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記憶の中の女達〜(2)デパートのトイレで-第3話



作家名:淫夢
文字数:約2850文字(第3話)
公開日:2020年9月30日
管理番号:k057


この作品は、過去、実際にセックスした数百人の女性の中の、記憶に残っている数十人の女性との出遭いとセックスと別れを描写。



挿絵の官能小説画像

ある昼下がり、上板橋にあるピンサロのおねえさんの部屋で目覚めると、おねえさんが食事を作っていた。

今朝の彼女は何時もより激しかったなと想いながら、すれ違いざまに軽いキスを交わしてトイレに行く。

「おはよう」のキスをしたい、と彼女が言い出してからするようになったのだが、なんか照れ臭かった。

おばちゃんが来ない、週に3、4日、彼女が店に来ない日でも彼女の部屋に泊まりに来るようになってひと月になる。

アジの塩焼きとご飯とみそ汁が、玩具のような折り畳みテーブルの上で湯気を立てていた。

大抵は一緒に目覚めて、駅前の喫茶店か食堂に食べに行くのだが、彼女が気が向いた時だけ作ってくれた。

彼女の料理上手は、何度かごちそうになって判っていた。

と言うより、彼女の味付けが私の味覚に合っていたのだろう。

“アルコールが主食”と粋がっていた私だったが、彼女の作る食事は何故か良く食べた。

祖母から母、そして彼女へ直伝されたというみそ汁は特に絶品であったし、彼女の東北の実家から送って来る米で炊いたご飯も美味しかった。

「これ、私が漬けたの。ばあちゃん直伝のぬか漬け」

彼女が差し出した小皿に乗ったタクアンを箸で摘まんで齧ってみる。

「うん。塩っ辛いけど、良く漬かってて美味しいな」

あっと言う間にご飯のお替りをする。

「今日は、おばちゃんとデートじゃないよね?」

「うん。今日は来る曜日じゃない。たまにいきなり来るけど」


おばちゃんとおねえさんが“R”で鉢合わせする事も勿論あって、何時の間にか二人とも互いに私との関係を知ったようで、しかしそれで二人の、私に対する態度が変わった訳でもなく、また二人が仲違いする風でもなかった。

ピンサロのおねえさんとは、彼女の部屋に行けば何時でもセックス出来るし、彼女もそれを判って納得している部分もあったから、私は二人がダブる時には何時も、おばちゃんの方を優先していた。

