈夫です。一人で教室に行きます。」
僕は矢野先生を振り切って教室に向かった。
矢野先生は僕のことを心配してくれている。
教室まで一緒に行くとまで言ってくれた。
本来なら感謝しなければならないのかもしれない。
でも、どうしても矢野先生が好きになれない。
いや、大嫌いだ。
僕は教室に行き、机の中の教科書とノートをカバンに入れると、教室を出ようとした。
すると、ドアのところに香織先生が立っていた。
心配そうに僕を見つめている。
「ひろし君。矢野先生と何かあったの?」
「どうしてそんなこと聞くんですか?」
「矢野先生が、今日のひろし君、ちょっと変だと心配しているの。矢野先生に対して、ちょっとそっけない態度とったんじゃないの?」
確かに、矢野先生が僕に話しかけても、今日の僕は少しそっけない態度をとっていた。
矢野先生が、変に思うのも無理はない。
矢野先生が悪いわけではない。
僕の嫉妬が原因なんだ。
「矢野先生とは、別に何もありません。」
「そう・・だったらいいけど。」
香織先生は、にっこり微笑んだ。
「もし、何か悩みがあるんだったら、私でよければ、いつでも相談に乗るよ。」
香織先生はそう言うと、僕の手を握ってきた。
僕は、タクシーの中での香織先生の手の感触を思い出した。
僕も、先生の手を握り返した。
「何か悩みがあるの?」
香織先生は、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
僕は、香織先生が個人的な相談に乗ってくれると言ってくれたことがとても嬉しかった。
でも、さすがに香織先生と矢野先生のことで悩んでいるとは言えない。
「大丈夫です。」
僕がそう言うと、香織先生はにっこり笑った。
「そう。だったら少し安心した。私もこれから家に帰るの。一緒に学校を出ましょう。」
香織先生と一緒に帰れるなんて、僕は夢のようだった。
香織先生と並んで廊下を歩いて、校舎の出口に向かった。
僕と香織先生は手を繋いだままだ。
香織先生の柔らかい手の感触がとても心地よかった。
僕たちは、無言で廊下を歩いていた。
僕は、香織先生の手の感触に集中したかった。
階段の踊り場を曲がる時、先生と繋いでいる僕の手の甲が、一瞬、香織先生の太ももに当たった。
スカートの布越しではあったが、太ももの柔らかい弾力を感じた。
僕の股間は再び熱く、硬くなった。
校舎の出口に差し掛かると、先生が聞いてきた。
「ひろし君の家は、どこなの?」
「郡元町です。」
「そう。私、清水町なの。だったら、正門を出たら私と方向は逆ね。」
僕たちは手を離した。
僕は自分の家が、郡元町であることを悔やんだ。
清水町方向なら、正門を出ても香織先生と一緒に歩けるのに・・・。
僕と香織先生は並んで正門に向かった。
その時も無言だった。
僕は香織先生と歩きながら
「香織先生は、どうして僕の手を握ってきたんだろう。しかも、廊下を歩いている時、ずっと僕の手を離さなかった。ひょっとして、香織先生は僕のことを・・」
僕の脳裏にほのかな期待がよぎった。
正門で僕と香織先生は別れた。
「ひろし君。また明日。」
先生は僕に向かって、微笑みながら手を振っている。
「先生。今日はありがとうございました。」
僕がそう言って、先生に手を振ると、先生は向きを変えて歩いて行った。
僕は香織先生の後ろ姿を見送った。
先生が歩いて行く20メートルほど先に、白い車が止まっている。
矢野先生の車だ。
香織先生は、その白い車の助手席に乗り込んで行った。
僕の淡い期待は、見事に打ち砕かれた。
「香織先生と矢野先生はこれから二人でどこに行くんだろう?」
清水町方向には県立図書館があり、その先は城山に通じている。
「また、二人で城山の展望台に行くんだろうか?」
僕は、二人が展望台の赤いベンチに座っている姿を想像した。
もう、陽はとっくに沈み、ベンチの周りは暗くなっている。
微かに外灯の明かりが照らしているくらいだろう。
ふと、香織先生と矢野先生が、あの赤いベンチで抱き合い、キスしている光景が心に浮かんだ。
キスだけだろうか・・・?僕の心は引き裂かれそうだった。
(続く)
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