被虐の目覚め〜快楽責めに堕ちる人妻〜-7話
作家名:影山有佐義
文字数:約4970文字(第7話)
公開日:2020年7月12日
管理番号:k031
19
東京の緊急事態宣言が解除されてから二週間が過ぎた。
ジリジリと照り付ける夏日が続くかと思うと、次の日は湿った空気に覆われた雨日になる。
日中の気温は25度を軽く超え、そろそろ雨季に入ろうかという気配が漂い始めていた。
咲奈は夫の健一郎と連れ立って、銀座に向かっていた。
譲吉に夫婦揃ってディナーの招待をうけたのだった。
あの日、譲吉はソファで逝き果てた咲奈をベッドに運び抱き寄せた。
咲奈は譲吉の手管にすっかり嵌り、自ら腰を振る淫らな姿を晒してしまったことを恥じていた。
優しく抱きしめられても、決して心を開く気にはならず、嫌悪の気持ちは拭い去れなかった。
「咲奈、私の秘書にしてやる。私に付いて仕事をしなさい」
咲奈は譲吉に欲情を露わにした弱みから、直ぐに否定することができずにいた。
「給与は、大幅アップだ。時には泊りがけの出張もあるからな」
ニヤリと嗤った顔に咲奈はドキリとしてしまう。
一晩中、責めたてられる姿を想像して、慌てて、その思いを振り払った。
「泊りがけなんて絶対に無理です」
「どうしてだ」
「私、結婚しているのですよ。夫の世話がありますから」
「もう、愛してないのだろ。別れればいい」
アダルトグッズを購入しようとした咲奈が、夫とセックスレスになっていることを知っている譲吉は、いとも簡単なことのように言った。
「そんな簡単に別れられません」
「愛情もないのにか」
「肉体的なものは薄くなっているかもしれませんけど……」
「では、向こうから離婚を切り出したらどうだ?」
思いもしない質問に咲奈は戸惑った。
(もし、健一郎から離婚を切り出されたら、一体私はどう答えるだろう)
咲奈は、その思いを逡巡しているうちに、譲吉は一人合点していた。
「そうだ。その線でいこう」
そう頷くと、改めて咲奈を抱き寄せたのだった。
20
咲奈が社長秘書になったお祝いに、夫婦そろっての招待。
そんな陳腐な誘いに夫がのるとは思えなかった。
そもそも咲奈の会社は、譲吉の個人経営のようなもので、そんな小さな会社で、社長秘書など噴飯ものだ。
咲奈の会社に興味がない夫も違和感を覚え、もの問うに違いない。
いずれにせよ、夫婦連れ立っての会食に、夫が行くとは思えなかった。
だが間違いなく断ると思っていた夫は、意に図らず承諾した。
「コロナで、こもりっきりだったからな。丁度いい気晴らしといったところだ」
愛情が無くなった夫とはいえ、譲吉が何らかの企みを企てている会食に誘うのは気が重かった。
「あなた本当に行くの?」
「何だ、誘っておいて、それはないだろ」
「……」
それ以上何か言うことは不自然に思えて咲奈は黙り込んだ。
銀座中央から少し離れた一角に、その店はあった。
一般客を入れない特別な店らしく、入口は狭かった。
呼び鈴を鳴らすと中からウエイトレスがドアを開けた。
「あの、前田社長にご招待頂いた大原でございます」
「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
中に導かれると小さな個室の中、大きめのテーブルに譲吉と見知らぬ女性が並んで着席していた。
譲吉とその女性が立ち上がって挨拶した。
「社長の前田です。初めまして。この女性は私の友人です」
「立花満(みつ)と申します。本日は、このようなおめでたい席に同席させていただき光栄でございます」
立花満は、咲奈の目を見てハッキリと挨拶した。
そして健一郎には、伏し目がちに頭を下げた。
咲奈は満とは初対面だった。
譲吉が友人と紹介するなら、そう思うしかない。
一通りの挨拶がすむと、会食となった。
会員制の店のようで他の客の気配が全く感じられなかった。
「旦那様のお名前をお聞きしていませんでしたな」
「はい、健一郎と申します」
「この度は私のわがままで、奥様を秘書にさせていただきました。優秀な奥様で羨ましいかぎりですな」
「愚妻を秘書だなんて、もったいないことです」
「いやいや、そのようなことおっしゃりますな」
咲奈は、いつもと違う夫に違和感を覚えた。
やけに饒舌なのだ。