おばちゃんとは何時もホテルでセックスして、独りで暮らしているというおばちゃんの部屋に連れて行かれた事はなかった。

多分、パトロンの社長が何時来るか判らないからだったであろう。


「パンツとシャツ買っといたから、着て行って。それから今夜、私行かないから、おばちゃんが来なかったら、明日の朝来て。昼から夏物の洋服買いに行こう」

「判った」

何となく、こうして食事を作って貰って、下着や洋服を買って貰っていて、セックスする関係でなければ、彼女が姉のように想える時もあった。

勿論、セックスする関係であっても、「愛してる」と言葉にし合うとか、恋人であるとか、と言うような関係でもなかった。

今から想い出しても、おばちゃんもそうだが、不思議な関係ではあった。


「先に出るぜ」

彼女のご出勤は午後3時くらいである。

私は何時ものように2時頃部屋を出た。

新宿通りをぶらつき、“K”書店を覗いたりした後、高級デパート“I”の通りに面したガラス張りの喫茶店に入る。

普通の喫茶店より高かったが、お金に困っている訳ではない。

ここの窓際の席に座って、ただぼんやりと通りを行き交う人の群れを眺めるのが、何となく好きであった。

その日は何時もより割と混んでいて、ガラス張りではない一番奥の席に案内された。

私はコーヒーを頼んだ。

運ばれたコーヒーに口を付け、煙草に火を点けて店内を観回す。


ふと、すぐ傍の席で、独り座っている和風の中年女性と視線があった。

私が壁を背にしていて、彼女は壁の方を向いて座っていて、斜向かいに顔を合わせる状況だった。

おばちゃんと同い年かもう少し年上で、長い髪をアップにまとめて、高級そうな和服を上品に着こなしていた。


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私がアルバイトをしているゲイバーには、オーナーの人脈からか、芸能界の有名人や芸術家なども割と来ていて、勿論全員がホモだとは限らなかったし、高級クラブのホステスやそれなりのクラスの女性、女優や女性デザイナーなどを連れて来る事もあり、高齢になった今でも若い頃の上品さと清楚さと美貌を失っていなかった女優のKY(2019年の秋、逝去)が、今は亡き日本文学界の重鎮JKと何度か一緒に来たのを今でも憶えている。


おばちゃんも時々和服で来ていたし、母親もPTAの会合や授業参観に来る時、仲人をする時など何時も和服で、子供の頃から着付けを手伝わされた事もあったので、和服の着こなしの上手下手は見ればすぐに判った。

おばちゃんよりは化粧は薄いけど、少し美人かな、でもやっぱり太目だなと想いながら、彼女のセックスする痴態を想像する。

薄暗い部屋で畳の上に押し倒して、帯を解かないままで胸元を開けて乳房を露わにして、裾を絡げて秘部を露わにして、オナニーさせて「我慢出来ない。ちょうだい」って言うまで視詰めて。

女性のオナニーは、おばちゃんもおねえさんも、私が頼んだらして視せてくれた事があったので、想像は出来た。

時折視線が重なると、知らぬ素振りをして、また垣間視てを繰り返す。

しばらくして、彼女が腕時計を視た。

席に置いたバッグを取り上げる時に伸ばした真白な二の腕が酷くセクシーに想えた。

“帰るのか?”

もう少し眼で愉しみたかったのだが、ちょっとがっかりした。

その瞬間、彼女が驚いた行動に出た。

自分の伝票を指で摘まんで立ち上がると、私のテーブルまで来て、私の伝票も拾い上げたのだ。

「一緒に来て」

私を視ないまま小声で鋭く言うと、出口に向かって歩き出した。

点けたばかりの煙草をもみ消し、慌てて後を追う。

彼女はレジで代金を払い、喫茶店を出る。

何処に行くのか、彼女の歩みに従っていると、エレベーターの前に立った。

並んで待っていると、すぐに上りエレベーターのドアが開いた。

お愛想笑いを浮かべてフロアの案内を繰り返すエレベーターガールと三人だけ。

何階だったか忘れたが、進物、会員サロンなどのフロアで彼女が降り、後に続く。

彼女はトイレの入口まで行くと、「ちょっと待ってて」と小声で鋭く言った。

足を止めると、彼女が先に女性用トイレに入り、すぐ顔を覗かせて「早く来て」と言った。

女性トイレに、私が入って良いのだろうか?

一瞬躊躇したが、そこは怖いもの知らずの19歳のガキである。

周囲の視線を窺ってから、彼女の後に追って中に入った。

一番奥のトイレに入り、一緒に入る。

ロックした彼女が私に抱き着き、ジーンズの上から私の股間を弄る。

「して」
「ここで?」

「そう、ここでして欲しい」

彼女が堪え切れない風情で、鼻息を粗くして私の唇を貪る。

熱い喘ぎが洩れる唇と舌を受け入れながら、袖口から挿し入れた掌で、乳房を探る。

当然の嗜みでブラジャーは着けてない。

私の掌で、おばちゃんのより小振りで、おねえさんのより大き目の柔らかい乳房が潰れた。

勃起した乳首が掌で転がる。
「何で?おれ?」

「さっき、ずっと私をいやらしい眼付きで視てたでしょう?感じちゃった」

「こんな事、こんな処で良く、やるのか?」

私は、19歳のガキだとナメられたくなくて、店の客の年上の女性にもタメ口を利くようにしていた。

「初めてよ。こんなの。ねえ、厭?」

「厭じゃない」
「じゃあ、して」



(続く)





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