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記憶の中の女達〜(7)闇の中を歩くピエロを描く女-第13話



作家名:淫夢
文字数:約3640文字(第13話)
公開日:2020年12月10日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

“R”を閉店した後、毎日のように、始発まで区役所通りやゴールデン街で飲んでいたのだが、最も気に入っていたのが“S ”というジャズを鳴らしていたスナックである。

恵さんという女性が一人でやっていて、オーナーは時々顔を出す程度だった。

恵さんは24歳の目鼻立ちのくっきりした美人だった。

彼女は洋服の上からでもすぐそれと判る巨乳だったが、割と細身で、好みのタイプだったが、私は何故かセックスの対象としてではなく彼女を好きになり、彼女も私を気に入ってくれているようで、以前からの友人のように接した。

“S”はジャズを鳴らしていたせいか、やはりミュージシャンや芸術家、或いはメディア関係者が多かった。

フォーク歌手のMA、黒人サックス奏者のJB、イラストレーターのSH、小説家のGA 、鉄の芸術家のTS、他に、週刊“S”の社会部の記者達などが常連客で、私のような19歳のガキ相手にも真剣な話にも応じてくれて、随分勉強させて貰った。

しかし、土曜の夜以外はほとんど客がおらず、私と恵さんが朝まで呑んでしゃべって、という事も良くあった。
     

ある夜、何時ものように“S”に行くと、カウンターに女性が一人いた。

終電も過ぎた時間に女性一人なんて 珍しいな、と想いながら、ひとつ間を置いて座る。

「彼女、蓉子って言うんだ」

恵さんが私のボトルとグラスを私の前に置いた。

「“M”美術大学で同じゼミだったんだ。あたしゃ出来が悪くて早々に諦めたけど、蓉子は誰もが才能を認めててな」

「恵、言わないで」

蓉子が恵さんの言葉を遮った。

ふと横顔を視ると、蓉子は滑稽な程厚化粧をしていた。

「良いじゃないか、本当の事なんだから。で、蓉子は将来の巨匠目指して頑張ってるって訳さ」

恵さんがまるで自分の事のように誇らしげに胸を張った。

蓉子は逆に細い肩を竦めて俯いた。

もう一度横顔を視詰める。

それが癖なのか、何か意味があるのか、しょっちゅう貌を隠すかのように、前髪を掻き下ろす。

多分、素貌は整っているはずだ。

どうしてなんだろうな?

結局、朝まで他には客が来ず、三人で画の話や音楽の話で盛り上がる。

その間、私は蓉子の素貌が愛らしい事に確信を得ていた。

「吉田、看板仕舞ってくれ」

恵さんに言われて、看板を仕舞って店に入る直前、恵さんの言葉が耳に入った。

「蓉子、もう○○止めろよ」

“なんだ、○○やってんのか”

私は少しガッカリした。

私は飲んだ事はなかったが、○○という風邪薬を多目に飲むと、俗に“トブ”と言っていたようだが、ハイテンションになるようだった。

「駅まで送って行け。手ぇ出すんじゃねえぞ」

恵さんが笑いながら私を睨んだ。

酔っ払っているのか、○○のせいなのか、脚元のおぼつかない蓉子の華奢な肩を抱いて新宿駅まで行く。

「独りで帰れるか?」

切符売り場の前で蓉子の肩から手を離すと、蓉子が無言で私にすがり付いて来た。

「何処までだ?」

「祐天寺」

目蒲線か。

私は蓉子を部屋まで送って行く事にした。

部屋に辿り着き、蓉子がドアを開ける。

油絵具の匂いが咽返る部屋に上がり、奥の部屋のベッドに蓉子を寝かせる。

ふと見ると、壁に大きな絵が掛かっていた。

私は一瞬で言葉を失っていた。

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天井から床まである巨大なキャンバスに描かれていたのは、色彩々の風船を持って暗闇の中を歩くピエロだった。

額縁の隅に白い紙が貼ってあった。

絵のタイトルだろう。

“父親”!!

恵さんが、蓉子の才能は素晴らしいと称えていた。

恵さんの言葉を聴いてなかったとしても、その絵は、絵心のない私さえも圧倒した。

○○を服用し、それこそピエロのような厚化粧で美貌を隠し、色彩々の風船を持って暗闇の中を歩くピエロを描いた絵のタイトルを“父親”とする。

蓉子の過去に何があったのだろう。

蓉子は何を想い、どんな生き方をしているのだろう。


「視ないで良いよ」

ふと、蓉子が私の手を引いた。

振り向くと、蓉子はいつの間にか、顔を洗って下着姿になっていた。

下着姿?

と言う事は、私とセックスするつもりなのだろうか?

いや、その前に、私を自分の部屋に入れたのだ。

酒に酔った勢いではない。

〇〇でトンでいる訳でもない。

祐天寺の駅から部屋までも、洗面所から出て来た時も、足取りはしっかりしていたし、言葉もはっきりしていた。

視線もしっかりしている。

本気なのだ。

私は蓉子を抱いてベッドに倒れ込んだ。

「やっぱ可愛いじゃないか!」

「やん。恥ずかしい」

蓉子が前髪を掻き下ろして貌を隠し、さらに両手で貌を覆う。

貌を隠す蓉子の両手を剥がすと上品で清楚なあどけない素顔が現れた。

その美貌は想像していた以上だった。

私は一目で蓉子に恋していた。

蓉子が唇をぶつけるようにキスを貪って来た。

一頻りキスを貪り合うと、私は蓉子のブラジャーをめくりあげ、愛らしい乳房を吸い立てた。

「蓉子っ、好きだっ」

乳房を咥えたまま叫ぶ。

「わ、私も、あなたが好きっ」

蓉子が私の頭を抱え、私の口に乳房を圧し付けて来た。

“蓉子がおれを?!”

