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被虐の目覚め〜快楽責めに堕ちる人妻〜-9話



作家名:影山有佐義
文字数:約3290文字(第9話)
公開日:2020年7月24日
管理番号:k031


挿絵の官能小説画像


26

翌朝、朝食後にホテルのロビーで健一郎は前田社長と落ち合うことになっていた。

だが、健一郎は昨夜の出来事が余りにも鮮烈に脳裏に焼き付いて離れず、どんな顔をしていいのかわからなかった。

本音を言えば、そのまま何も挨拶せずに逃げ帰りたいところだったが、そういうわけにもいかず落ち着かなかった。


昨夜は自室に戻ってから3回も自慰行為にふけってしまった。
それでも、満の苦悶と喜悦が入り混じった顔を忘れることができなかった。


やがて前田社長と満が連れ立ってエレベーターから降りてきた。
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたかな」

ニヤリと嗤って前田社長は健一郎の顔を見ていった。
「はぁ、あまりよく……」

健一郎は慌てて目を伏せて、社長の顔を見ずに答えた。
「コーヒーでも飲んでいきませんか」

「いえ、結構です。いろいろありがとうございました。それでは私はこれで」


頭を下げて、その場を離れ、ホテルを出たところからは足早に歩いた。
別れ際、チラリと見た満は悲しげな表情でやはり目を伏せていた。


健一郎は上を見上げて大きく深呼吸した。
空が澄み渡り、太陽が照りつけ初夏を思わせる陽気だ。

昨夜の淫靡で歪んだ性の世界が、嘘のように思えてくる。
思わず輝く太陽を再び仰ぎ見た。

(眩しいなぁ。太陽を見るなんて久しぶりだ)


バランスを崩したのか身体がよろけ、視線を戻すとビルの陰に身体がはいっていた。
瞳孔が開いたためか、しばらくの間、視界が閉ざされた。

その時、昨夜のシーンがフラッシュバックした。


黒いガーターベルトとストッキングの間にある白い鼠径部。
そこに差し入れられた老調教師の手。

乳首に取り付けられた洗濯バサミ、股間から下がる鈴。
そして、満の切ない声……。


健一郎は突っ張り始めた股間に戸惑った。
昨夜、出し切ったはずの性欲がムクムクと頭をもたげている。

振り払うように信号のない横断歩道を駆け出した。

「あっ!」

思った瞬間に道路に投げ出されていた。
原付バイクと接触したことに、数秒たってから気がついた。

「大丈夫ですか!」
ヘルメットを脱いだ若者が健一郎を覗き込んだ。
みるみるうちに、野次馬に囲まれ、やがて救急車がやってきた。


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27

健一郎をはねたバイクの男から知らせがはいったのは、満とラウンジでコーヒーを飲んでいるときだった。

「そうか。うん、それでケガはさせずに救急搬送させたか。で、搬送先は?」

スマホを、肩と腕で器用に片耳に当てたまま譲吉はメモをとった。
「よしわかった。今からすぐ行く」


通話を終えた譲吉に満が心配そうに尋ねた。
「健一郎さん、大丈夫だったのですか」

「ああ、予定通りバイクでひっかけた。多少の擦り傷程度だ」
「咲奈さんを随分お気に入りなのね。こんな手の込んだことまでして」

「そういうお前も、随分と物憂げな表情で黙り込んでいたじゃないか。健一郎君が気に入ったようだね」

「そうね。ああいう知的な人、好きかも」
「私より小利口なのは確かだな。まぁ、よろしくやってくれ」


譲吉から連絡を受けた咲奈が、病院に駆けつけると既に病室には譲吉と健一郎が話しているところだった。
「私が、満とホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいたら、外がえらい騒ぎになっていてね」

