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記憶の中の女達〜(9)セックスの相性-第17話



作家名:淫夢
文字数:約3040文字(第17話)
公開日:2021年1月15日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

ある夜、“R”に中年の男性が若い女を連れ立って来た。

高価そうな身なりで遊び馴れた風の男とその愛人か、行き付けのクラブのホステスという組み合わせだった。

女は、私より3、4歳くらい年上か、当時では未だ珍しい茶髪で、厚化粧ではなく、わりと美人と言える部類だった。

しかし、その高慢そうな貌立ちは私の好みではなかった。

何より愛嬌というか、可愛げがなかった。

目尻が上がっていて視線が人を品定めするように鋭いのと、身体を斜に構えているのが気に入らなかった。

またタバコの喫い方も、男性っぽい仕草で若い女性らしさがなかった。

オーナーが中年男性と旧知のようで、私と彼女はそれぞれ紹介された。

彼女は麻美と言い、男性の独り娘で、名古屋から来たと言った。

話すに連れ、男性が一匹狼のプロモーターで、芸能界でそれなりに名が売れているらしいのが判った。

閉店前に男性は、仕事があるからと帰り、麻美が一人残った。

私は麻美には余り興味が湧かなかったので、知らない素振りで他の常連と会話していたが、時折麻美に視線を遣ると、私を視ているのか、良く眼が合った。

閉店の時間になり、常連達が帰った後も、麻美は残っていた。

オーナーが何処かに連れて行くのだと想っていたら、オーナーが私に2万円よこして麻美を食事に連れて行けと言った。

私は驚いたが、オーナーは私と麻美を置いて帰ってしまった。

好みでもない女性とこういう状況になるのは苦手だ。

「オーナーのおごりだって。何が食べたい?」

私は麻美に尋ねた。

「お鮨」

麻美は何故か、この状況が当然のように、あっけらかんと応えた。

オーナーが2万円もくれたのだ。

普段行けないような高級な鮨屋に行こうと、以前おばちゃんが連れて行ってくれた新宿3丁目の高級店に行く。

日本酒を頼み、お任せで握って貰う。

足らなくなっても2万円くらいは何時も持ち歩いていた。

少しして、麻美が斜に構えて生意気そうに見えたのは、彼女が左利きだからだと気付いた。

知り合ったばかりなので当然だが、会話らしい会話もなく、ただ美味しい鮨を堪能し、日本酒を冷やで5、6杯も呑んだ頃、麻美の表情が和らいでいる事に気付いた。

“R”で水割り2杯呑み、その後日本酒の冷やを3杯呑んだので恐らく酔っ払ったせいだろう。

しかし、それでも麻美をセックスの相手とは感じなかった。

麻美がバッグからタバコを取り出して咥え、火を点けた。

やはりタバコの喫い方は女性らしい淑やかさが感じられなかった。

そういう癖なのだろう。

「ねえ、あなた、私の事、余り気に入ってないみたいね?」

麻美が私を上目遣いに視た。

「そんな事ねえよ」

私も麻美の視線から逃れるようにタバコを咥えて火を点けた。

どんな時でも女性を不愉快にするような言動はしない主義だった。

「そう?じゃ、私とセックス出来るわね?」

麻美が宙にタバコの煙を吐き出した。

「セ、セックスッ?お前と?」

「あなたは年下なんだから、お前なんて言わないで」

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麻美が私を睨んだ。

しかし眼差しに鋭さはなく、セックスの話になったからか、恥じらう表情になった。

「はい。じゃあ、麻美ちゃん」

私は少し戯けて言った。

「ふざけるなら、お前で良いわ。あなたは知らされてないだろうけど、私、今日、あなたとお見合いしに来たのよ」

麻美が真剣な表情になった。

「お、お見合い?おれと?」

意外な言葉に私は煙に咽せた。

「“R”のオーナー、あなたを随分気に入ってて、自分は子供がいないから、あなたが息子みたいだって」

オーナーの感情は薄々は知っていた。