今までの、単なるセックスするだけの女性ではない。

蓉子が愛おしい。

蓉子の全てが欲しい。

激しい興奮に襲われた私は蓉子の乳房を愛撫しながら急いで全裸になった。

蓉子の恥毛の叢がショーツの縁からはみ出すほど、夥しく生え茂って拡がっていた。

ふと視ると、小振りの愛らしい乳房の裾野に、腋毛もはみ出していた。


半年ほど前に、一度だけセックスした、腋毛を生やし、匂いを隠す為にオードトワレを付けていた女性を想い出す。

彼女は、恐らくセックス相手の男性の性欲を刺激するために伸ばしていた。

彼女の時は、初めてセックス相手の若い女性が腋毛を生やしているのを視て興奮し、強烈な性欲を湧き起こした。

蓉子は、絵の勉強に夢中で、恥毛の手入れなどした事がないのだろう。

ブラジャーもショーツも淡いピンクのシルクだったが平凡なデザインで、男性の性欲を刺激するような物ではなかった。

あの時の女性に対して湧き起こった性欲と、今、蓉子に対して生まれた性欲は違うような気がした。


蓉子のショーツを脱がし、しなやかな脚を大きく拡げた。

裸身同様、小振りの女性器が既に滴り溢れた愛液に塗れていた。

「来てっ、すぐっ」

何時も女性とセックスする時のように、女性の性欲を昂める為に女性器を口で愛撫しようとした私に向かって、蓉子が両手を宙に游がせた。

“大丈夫だろうか?”

前戯をろくにしないで挿入するのは初めてだったが、何故か蓉子の膣粘膜が受け入れてくれそうな気がした。

いや、おばちゃんやおねえさんに仕込まれた前戯を蓉子に対して施すのは、蓉子を、或いは蓉子に対する初めて覚える愛情を汚すような気がした。

愛液に潤む蓉子の女陰の襞を別け、膣孔に宛がった勃起を一気にめり込ませる。

「ああっ」

蓉子が乳房を揉み立てている私の両手首を握り締めて大きく仰け反った。

蓉子の膣粘膜は驚く程愛液を湛えていて、それでも軋むような抵抗感をもって私の勃起を根元まで咥え込んだ。

やはり、愛液を溢れさせてはいても、未だ膣粘膜が解れていなかったようだった。

それでも、蓉子の膣粘膜が、奥底までめり込んだ私の勃起を咥えて就職弛緩を繰り返す。

「蓉子っ、好きだ!」

「私も、あなたが好きっ!」

私たちはもう一度叫んで抱き合い、キスを貪り合った。

女性に好きだと告白したのは、もしかしたら生まれて初めてだった。

挿入したばかりで、まして抽送もしていないのに、射精感が込み上げて来る。

こんな感覚は初めてだった。

生まれて初めて愛情を抱いた女性との、初めてのセックスだからだろうか。

「ねえ、ねえ、わ、私っ、イ、イクよっ」

しかし、驚いた事に蓉子も同じだった。

感じ易いのか、性感が鋭敏なのか?

「中で良いのか?出すぞっ」

「だ、出してっ、ああ、凄いっ、イ、イクイクーッ」

生まれて初めて覚えるような痺れる射精感に襲われた。

そのまま蓉子を抱き締め、熱く蠢いている膣粘膜奥底に夥しく射精した。

蓉子も激しく痙攣するしなやかな裸身を仰け反らせ、エクスタシーの絶頂を極めた。

私の勃起に密着している蓉子の膣粘膜が収縮弛緩を繰り返す。

重ねた二人の胸の粗い起伏が収まろうとする前に、驚いた事に私は再び射精感に襲われていた。

「わ、私っ、ま、またっ」

驚いた事に、今度も、蓉子も同様だった。

蓉子の膣粘膜の収縮弛緩が速く大きくなる。

蓉子も初めての経験に戸惑っているようであった。

「ああ、イ、イクイクイクーッ」

「蓉子っ、出るっ!」

蓉子とのセックスで驚く事ばかり起こる。

蓉子の裸身が再び一気に痙攣する。

私は蓉子を抱き締め、再び射精していた。

一度も勃起の抽送らしい抽送をしないで、同じ姿勢で抱き合ったままで二度も射精するなんて。

蓉子の膣粘膜の構造が極上なのか?

いや、蓉子も同じタイミングで、二度エクスタシーの絶頂を極めた。

これが“愛”なのか。

“愛の籠もったセックス”なのか。

今までしていたセックスは何だったのだろう。

あのレズカップルとの強烈なセックス体験も、蓉子とのセックスには及ばないように感じた。

私は、おばちゃんともおねえさんとも、いや、蓉子以外の誰とも、もうセックスしない事に決めた。



(続く)





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