アナルファンタジー(4)激愛-第7話
作家名:優香
文字数:約3040文字(第7話)
公開日:2020年9月22日
管理番号:k055
悠美はその言葉を耳にして、その意味も判らず彼女の表情を伺った。
彼女は瞬間的に悠美にウィンクして、すぐに周囲に対して社交的な笑顔を振り撒いた。
《秘密って、何の事だろう?》
悠美は帰宅する途中、ずっと考え続けた。
その意味を知って、悠美が激しく興奮したのは、帰宅してDVDを手にした時だった。
DVDのシールは、彼女がサインする為に当然の様に剥がされていたが、DVDをパソコンで再生しようと開いた時、悠美の眼に、携帯電話の番号であろう数字と文字が書き込まれた紙片が飛び込んで来たのだった。
「今夜22時丁度に電話頂戴」
《ま、まさか?こ、これ?あ、あの人のっ?》
悠美の胸の鼓動と媚肉の疼きが同時に、一気に激しく高鳴った。
《「秘密よ」って、こ、この事っ?ああ、な、何て事、わ、私に?あ、あの人が?》
22時まで、後3時間程だった。
悠美は雲の上を歩いているような状態で、父母と夕食を共にし、入浴して部屋に戻った。
その間、夢遊病者のような悠美に対して、父母が何度も訝って声を掛けた程だった。
そして22時になった。
悠美は高鳴る鼓動と媚肉の疼きを感じながら、震える手で携帯を握り締め、紙片に記された数字をプッシュしてコールを待った。
「はい、貴方ね?」
紛れもない、携帯の向こうから聴こえて来たのは彼女の美しい透き通った声だった。
「は、はい、わ、私っ、ゆ、悠美って、い、言いますっ」
緊張の余り、声が上ずって舌が回らなかった。
「悠美ちゃんって、言うの?貴方だけに教えるわね?関係者の一部しか知らないのだけど、私の本当の名前は愛美よ。愛情の愛に美しい、よ。貴方は?」
「ゆ、悠久の悠って言う字に、う、美しいって、か、書きます」
悠美は、彼女の言葉を一言一句間違えないように聴き取ろうと必死だった。
「そう?素敵な貴方にぴったりの名前ね?悠美って、呼び捨てにして良い?」
憧れの彼女から素敵だと言われて、悠美は有頂天になった。
「す、素敵だなんて。わ、私みたいな・・・」
「何を謙遜してるの?貴方は素敵よ。私ね、貴方を初めて観た時、私に、す・ご・く・似・て・る・って、直感したの」
悠美はその言葉を聴いて心臓が止まるかと想う程ショックを受けた。
「あ、ああ、な、何て事っ、あ、貴方がっ、わ、私なんかをっ・・・」
「ねえ。悠美、貴方はもっと綺麗になるわ。絶対よ。私、貴方を初めて観た時、本当にそう想ったの。この子、私に、似・て・る・って」
そして、その後彼女が続けた言葉が、悠美を完全に錯乱状態に陥らせた。
「明日、火曜日の午後、貴方に逢いたいのだけれど、貴方の都合はどう?」
「あ、明日っ?わ、私とっ?」
《あ、あの方にっ?あ、逢えるのっ?》
悠美の視界が真っ赤に燃え、脳裏に愛美の美貌が渦巻いた。
「いやなら、仕方ないけど、だめかしら?」
電話の向こうで、彼女のトーンが落ちた。
「い、いえっ。い、いやだなんてとんでもないっ。び、びっくりしただけですっ。あ、貴方がっ、わ、私と逢って下さるなんてっ、し、信じられないからっ」
「誰にも言わないでね?二人の秘密よ。貴方を信じてるわよ」
彼女のトーンがまた高まった。
「も、勿論ですっ。だ、誰にも言いませんっ」
「貴方は、未だ学生かしら?学校が終ってからで良いわ。新宿までだと何時に来れる?」
「よ、四時には行けますっ」
「解ったわ。西口にAって言う名前の高層ホテルがあるわ。そこのフロントロビーに着いたらこの携帯を鳴らして。愉・し・み・に・してるわ。早く逢いたい」
「わ、私っ、か、必ずっ、い、行きますっ」
そうして、彼女は携帯を切った。
悠美は、しばらくベッドで茫然としていた。
何も知らされない芸人を周囲が芝居をしてからかって、最後に「ビックリなんとかでーす」とやる、テレビ番組なのではないかとも想った。
