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生保セールスレディの秘密-3話



作家名:バロン椿
文字数:約3040文字(第3話)
公開日:2020年11月16日
管理番号:k063


生保レディというより「保険のおばちゃん」と言った方がなじみがあるかも知ません。そんな彼女たちも「はい、今期は2倍が目標ですよ」と高いノルマを課せられ、暑い日も寒い日も、雨の日も雪の日も、「こんにちは!」と明るい笑顔でセールスに励んでらっしゃいますが、それだけでノルマは達成できるのでしょうか? あの手、この手の創意工夫で攻めるが、時には禁じ手の「枕営業」も……



挿絵の官能小説画像


母親としての心配と喜び

山本和代は仕事こそ好調だが、家庭では色々と心配事がある。

「徹、しっかり勉強してよ。こんな成績じゃあ、大学に行けないわよ」

「うるさいなあ」

「何が『うるさい』よ!少しは三村君を見習ったら」

和代の息子、徹(とおる)は高校2年生だが、成績はビリから数えた方が早い。

中学までは優等生だったが、高校で部活に熱中するあまり、勉強に身が入らなくなっていた。

だから、中学からの同級生で、成績優秀の三村(みむら)浩二(こうじ)が遊びに来る度に、「ねえ、徹と一緒に勉強して」と和代はお願いしていた。

「三村、お袋のことは気にするな」と徹は言うが、和代は母親と同じ43歳なのに、専業主婦の母親とまるで違う。

高校生になって色気づいてきた浩二にとって、すらっとして、着ているものはいつもスーツ、それにきれいにお化粧している現役のセールスレディは眩い大人の女だ。

それが「お願いだから、中間テストや期末テストの時だけでもいいから、うちに来て、一緒に勉強してよ」と胸元に手を併せて迫ってくる。

和代の背丈は160センチだから、175センチの浩二を下から見つめられるようで、ドキドキしてしまい、とても断れない。

だから、彼女の望む通り、テスト前は徹の家に泊まり込んで一緒に勉強合宿だ。

「遅くまで大変ね」

和代が夜食を持ってくる。

湯上がりだから、パジャマの襟元から覗ける肌はピンクに染まり、ソープとコロンの混じった匂い、昼間よりも数倍も色っぽい。

その和代が「浩二君、ありがと」と背中にそっと触れてくれる。

寝不足なんか辛くない。

いくらでも頑張れる。

そして、成果は直ぐに顕れた。

「徹、やれば出来るじゃない!」

中間テスト後に開かれた保護者会で、担任の先生から「努力賞」と褒められた和代は帰ってくるなり、徹に抱きついた。

「や、止めてくれよ、みっともない」

徹は照れ隠しに、ぶっきらぼうにそう言ったが、やっぱり母の泣き出しそうな笑顔はとても嬉しかった。

「ねえ、お礼しなくちゃ」と和代は、最初に浩二の母親に「本当にお世話になりました。これからもよろしくお願い致します」とスマホ片手に深々と頭を下げていた。

続いて、浩二には「やっぱり、浩二君、君のお蔭。大好きよ!」と叫んでいた。

「何が『大好きよ!』だよ。いい年して、みっともない」

呆れた徹はカバンを放り出し、ゲームセンターに出掛けてしまった。

禁断の「枕営業」

11月、秋が深まり、肌寒くなってきた。

「徹、お母さん、遅くなるから」

「残業?」

「そうじゃないけど、お客さんと会わなければならないの。9時過ぎるかな」

「いいよ、ご飯は適当に食べるから」

「ごめんね」

和代はこう言って家を出たが、本当の理由は「枕営業」だ。

10月までは順調に成果を上げてきたが、11月から先は見込みが芳しくない。

目標を達成するためには禁断の手を使うしか術がない。

「えっ、い、今、何て言った?」

「やだ、社長さん。そんなこと何度も言えないわ」

先週、和代は恋愛とは無縁の堅物社長を口説き落とし、一夜妻になる代わりに、従業員全員の保険契約を頂くことを約束させていた。


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その約束の日が今日だった。

午後5時前、終業時刻よりも早めに会社を出た和代は二つ先の駅で電車を降り、そこにあるデパートのトイレに入った。

少し狭いが下着を新しいものに着替えるのは、ここしかない。

(会社の更衣室でこんなことをしていたら、「あ、枕営業ね」と直ぐに噂になっちゃう)