何時も一緒に行く飯屋の人達にも、また常連の客にも、私を息子だと紹介していたし、それで私もオーナーを「オヤジ」と呼ぶようになっていた。

「ふーん。それで?」

「オーナーと私の親父と相談して、私とあなたを結婚させたらどうかって。それで私を東京に連れて来たのよ」

麻美がタバコを消して、新たに火を点けた。

「結婚?お前と?」

今日は驚く事ばかりだ。

私は未だ19歳。

唯一人、生まれて初めて愛した蓉子とでさえ、結婚など想像も出来ず、そのせいで蓉子を失ったのだ。

まして17歳の時に体験した事件が、結婚というものに対するトラウマになっていた。

「私は厭じゃないわよ。あなた、良い男だし、カッコ良いし。親父もさっき、私独り“R”に残して出て行ったでしょう?あれは、自分はOKって意味だったの」

「勝手に決めるなよ」

私も短くなったタバコを消して新たに火を点けた。

「そう。未だ決まった訳じゃないわよ。あなたとセックスしてみて、それからお交際いのスタートよ」

「何でセックスしてからなんだ?」

麻美が私を視る貌付きが随分和らぎ、私とセックスする気になっているからか、表情に恥じらいの色が浮かんでいた。

「親父が3回結婚して離婚してんの。私は最初の結婚相手の子供。3回とも相手がセックスに淡白過ぎて、その度に別れたみたい。だから私には結婚前にセックスの相性を確かめてからにしろって」

当時でさえ、既に「婚前交渉」という言葉は鼻で笑われるようになっていたが、父親が薦めるのも不思議な気がした。

「してみる?」

麻美が艶っぽく微笑んだ。

最初に視た時は、興味が湧かなかったが、今の麻美なら抱いてみたい。

“この?麻美と?結婚?無理”

しかし結婚前と結婚してからと、相手の態度が変わる事だってある。

相手が、結婚したさに、気に入られようと、自分を偽るかも知れない。

17歳の時の事件とは、真にそれだったのだ。

しかし、麻美が私とセックスしたがっているならしても良い。

麻美に対するイメージも悪くなくなっていたし、拒む気も失せ掛けていた。

「結婚前提っていうの無しなら良いぜ」

「勿論よ。そんなのどうなるか判んないじゃない。あなたがそう想うならそれで良いわ。私はあなたとセックスしてみたい」

麻美がバッグを手にして立ち上がった。

私は伝票を取って店員に合図した。

「私が泊まってるホテルに行こう」

タクシーを拾って乗り込むと、麻美が運転手に「ニューオオタニ」と告げた。

“ニューオオタニ?”

名前を聴いた事しかない高級ホテルだ。

私は1泊3000円のラブホテルしか利用した事がなかった。

どうにでもしてくれ。

成り行き任せだ。

覚悟を決めた。

私の腕に腕を絡めて、肩に頬を乗せた。

肘に触れた乳房の感触はそれ程大きくはなく、肢体も細身で、大袈裟だが、それが救いと言っても良かった。

タクシーを降り、麻美が先に立ってフロントでキーを受け取り、エレベーターで上階に上がって部屋に入るまで、私は緊張していて、自分でも歩き方がおかしいと感じていた。

部屋も広く、インテリアも高級そうだったが、私は少し落ち着きを取り戻していた。

「ビールでも呑んでて。シャワー浴びるから」

麻美が冷蔵庫を指差した。

麻美に主導権を握られたくはない。

私は立ち上がって、ジャケットを脱いだ麻美を抱き寄せた。

「シャワーなんて後にしろ」

「ああ、だって汚れてる」

「お前のおま○こ、どれくらい汚れてるか、味見してやる。そんなの知らないで結婚出来ないだろ?」

「ああ、は、恥ずかしい」

麻美が弱々しく首を振り、官能的な表情になった。

「おれの汚れてるち○ぽもしゃぶらせてやるよ」

私は故意に悪ぶって言いながら麻美をベッドに圧し倒した。

ブラウスの上から型の良さそうな乳房を揉み立て、喘ぎを洩らし始めた唇を貪ると、麻美が鼻を鳴らして応じて来た。

「おれが何人目だ?」

「さ、3人目よ」

「歳の割には少ないな。意外と真面目なんだ?」

「だ、抱かれたいって想う男がいなかったのよ」

ブラウスを脱がせ、高価そうなピンクのブラジャーのホックを外す。



(続く)





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