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記憶の中の女達〜(8)中学校教師-第15話



作家名:淫夢
文字数:約3020文字(第15話)
公開日:2020年12月24日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

蓉子を失った傷は、恐らく40年以上経った現在でも遺っている。

あの時、蓉子を許してやれば良かったのか?

意地を張らずに、蓉子と共に違う人生をスタートすれば良かったのか?

やはり答えはない。


世間は夏になっていたが、“R”の閉店後、朝まで飲んで、オーナーの部屋で昼過ぎまで眠って“F”で夜まで過ごす、という私の生活は変わらなかった。

蓉子とは別れたが、決心した通り、おばちゃんともおねえさんとも交際うのを止めた。

二人は変わらず“R”に来て私を誘った。

私が拒んでも、態度はあまり変わらなかった。


ある日曜の夕方、“F”でウトウトしていると、女性の声で目が覚めた。

「座って良い?」

顔を上げると、最近良く見掛けるようになった25歳くらいの人懐っこい笑顔が私の顔を覗き込んだ。

「もう座ってるじゃねえか」

「何時もここで寝てんのね?」

ウエーターにコーヒーを頼む。

美人という程ではないが、薄化粧の貌立ちはそんなに悪くないし、肢体も華奢だ。

「暇だし、何処も行く処ないしな」

「仕事してないの?」

「夜ゲイバーでバイトしてる。でもホモじゃない」

「へー!ゲイバー?面白そう」

女が眼を輝かせた。

仕事を訊かれた時に「ゲイバーでバイトしてる」と応えると、必ず「あなた、ホモなの?」と訊き返されるので、セットで応えるようになっていた。

その応答での女の反応は、ほぼ意外だという反応だったが、その続きは二通りだった。

一つは、少し戸惑って、その後に続ける言葉がなく、話題を探して思案する。

もう一つは、興味津々で突っ込んで来る。

彼女は意外にも後者だった。

「ホモの男性って、当たり前だけど男性同士でセックスするのよね?」

「当たり前じゃないか。何だ、興味あるのか?」

「セックス」と言った時、一瞬言い澱んだが、女は私の顔を視詰めたまま言葉を続けた。

「うーん。知り合いに、ちょっとね」

「そうなんだ?」

今でこそ、多少オープンになっているが、当時(レズも勿論)ホモセクシュアルの世界は未だ市民権を得てはいなかった。

だから、「知り合い」にホモがいる、という彼女の生活環境は、余り一般的な、常識的なものではないと感じた。

「あんたこそ何の仕事してんだ?」

「うーん、まあ、教えても良いか、中学の英語教師」

彼女は一瞬躊躇したが、微笑んだ。

その表情に少し性的な恥じらいが浮かんだ。

「中学の教師」という職業に対して性的に恥じらう事はないはずだ。

「そうか。好きな教師がいて、そいつがホモなのか」

私は判った風に言った。

彼女は少し驚いた表情になったが、すぐに自然に戻った。

「あなた、鋭いのね。でもちょっと違うわ」

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「何だ、違うのか?」

「当たらずとも遠からず、かな?ねえ、あなたがバイトしてる処、行ってみたい」

女が眼を輝かせた。

「今日は休み。でも違う処に連れて行ってやるよ」

「うん」

「おれ、吉田、お前は?」

「貴美子」

私がそれまで交際った全ての女性は年上だった。

私は子供扱いされるのが厭で彼女たちを「お前」呼ばわりしていた。

貴美子も平然としていた。


“F”を出て夜の帳が降り始めた新宿通りの雑踏を歩く。

後を歩く彼女を気遣って何度も振り返る。

それに気付いた彼女が私の腕に腕を絡めて来た。

蓉子より大きめの乳房が私の肘を圧した。


蓉子と別れて随分年月が経つまで、新しい女と知り合う時必ず、蓉子の乳房と比べていた。

女性も新しい男とセックスする際に、それまでにセックスした男の勃起と比べたりするのだろうか?