スカートのお尻の辺りを気にしながら出てきた和代は待ち合わせの5階の書籍売り場へと急ぐ。

柱の影から覗くと、やはり来ていた。

待ち合わせは6時だが、15分も前なのに社長がいる。

時計を見たり、本を手にしたり、キョロキョロと辺りを見回し、落ち着かない様子がよく分かる。

(真面目な方だから、こんなこと初めてなのね)

和代は気が付かれないように後ろから近づき、そっと腕を組んだ。

「えっ、あ、山本さん」

社長は声が裏返っている。

「お待ちになりました?」

「あ、いや、そんなことないよ」

「ああ、良かった…」

和代は社長に寄り添うと、甘えるように頬をその肩に押しあてた。

そして、「お願い、早く連れて行って下さい。二人だけになりたいの」とラブホテル行きをせがんだ。

「あ、そう、そうだね」

社長は辺りを気にしながらも、和代の手をギュッと握ってきた。

それに合わせ、「優しくして下さいね」と甘えると、「あ、分かってる、分かってるよ。うん、うん」と社長は有頂天だ。

ホテルに入ると、更に和代の演技に磨きがかかる。

「あんまり見ないで」

「あ、いや、ごめん」

服を脱いでも、タオルで大事なところを隠し、腹の出た堅物社長を相手に、まるで処女のような恥じらいを見せるが、キスをされ、ギュッと抱き締められると、「あ、あ、あああ、ダメ、ダメ、感じちゃう」と社長を煽り立て、ベッドに上がると、「いやあ、いやあ、社長さん、そんなことしちゃ…あ、あああ、ダメ、ダメ……」と大胆に体を開く。

そして、挿入されると、「あ、ああ、ああ、あっ、あっ、い、逝っちゃう、逝っちゃう……」と外に聞こえてしまうような大きな声で叫び、社長にしがみついた。

「はあ、はあ、はあ……」

事を終えた社長は背を向け、萎んでしまったペニスをティッシュで拭っていたが、和代は「恥かしい」とその背中に抱きついた。

「ど、どうしたんだね?」

「だって、だって、社長さんが凄いから、私、私、あんなに大きな声を出しちゃって…もう、恥かしくて、社長さんの顔を見れないわ」

「えっ、凄いか?」

「あん、もう、惚けちゃって。私、腰が抜けちゃったのよ」

こんなことを言われたら、どんな男でも舞い上がってしまうものだが、和代はこれで終わらない。

「ねえ、もう一回、お願い」とペニスにしゃぶりついた。

これで数か月は営業成績に困らない。

和代にしてみれば、こんなことはお安い御用だ。

予想外の展開

(今日も見て行くか…)

午後8時過ぎ、進学教室の授業が終わった三村浩二はコンビニに飛び込んだ。

「難しいよな、数学」

「まあ、文系の俺たちには無理だよ」

店内では同じ高校生たちが雑誌を見たり、アイスクリームを食べたりしているが、浩二はそんなものには全く関心がない。

彼はハンバーガーとペットボトルのお茶を買うと、店の横の路地に積み上げてある配送箱の陰に入り、そこに寄りかかった。

10m先にはラブホテルの裏口がある。

入る時は人通りが少ないといっても表通りだから、どのカップルも駆け込むが、出るのは薄暗い路地にある裏口だから、手を繋いだり、肩を寄せ合って出てくる。

中にはキスを交わしながら出てくるカップルもいる。

覗き見るには絶好の位置、浩二だけが知っている「穴場スポット」だ。

ハンバーガーを頬張り、こっそり覗いていると、最初に出てきたのは髪の毛の薄いおじさんと、ちょっと離れて化粧の濃い女だ。

(へっへっへ、ホテトルか、見え見えじゃん)

お茶を飲んだ彼はニヤッと笑った。

続いて浩二と幾つも年が変わらない大学生のカップルは仲良く手を繋いでいた。

(えっ、やったのか……俺も早く大学生になりたい)

ところが、それっきり出てくるカップルはいなくなり、ハンバーガーも食べ終わった。

(8時半か。そろそろ帰ろうかな…)

そう思った浩二が配送箱の陰から出てきた時、裏口から出てきた和代と目が合ってしまった。

「ウソ……」

「えっ……」

和代の顔は引き攣り、浩二は持っていたペットボトルを落としてしまった。

だが、次の瞬間、和代は一緒にいた男の手を引いて路地の奥の方に消えてしまった。




(続く)





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