このような席では、大体寡黙ぎみな夫が、譲吉の問いかけにスラスラと答えている。
隣の夫を横から伺うと、ほとんどしゃべらない満をチラチラ見ている。
黒髪のロングヘアを後ろで纏めた、純和風美人といったところの満に、夫は心を惹かれているようだ。
咲奈は出会ったころの健一郎を思い出していた。
多分、こんな風に自分も見られていたはずだった。
咲奈の言動、行動すべてが、健一郎を夢中にさせていた。
十年もたたないうちに、どうして夫婦はこうも変化してしまったのか。
初めて会った女性に興味をしめしている夫に腹立たしさを感じ、同時に満に嫉妬した。
会食は譲吉と夫の会話が、ほとんどをしめて、女性陣は適当に言葉を返す構図となった。
それでも譲吉も夫も、その不自然な会食を全く意に返す様子はなく、よく食べよく飲んだ。
「いやー、素敵な旦那さんですね。では、会食はこれでお開き。ホテルは私の方で手配致しましたのでごゆっくり。私たちも隣の部屋におりますので、何かあったら気軽にお声がけしてください」
ホテルを予め手配していることは事前に聞いていたが、譲吉が満と同室で宿泊することは聞いてなかった。
あけすけな態度は譲吉らしいが、咲奈は健一郎が落胆の色を表しているのを見逃さなかった。
二組の男女が高級ホテルに着いたところで、咲奈は譲吉との打ち合わせ通りのセリフを言った。
「貴方、ごめんなさい。私、何だか気持ちが悪くなってしまったの」
「何だよ。こんな時に」
「悪いけど、ホテルは一人で泊まって。私、タクシーで帰ります。本当に、ごめんなさい」
「おいおい、そりゃないだろ」
夫の愚痴を振り払い咲奈は、通りがかりのタクシーを拾ってサッサと帰ってしまった。
「しょうがねぇーな、アイツ」
「顔色はそんなに悪くなかったので、悪酔いでもしましたかね。まぁまぁ、たいしたことはなさそうですから、旦那さんはホテルで宿泊していきましょう」
譲吉が健一郎を促してホテルに入った。
咲奈はタクシーの中で声を出さずに涙を流していた。
どうして夫は私に付き添ってくれなかったのだろう。
一緒に帰ると言ってくれたなら譲吉の秘書など断ったのに……。
なぜ、私を見てくれないの。
流れる東京のネオンは、その色彩とは逆に、咲奈の心をモノトーンに落としていった。
21
夜景が素晴らしいホテルの部屋は、一人で過ごすには、さすがに味気なかった。
健一郎は所在なくテレビを見ながら、冷蔵庫の中にあったウィスキーを水割りにして飲んでいた。
突然、部屋の電話が鳴った。
受話器を取るとホテルの交換手だった。
「8052室からのお電話です」
8051室がこの部屋なので、隣の部屋つまり前田社長からの電話ということになる。
交換手に承諾の返事をすると社長の声に電話が変わった。
「ああ、大原さんの旦那さん、夜分にごめんなさいね。まだ、ご就寝ではないですね」
「はい、素敵な夜景を楽しんでおります」
「それは何より。でも、もっと楽しい景色をご覧になりませんか」
健一郎は当然、前田社長のほうがいい部屋なのだろうから、景色はこちらより見晴らしが良いのだろうと思った。
何より前田社長の友達と称していた立花満に会えるのが楽しみだった。
前田社長が同室に宿泊すると聞いたときは、さすがにビックリしたが、愛人がいても不思議ではないと思いなおした。
会食の時は、妻もいたことで会話がしづらかったが、和服の似合いそうな清楚な雰囲気の満と、夜景を見ながら心置きなく会話が楽しめそうだ。
「お二人のお邪魔ではないのですか」
「いえいえ、楽しみは分かち合うのが私のモットーですから」
「それでは遠慮なく伺わせていただきます」
スリッパをつっかけた浴衣姿で、健一郎は8052室の前に立った。
ノックすると、直ぐに開錠された。
「ささっ、中に入って」
22
玄関から通路の正面にガラス張りの夜景が目に入った。
「これは素晴らしい景色だ」
思わず健一郎がつぶやくと社長の前田が嗤った。
「いえいえ、良い景色はこちらの方で」
通路の隔たりが切れた場所から、大きなリビングになっている。
先ほど正面に見たガラス張りが左手になった。
「こ、これは……」
薄暗いリビングの中央に白い満の身体がある。
「どういうことですか……」
