携帯占いの女たち-2話
作家名:金田誠
文字数:約3150文字(第2話)
公開日:2020年11月10日
管理番号:k067
昔の出会い系は、今ほどシステムが固定化しておらず、緩さやバリエーションを持っていました。そうした特徴を突いて、出会えるかを日夜研究していたもんです。その一つをご紹介。
フリーターの女性とは、彼女の住んでいる八王子市内のカラオケボックスにお昼から繰り出した。
ベージュのコートに身をくるんだややぽっちゃり目の体型だが、20歳なので肌にはハリがある。
丸顔の茶髪ショートだが、あまり好みのタイプではない。
ただボックスに入ってコートを脱ぐと、ぴったりしたTシャツの胸が大きく迫り出している。
うんともすんともしていなかった私の股間が、ズボンの中でムクムクと頭を持ち上げ始める。ゲンキンなものだ。
歓談して数曲歌ったあと、隣りへにじり寄った。
目を見つめ、手を取り、指先で彼女の指腹を揉みさする。
ハッとした顔つきをするも、嫌がる様子がなかったので、腕をぐいっと引き寄せて、頬にキスした。
「あっ・・」
突然の接吻に彼女が小さく声をあげる。
幾度か、チュッチュと頬、こめかみ、下ろした髪のおでこ、あごのラインと様々にスライドさせながら接吻を続けていき、最後、下くちびるに触れるも、そこは堅く閉じられたままで、身体が少し震えている。
私は逡巡したが、えぇいと唇をこじ開け、舌をさし込もうとした途端、顔を離して拒絶された。
狙いは、その下にもある。
大きな胸の張り出しが、気になって仕方ない。
すでに次曲は演奏されていたが、二人ともに互いの視線を剥がすことができず、彼女は眉をへの字に曲げ困惑の眼差しを向けている。
丸みを帯びた2つの山のうち、向かって左の乳房をTシャツごしに左下手から鷲づかんで持ち上げた。
「いっ・・あっ」
眉根を寄せて、私の手首を取ると、押し下げるようにして胸への接触を阻もうとする。
ところが、さして力が入らず、存分にこねられてしまう。
「すごく大きくて、柔らかい・・」
そう言われて下を向き、それ以上の抗いを見せることなく、口を少し尖らせた。
何か言いた気だったが、上目遣いでこちらを覗くように見るだけだ。
私はシャツの裾に手をかけて、めくりあげようとした。
「やっ。ダメっ」
短く叫ぶと、さすがにシャツを下に引っ張って抵抗する。
すでに彼女の背中に回していたもう片方の手で、ホックをまさぐると、プッという感触がして、ブラが緩んだ。
「ちょ、ちょっと待って」
慌てて、シャツごしに彼女が胸を押さえた。
素肌の背中を爪で、スッと撫でると、身体をビクッとさせ、彼女は胸を私の前に突き出してしまった。
その緩んだ胸を、脇側からむにゅっと掴んだ。
「あっ。ほんとに柔らかい」
わざと耳元で声に出す。
ブラの裾から指を入れて生乳をつまんだ。
指先に力を入れると、お餅のように伸びる軟乳。
指関節まで埋まるほどだ。
指の腹を奥地まで侵入させると、芯の入った乳頭に当たった。
その硬さのある根元を親指と人差し指で、キュッとはさみ、かるく捻った。
ビクッビクッと身体を痙攣させて、彼女が私の手の甲ごと上から押さえてくる。
「ダ、ダメですっ」
頬を真っ赤に染め、目を潤ませる。
ブラをシャツから引き出して、その大きな乳房と乳頭を間近に見たい。
素肌の乳を手のひらいっぱいにして触りたい。
舌でテロテロして、しゃぶりつきたい。
股間がそう叫んでいる。
にもかかわらず、今にも泣きだしそうな表情を彼女が見せるので、あまり激しくするのはまずいかという考えに被せて、今日の夜に会う人妻のことが頭に浮かんだ。
「お昼ごはんを食べに行こう」
私は彼女から身体を離し、それ以上は事を運ばなかった。
カラオケを出て、地元で遅いランチを取った。
彼女は頻繁に喋りかけてくるが、時が経つにつれ、私はソワソワしてきた。
午後の7時には池袋で人妻と待ち合わせている。
いまは夕方の4時。
こんな時間に別れるには、何か口実が必要だ。
「ん?電話だ」
ポケットから携帯を取り出して、画面を覗く。
「どうしたの?」
彼女が訝しげな表情をする。
「会社から電話が入ってる。ちょっと掛け直してくる」