譲吉の説明ではホテルの近くで起きた接触事故を見に行くと、健一郎が被害者だったので、搬送先を確認して咲奈にいち早く連絡をしたとのことだった。


「いや、全然たいしたことないのだけど社長さんの好意で……」
一応のための検査入院なのに、一番いい部屋にしてもらったとのことだった。

「いやいや、私が招いたばっかりに、こんな事故にあわせてしまって申し訳ない」
最上階の角部屋は病院とは思えぬ重厚なつくりだった。


咲奈は健一郎の入院が譲吉の企みではないかと、心の中に暗い気持ちがのしかかっていた。

冷え切った夫婦仲といえども、長年一緒に暮らしてきた夫をケガさせてしまったのは、自分のせいではないかと気に病んだ。


「コロナ自粛が解除されたのに、今度は病院で過ごさせて申し訳ないね。パソコンはすぐに設置させるので」

「それは、恐縮です。私はパソコンさえあれば何日でも過ごせるので助かります」
むしろ喜んでいる夫を見て、咲奈も少し救われる気がした。


夫に代わり会社に連絡をいれた咲奈は、健一郎に連絡事項を伝えた。
会社からの伝達は一週間の有給休暇の許可と引き続きテレワークでの勤務だった。


「何だか引き続きホテルに宿泊する気分だな」
眼下に広がる景色は東京を一望でき、走る車は、まるでミニチュアのようだった。

咲奈は、着替えや夫の持ってきてほしい物などを聞き、明日の朝には届けると伝え病院をあとにした。


夫の病室を出たところで譲吉が通路のソファに座っているのに気づいた。
「健一郎君のケガは、たいしたことがないようだね」

「――はい。もしかして、夫のケガは……」
「そう、私が仕組んだことだ」

「どうして」
咲奈は譲吉を真っすぐ見つめて言った。


「そう怖い顔するな。でも、その顔も好きだぞ、咲奈」
「ごまかさないでください!」

「咲奈、明日から一週間、泊りがけの研修を受けてもらう」
「無理です」

「健一郎君はしばらく、病院にいてもらう。もう手続きはとった」
「手続き?」

「あの病院は私が懇意にしている病院なのだ。金次第でどうにでもなるのさ」


「もしかして私を研修に行かせる為に夫を……」
「私の秘書になるための特別な研修だからな」

咲奈は譲吉が想像以上に恐ろしい人間に思えてきた。
「一週間の研修って何ですか!絶対にイヤです」


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「咲奈がどうしても行かない、ということなら健一郎君の容態が悪化する可能性だってあるぞ」
「悪化も何も夫は健康そのものじゃないですか」

「患者の急変は日常茶飯事ではないかね」
完全な脅迫だと気づいた咲奈は、唇をわなわなと震わせた。


脅しの効果を咲奈の表情から読み取った譲吉は、ポケットを探った。
譲吉が手にしたのは、黒い色をした括れのあるプラグだった。


「差しあたって、このプラグを今日から尻の穴に入れて過ごしなさい」
「これは……」

「アナルプラグだ。君は明日からアナル性交ができるように研修を受けてもらう」
「む、無理です!」

「ダメだ。今更後戻りはできまい。それに、大事な旦那様はこちらで預かっているのを忘れるな」


プラグを手渡され、青ざめる咲奈の耳元で譲吉は言った。
「プラグを排泄以外は常に入れて過ごしなさい、わかったな」

28

退屈な午後をうつらうつらと健一郎は過ごしていた。

昨晩の刺激的な光景を見て、よく眠れずに過ごした健一郎にとって、この入院は心おきなく惰眠をむさぼれて、むしろラッキーな出来事だと思えた。

夕食を終えても昼寝を多くとったせいで、目は冴えわたっていた。
パソコンが届くのは明日以降となりそうだ。

トントン

「はい」
返事はしたものの思い当たる人間などいなかった。
ましてや面会時間は、とうに過ぎているはずだ。

ドアが薄く開けられて伏し目がちに入ってきたのは、満だった。
長い黒髪を自然にながし、何かおどおどとしたような感じで部屋に入ってきた。

「満さんじゃないですか!」
健一郎は憧れの人に出会えた喜びを素直にあらわした。

「シッ、大きな声をだしてはいけません」
満は首をすくめて人差し指を口に当て、それからいたずらっぽく微笑んだ。

暗いイメージだった満が笑みをもらすと、それだけで気持ちが上がった。


「こんな時間によく入れましたね」
「ふふふっ、この病院は社長の譲吉が懇意にさせていただいているので」

「それで自由に入れるのですか」

「自由というわけではないけど。譲吉からのお達しで、参りました」
そう言って、おどけて敬礼をした。


ゆったりとしたワンピースを着た満は、どこにでもいそうな女性にしか見えなかった。
「まだパソコンが届いてない健一郎さんは、たぶん暇だろうから話し相手にでも、なってこい、ですって」

「それは大正解ですよ。僕、暇で暇で朝までどうしようかと思っていたのですよ」
「朝まで……私と過ごされるおつもりですか」

いたずらっぽく笑った満に健一郎はドキリとしてしまう。
「い、いや、そういう意味ではなく」

「そういう意味って、どういう意味かしら」
健一郎も満も声を抑えながら笑った。




(続く)





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