天井にある滑車から張られたロープに両手首を吊られた満は、かろうじて立てる高さに調整されていた。
「この部屋は特別なしつらえになっていましてな。私が時々、満の調教に使わせてもらっているのです」
健一郎は、目を見開き満の身体を凝視した。
タオルで縛られた手首にロープが結ばれ、長く細い腕が痛々しく引っ張られている。
「あああっ……」
会食の時は後ろで纏められていた髪が解かれ、乳首にカールした髪がかかる。
微かに揺れた身体に、やや小ぶりながら、しっかりとしたお椀型の乳房が揺れた。
締まった足首から延びる長い足は黒いストッキングを履いていて、腰上のガーターベルトに引っ張られている。
ショーツはつけておらず、細い身体には不釣り合いな大きなヒップが黒いガーターベルトの隙間からうかがえる。
健一郎は血液が下半身に逆流していった。
満の足元に、作務衣を着た坊主頭の老人がいるのに気がついた。
「あのご老人が調教師で、名は玄重。毎度、いろいろな責め手で楽しませてくれる」
「さあ、ここに座って満の堕ちていく姿を楽しんでください」
呆然と立つ健一郎に、満から少し離れた所にある二つのボックスシートを指さした。
健一郎は腕を引かれ譲吉と並んで腰をおろすと、不自然に突っ張った股間を隠すように浴衣を合わせた。
23
作務衣をきた玄重が満の乳房に両手の掌を当てて乳首を転がし始めた。
「ああああああああっ!」
満の声は大きく既に官能の頂点に達してしまったかのようだった。
「疼いてしかたないのであろう、この淫乱めが」
口汚く罵られる満が苦悶の表情をうかべる。
「うっ…ううっ」
「もう感じているじゃないか」
小さく顔を横に小さく振り、その恥じらう顔に黒髪がかかった。
転がしていた乳首を玄重が摘み上げ、指先でポリポリと掻くような動きを始めた。
「あっ、あああっ、ひっひいいっ」
「ほれ、ゆうてみぃ。チ〇ポが欲しいと」
「ああ、イヤ!」
泣きそうな顔を横にそむけながら小刻みに痙攣をおこし、ガクガクと大きく身体をひきつけている。
玄重が近くにある小机から何かを手にした。
「乳首に装飾をしてやるわい」
木製の洗濯バサミから糸が5センチほど下がり、先端に鈴が取り付けられている。
「ほら素敵じゃろうが」
チリチリと鈴を鳴らしながら、口を開いた洗濯バサミを乳首に近づける。
「ああ、イヤ!」
身体をよじる満の抵抗を楽しむかのように、玄重が洗濯バサミを振って鈴を鳴らす。
「うっうっ、いやあああああ!」
乳首をとらえた洗濯バサミが無常にとめられた。
両方の乳首に突起する卑猥なアクセサリーをつけられた満は、眉を寄せて顔を震わせている。
「その恥じらいが淫猥に歪む顔に変わるのじゃ」
乳首に喰いついた洗濯バサミから鈴が下がっている。
型崩れしない乳房を玄重が搾るように揉みしだいた。
「ほれほれ、乳首がピンピンに立ってきたわい」
「こんなイヤらしいもの外してください!」
「よく似合っておるわ」
搾り出した乳房を上下に振ると涼しげな鈴の音が鳴り響いた。
だが、その上品な鈴の音に満の押し殺した悦楽の声が共鳴しだした。
「あああ、いやああああ!」
「鈴の音とおなごの啼き声の共演じゃ」
チリチリチリ
満の身体をクルクルと左右に回すと、遠心力で投げ出された鈴に乳首は引っ張られ、逆回転するたびに身体に当たり跳ね上がる。
そのビクビクとした刺激に反り返った満の身体が美しい曲線を描いた。
「はああああああっ! あうぅっ……」
黒いストッキングの表面を伝って、玄重のしわがれて節くれだった指が股間に向かって遡上していく。
老人にしては、やけに赤い唇を玄重がペロリと舐めた。
「はっ! はああっ!」
昂ぶった身体から溜めた息を吐きながら、耐え忍ぶ満の顔を見ながら玄重がバギナに指を入れている。
黒いストッキングとガーターベルトの隙間にある、僅かな白い肌に差し込まれた老人の手がやけに猥雑に見える。
「お前の好きな処はここじゃろうが。ほれ、すごいお湿りじゃ」
「はううっ!」
「ほれ言うのじゃ。チ〇ポを下さいと」
「ああああっ! イヤよ、イヤ」
「今夜は随分と強情をはるの。今更、お客が一人増えたくらいで恥じらうほどでもあるまい」
(続く)
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