そう言って私は席を立った。
もちろん、そんな電話は入っていない。
頃合いを見て席に戻った。
「会社に行かなきゃならなくなった」
「どうして?」
「なんか僕の担当している業者からの搬入がストップしたらしくて。明日のキャンペーンに間に合わなくなるから、その対応を緊急に話さないといけないって」
我ながらいい加減な理由だ。
「そんなの誰か他の人が、できないの?」
「んー、たぶん無理だと思う」
「じゃあ、もう帰っちゃうの?」
「これからすぐ来いって言われてるから・・行かないと」
「せっかく今日はじめて会ったのに・・まだ、時間も早いのに?」
食い下がる彼女に、どうやら気に入られたようだ。
「ごめん。今度、この埋め合わせはするからさ」
席を立って、会計は私がすべて持った。
もう心は人妻で満たされており、すぐにでも今日の夜のシミュレーションを考えたくて、うずうずしている。
駅まで彼女が送ると言う。
いいよと言っても、ついてくると聞かない。
次に会うときには、今日以上のことが確実に期待できるだろう。
あそこで止めておいたのは、間違いではなかったかもしれない。
こんどは、存分にあの乳を味わえる。
笑顔でさよならを交わし、電車に乗り込む。
中央線で新宿まで出て、山手線に乗り換えた。
池袋で降りて喫茶店に入る。
待ち合わせまで1時間以上あるが、結局特に考えるようなシナリオは生まれず、会ってからその場で対応することにする。
時間が近づいたので店を後にし、待ち合わせ場所の西口丸井前に佇む。
「こんばんは。裕子さんですか?」
信号を渡ってこちらに向かってくるジーンズ姿の女性に声をかけた。
「はい。山崎さん?」
11月の寒さが厳しくなってきた頃だ。
彼女はブラウンのマフラーを巻き、黒のショートブーツに軽く音をさせながら近寄ってきた。
スレンダーな身体つきが、実際の年より若く見せている。
小学生のいる母親には見えない。
品のある雰囲気の美人だ。
やや硬さのある笑顔を間近で見た瞬間、昼のフリーターを切って、目の前の女性に全力を出そうと決めた。
惜しくはない。
ミナは、元々好みのタイプではなかったのだから。
道すがら、おしゃべりが滞ることもなく、予約していた創作料理店に到着。
私は次々に高い品を注文する気の入れようで、舞い上がってしまっていた。
彼女は、蟹を使った料理がお気に召した様子で、甲羅を皿に蟹味噌と和えられたオーブン焼きのグラタン果肉を口にすると、風味がとても美味しいからとお代わりもしてくれた。
会話も十分弾んでいたが、今日はこの辺りで切り上げようというときに、彼女からのサプライズがあった。
「これステンドグラスなんですけど、貴方に」
紙袋を差し出してきた。
「えっ。嬉しいなあ。ありがとう。いま開けてもいいですか?」
「どうぞ」
小さな箱から取り出す。
それは、優しいオレンジ色のカバーがついている手のひらサイズの可愛らしいものだった。
家の廊下のコンセントに差し込むタイプだろう。
「もしかしたら、これ、裕子さんが作ったの?」
「そう」
恥ずかしそうな笑顔で返してくれる。
初対面で、手づくりの品をもらったのは初めてだ。
自分の胸がキュンキュンするのがわかった。
相手が美人だと、こんなにも嬉しいものなんだ、と思わず自分で自分を笑ってしまう。
こうして2人のビッチまがいとつつがなく邂逅することができたのである。
それ以降は、2人を区別して対応した。
別れたその日に、お礼のメールを人妻に送り、一方のフリーターにはメールを送らなかった。
このまま自然消滅させられればいいと思ったからだ。
ところが、2日後にフリーターからメールが届く。
次はいつにするというお誘いだ。
私は興味をなくしていたので、返信する気がない。
もし電話がかかってきたとして出るつもりもなかった。
そして思惑通りメールを一度無視するだけで、その後のアプローチは途絶え、私の杞憂は雲散した。
おそらく向こうも切られたと感づいたのだろう。
面倒になる前に去られ、ホッとする。
(続く)
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