彼女ではない誰かが、私をからかっているのではないかとも想った。
しかし、「ビックリなんとか」の番組で、からかわれるのは芸人であり、有名人であり、私のような素人が対象になるはずはないし、紙片に書かれた番号に掛けて、出たのは彼女であり、約束したのも彼女なのだ。
悠美は、その夜、余りの興奮で、オナニーをする事さえ躊躇した。
彼女と逢う前に、いやらしい肛門でのオナニーなどすべきではないと考えたからだった。
彼女と逢って何を話すのか、彼女は、私と逢って何を話すのか、何をしようとするのか。
悠美は、自分の妄想から、彼女と全裸になって愛し合い、さらに互いの肛門を愛撫し合い、エクスタシーを貪り合うシーンを想像しながら、結局は、肛門のオナニーはしなかったものの、クリトリスと女陰の襞を指で愛撫し、エクスタシーに襲われた後、やっと眠りに付いたのだった。
翌朝の、両親との食事も、学校へ行く道すがらも、学校での授業も、悠美の心の中には何も入らなかった。
ただ、夢遊病者のように、時間に身を任せただけだった。
新宿のAホテルのロビーに着き、逸る心を抑えて、震える指で携帯電話の番号をプッシュする。
待ち構えていたかのように、ワンコールで彼女の声が悠美の耳に飛び込んで来た。
「部屋まで上がって来て。私がここにいるのはマネージャーにも教えてないけど、一応用心して、誰にも見つからないようにね」
震える脚を忍ばせてエレベーターで指定されたフロアに上がり、指定された部屋番号をしっかり確認して、震える手でドアをノックする。
今度も待ち構えていたかのように、すぐにドアが開いて愛すべき彼女の笑顔が悠美を出迎えた。
「ま、愛美さんっ?」
悠美を出迎えた彼女は、驚いた事に全裸に薄いロングの部屋着をまとっただけで、彼女の裸身が透けて見えたのだった。
ステージやDVD、写真などで観る、清純で愛らしい微笑からは想像も出来ない程豊かで成熟した形の良い乳房と、その頂上を彩る乳首、削いだ様に引き締まった腹部、そして下腹部を妖しく飾る、上品で清楚な彼女に似つかわしくないほど生え繁った恥毛の叢。
彼女の美しく妖艶な裸身が、悠美の心に焼き付いた。
想えば、彼女は既に二十代半ば、デビューが遅かっただけで、成熟した女性だったのだ。
「驚かないで。私は、独りの時は何時も、裸なの。どうぞ、入って」
彼女が先に立って、部屋の中央に設えられたソファーに悠美を案内する。
部屋着の下に透ける、彼女の美しく引き締まった尻肉も、悠美の心を魅了した。
「ねえ。隣に座って?良いでしょう?」
所在無く立ちすくんでいる悠美に、先にソファーに腰を降ろした彼女が手を差し伸べた。
「ああ、何から話しましょうか?あれも話そう、これも訊きたいって、貴方に逢う前から、色々考えてたんだけど、こうして逢ってみると、興奮して何も話せないみたい」
彼女は、隣に腰を降ろして身を竦めている悠美に向かって、悠美の両手を握り締めたまま、瞳を輝かせ、頬を紅潮させて、口早に語った。
それは、かつて、初めてオナニーの見せっこをしたクラスメートが、あの時「悠美ちゃんが好きだから、観せてあげる」と言った時の表情を彷彿とさせた。
「ああ、わ、私っ、ゆ、夢みたいですっ。あ、貴方と、ふ、二人っきりでっ、こ、こんな処にいるなんて」
「嬉しいわ。貴方がそんなに想ってくれるなんて。ねえ。約束して欲しい事があるの」
彼女が急に真顔になって、悠美に対してさらに向き直った。
悠美も姿勢を改めて彼女に正対した。
「二つだけよ。一つは、私と貴方が過ごしている時、嘘は付かない事。お互いに本心で真実だけを話す事。行動もよ。偽りの振る舞いはしない事」
「は、はい。そ、そうします。い、いえ、そうするって、ち、誓いますっ」
(続く)
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