女豹の如く-2話
作家名:ステファニー
文字数:約3330文字(第2話)
公開日:2020年7月6日
管理番号:k039
貧困家庭で育った少女ひろみは高校卒業後、貧乏から脱するために上京し、性産業へ足を踏み入れる。性の悦びを覚えることを通して、一人の女性として成長していくひろみの姿を描く。
「まあ、なんて可愛いのかしら。こんなに可愛いお胸ちゃんは見たことないわ」
山下はそれまで見せたことのない笑顔をひろみに向けた。
春奈も巨乳を震わせながらカワイイと連呼した。
ひろみは男の前で胸を見せるのはこれが初めてだった。
恐る恐る野見を窺ったが、サングラスでその表情はわからなかった。
「可愛いだけじゃなくてボリュームも結構あるわね。カップはいくつかしら?」
ひろみは少し春奈の小麦色をしたお椀に目をやり、うつむき加減に答えた。
「…Dです」
「そう。まだまだ成長すると思うわ」
そう言って山下はウィンクした。
ひろみはもう一度、野見を見た。
相変わらず、心のうちは読めなかった。
「下もいいかしら」
山下は少し首を斜めに傾げた。
ひろみはひと息つき、ショーツに手をかけた。
一旦、恥骨まで下げ、春奈の黒々とした陰毛をチラリと見た。
今度は目を閉じて、ひろみは白いパンティーを脚から抜いた。
紅潮しているのがわかるほどひろみは頭が蒸気しているのを感じた。
反面、腰部はスースーした。
まだ初経から二年を経過していないため、フワフワとしている陰毛が恥ずかしかったが、隠そうとは思わなかった。
「可愛いわ。どうぞこちらに来て」
先程まで春奈がいたカメラの前に立つよう、山下はひろみを促した。
野見は撮影を始めるためにカメラをいじっていた。
ひろみがカメラの照明の真下に立つと、野見はストロボを焚いた。
言葉にできない高揚感をひろみは感じた。
「両手で両胸の脇から抱えるように持ち上げてみて」
山下から様々なポーズを求められた。
とても恥ずかしいはずなのに、ひろみはそれに応えることが快感だった。
さらには撮影が進むとともに、股間がムズムズと疼くようになった。
照明用ライトがひろみの白肌をじりじりと焦がした。
みるみるうちにひろみは全身が深紅に染まった。
「いいわ、とっても。それじゃ今度は座ってみて」
言われるがままに、ひろみは腰を下ろした。
「そう。いいわよ。ちょっとずつで構わないわ。脚を拡げてみてくれるかしら」
体育座りをしていたひろみは小さく頷いた。
目線を上げず、無言のままくっつけていた股をゆっくりと離した。
また股間がスっとした。
ひろみはドンドン脚を拡げたが、山下と野見は何も言わない。
春奈はいわゆるM字開脚をしていた。
きっとそこまでやる必要があるのだろうと解釈し、ひろみは思い切り開帳した。
脚を拡げ切ったひろみを見て、山下と野見は顔を見合わせた。
「あなた、処女なの?」
ひろみはギクッとして肩を一瞬震わせ、誰とも目を合わせずに頷いた。
山下はそう、と呟いた。
「買うわ、あなたの初体験」
「えっ?」
見上げると、山下は怪しげに微笑んでいた。
「だから買うの。あなたを」
「君の初めてセックスするところに我々は金を出すと言っているんだ」
ひろみはにわかには意味を理解することができなかった。
野見の補足を聞いても現実に起こることとして捉えられなかった。
「出演料として100出すわ。あとは歩合に応じて払います」
100というのは当然、100円を意味しているのではないとひろみはわかっていた。
その後に続く桁も知っていた。
それでも自分の身に降り掛かっている話のようには思えないままだった。
「明日、早速撮りたいわ。その時、前金は渡します」
明日、自分は大きな節目を迎えるようだ。
さらにはいきなり大金を手にもするらしい。
ひろみは目まぐるしく進展していく事態を生まれたままの姿で見届けていた。
「そういうことでいいかね、お嬢ちゃん?」
野見が畳み掛けるように問いかけた。
しみったれたボロアパート。
低賃金で働く母親。
空腹に耐えたあの日々。
寂れた浜松の街並み。
色褪せたTシャツ。
すべてにうんざりだ。
決別するんだ、こんな生活とは。
「はい、やります。明日、お願いします」
ひろみは股を拡げたまま承諾した。
翌日、ひろみは西武新宿駅から程近いラブホテルに来るよう、山下から言われた。
そこはひろみが上京後に滞在していた漫画喫茶からすぐそばだった。