一度誰かに訊いてみたいと考えながら、永い時が経った。


新宿2丁目の中央通りに出る手前の路地を入ってすぐにあるビルの暗い階段を上がる。

さすがに緊張するのか、貴美子の腕に力が入った。

そこは“NS”というディスコだった。

重い扉を開くと、一気にダンスミュージックの洪水に包まれた。

女性客も数人いたが、ほとんどがホモのカップル、或いは“恋人”を求めるシングルの男性客である。

ワンドリンク500円だったので、金曜土曜の夜は勿論、平日も盛況であった。

50人も踊れば体がぶつかり合う程度の狭いフロアで、今は10組程のカップルが抱き合って体を揺らしていた。

面白い事に普通のディスコと違い、ここではどんなにアップテンポのダンサブルなミュージックが掛かっても、みんな抱き合って踊った。

ミラーボールが燦めく暗がりの中で貴美子の瞳が輝いていた。

カウンターに行って、私はワイルドターキーのロックを、貴美子はハイボールを頼む。

財布から金を出そうとする貴美子を制してポケットからくしゃくしゃの1000円札で払うと、貴美子が唇を尖らせた。


「踊ろう」

暫くは壁の花になって二人とも酒を3杯お代わりし、無言でいたが、Commodoresの“Still”が掛かったので貴美子を促す。

酒を飲み干してテーブルに置き、貴美子を抱いてフロアに出る。

貴美子を抱き寄せると、乳房が私の胸を圧した。

シャンプーの香りが遺るストレートヘアに顔を寄せる。

「あなた、馴れてるのね?」

貴美子が貌を上げた。

「ホモのおじさまを相手に踊るくらいはするからな」

私がぶっきらぼうに応えると、貴美子が私を睨んだ。

酔ったのか、頬が艶付き、瞳が潤んでいた。

「違うわ。女の扱いに馴れてる」

“子供のくせに”と言いたいんだろう?

私は少しムキになった。

「さっきの“当たらずとも遠からず”って何だよ?」

「ああ、わ、私っ」

貴美子の瞳が明らかに涙に潤んだ。

「どうした?」

驚いた私に貴美子がしがみついた。

「私っ、あの子がっ、す、好きなのっ」

“あの子?!”

まさか?

教え子の男生徒に恋して、その男生徒がホモ!

一回りも年下の男生徒を。

いや、私だって、一回り年上のおばちゃんとセックスしていた。

恋愛感情はなかったが。

しかし相手は教師の貴美子にとって教え子、いや、それ以前に完全な未成年だ。

「そうなんだ。その子はお前の気持ち知ってんのか?」

貴美子の眦から涙が頬を伝った。

その恋愛感情の深さが判る。

「知らないはずよ。必死で我慢してるから」

貴美子が鼻を啜った。

「クラスメートの男の子と好き合ってるわ、教室でキスしてるの、見たもん」

曲がEarth Wind&Fireの“Shining star”に変わった。

「そうか。辛いよな」

私は貴美子を抱き締め、髪を撫でてやった。

貴美子が私の肩に貌を預けて、暫く嗚咽を洩らした。

「ねえ、私を抱ける?」

ふと貴美子が涙塗れの貌を上げた。

「お前が厭じゃなきゃな」

「あの子を忘れたいの。ううん、忘れられないかも知れないけど、私自身の気持ちを変えたいの」

「良いぜ」

貴美子の肩を抱いて外に出て、5分程歩いてラブホテルに入った。


ラブホテルにも余り入った事がないのだろう、貴美子が室内の巨大なベッドや天井と枕元の壁に填め込まれた巨大な鏡、シースルーの浴室の壁、テーブルの上に拡げられた性具のカタログなどに眼を見張っては恥じらって背けた。

抱き寄せてキスを見舞うと、抱き付いてキスを貪って来る。

そのままベッドに圧し倒し、洋服を剥ぎ取る。

職業柄なのか、性格なのか、性的経験が浅いからか、綿の白のブラジャーとパンティを着けていた。

貴美子が下着姿でも両腕で乳房と秘部を隠そうとした。

その手を払い除けて貴美子を抱き寄せ、ブラジャーとパンティを剥がした。

型の良い乳房の頂上に未だ色付きの淡い小粒の乳首が揺れ、恥毛の黒々とした叢が戦いだ。

純情そうな貴美子はショックを受けるかなと想ったが、貴美子は許されざる想いを忘れたい、自分を変えたいと言った。

それなら余り経験のなさそうな貴美子に濃密なセックスを施すべきだろう。

「よ、汚れてるわっ」

首筋に唇と舌を這わせると、汗のしょっぱい味がした。



(続く)





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