昼夜を問わず爆音を出し続けるこの街にはまだ慣れないが、ビルを眺め続け、なんとか目的地へたどり着いた。
昨晩は眠れなかった。
身に起きていることを受け止められるほどまだひろみは成熟していないため、混乱から興奮してしまったのだ。
仮宿としている漫画喫茶の狭い空間で、ひろみは寝転がりながら何度も寝ようと試みたものの、山下と野見のやりとりが頭から離れず、入眠に至れなかった。
仕方なく漫画本を拡げてみたが、話の内容に惹き込まれることもなかった。
ほんの少しうとうとしただけで目は醒めてしまい、以降眠気も全く感じなかった。
山下が指摘してきたホテルは、外観こそビジネスホテルのような佇まいだったが、一歩足を踏み入れると、リゾートホテルに様変わりした。
人影はなく、それにも関わらず、賑やかな照明と飾り付けが異様に見えた。
ひろみは山下から指示のあった通り、ロビー脇のエレベーターから3階へと上がった。
303号室が指定された部屋だ。
ひろみは左右を小さく見回してから部屋のチャイムを鳴らした。
「どうぞ」
中から山下の声が聞こえてきた。
ひろみはゆっくりとノブを回し、ドアを押した。
半開きにしたところで軽くなった。
山下が扉の端から顔を覗かせた。
「おはよう、凜音さん。どうぞ中へいらして」
自分の名前が凜音に変わったことをひろみは思い出した。
昨日の帰りにひろみは本名を野見と山下に伝えたところ、凜音という芸名をつけられたのだ。
「靴を脱いで中へお入りになって」
ひろみは履き古した白い運動靴を脱ぎ、玄関壁に寄せた。
他に履物は三つ並んでいた。
ひとつはくたびれた黒いローファーで、これは山下のものと思われた。
残る二つのうち一方は見覚えがあった。
野見が履いていた有名スポーツメーカーのスリッポンだ。
もう片方は、いかにも若者が好みそうなデザイン性の高いスニーカーだ。
始まる。
ひろみは意を決して奥に足を踏み入れた。
「来たな」
撮影用のライトを手入れしていた野見はひろみに一瞥をくれた。
ひろみは山下に挨拶はおはようございますでいいのよ、と言われたため、小声でそう口にした。
あまり宿泊施設を利用したことのないひろみだが、ここが普通のホテルではないと一目でわかった。
部屋は薄暗い上に照明の色は紅いためだ。
さして広くもない部屋なのにベッドだけはデカデカとしているのも拍車をかけた。
テレビドラマでしか見たことのない所に来たんだ、そうひろみは思った。
「凜音さん、今日のあなたのお相手さんを紹介するわね」
脚立に乗って野見はライトの傘を調整していた。
ちょうど位置を後ろにずらした時、ソファに誰かが座っているのが見えた。
栗色のウェーブがかった髪が揺れ、ひろみの方を振り返った。
二十代前半ぐらいだろうか、瞳の大きな青年とひろみは目が合った。
「ヒカル君よ」
山下が立ち上がったヒカルの隣に立ち、ひろみに紹介した。
ヒカルはどうも、と一言口にした。
ひろみが想像していたよりもヒカルはずっと美しかった。
長身ではないが細身で白肌だ。
まるでタレントのようなルックスをしている。
目が合うとひろみは頬が熱くなるのを感じた。
この人が私の初めての…。
「早速だけど撮影の準備をしてもらってもいいかしら?」
山下は脱ぐ身振りをした。
いよいよだ。
ひろみは山下から衣服を入れておくためのカゴを受け取り、ベッドサイドに浅く腰かけた。
徐に白いハイソックスをまず脱いだ。
ふくらはぎ部分にウサギのキャラクターが刺繍されており、学校用に購入したものだった。
すでに数十回は洗濯しており、ところどころに茶色い年季が刻まれている。
浜松から一張羅で上京したひろみは、昨日と同じいでたちだ。
それでも下着だけは新調した。
それで持参した金はすべて使い切った。
もう戻るための電車賃すらなくなった。
真新しいベビーピンクのランジェリーをひろみは披露した。
白と銀の刺繍が胸元を彩っていた。
手を後ろに回し、ホックを外そうとしたところ、山下から待ったがかかった。
「待って。今の心境から撮りたいから」
野見がカメラを回し始めた。
それと同時にやはり下着姿となっていたヒカルがひろみに問いかけてきた。
「凜音さん、今はどんな気持ち?」
ヒカルは真っ直ぐにひろみを見つめていた。
ひろみは鼓動が高鳴るのを感じた。
(続く)
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