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アナルファンタジー(3)運命-第9話



作家名:優香
文字数:約3900文字(第9話)
公開日:2020年8月11日
管理番号:k038


挿絵の官能小説画像

「ああ、気持ち良いわ」
「ううん、か、感じちゃうっ」

ふと目覚めると、私と悠美の間に横たわっている彼が伸ばした両手で私と悠美の女性器を掌に包み込んでゆっくりと愛撫していた。

指をクリトリスや女陰の襞に遣う訳でもなく、ただ女性器全体を掌で覆って、柔らかく優しく蠢かしていたのだ。
それは私の女性器だけでなく、肉体だけでなく、心も全存在を包み込んで愛撫していた。

私は幼い頃、眠れなくてぐずっている時、母親が添い寝して髪の毛と背中を、私が眠りに落ちるまで何時までも撫で擦っていてくれた、その時の安らぎを想い出していた。

私の部屋のリヴィングと窓の方角が同じで、窓から挿し込む夕陽が部屋全体と私達三人の裸身をシャクナゲ色に染めていた。
彼の男根に触れたくて、股間に手を伸ばすと、そこには悠美の手があった。

先刻彼に浣腸を施されながら彼の勃起を口で愛撫した時のように、私が彼の男根を愛撫すれば、悠美が肉包を、悠美が男根を求めれば私が肉包を愛撫した。

三人とも心地良い快感に浸った。
しかし、それは相手の性欲を燃え上がらせようとする愛撫ではなかった。

ただ愛おしい相手の最も大切な部分に触れていたい、それだけの想いで、永い時間そうしていたのだった。
「日が暮れて来たね?私は明日の昼、東京に帰らなきゃいけないので、このまま貴方達と愛し合いたいのだが」

彼が夜の帳に包まれ掛けている窓の方を見遣って、手の動きを停めた。
「勿論、私も、そ、そうしたい」

私が裸身を起こすと、悠美も半身になって裸身を起こした。
「ホテルのコテージに戻って精算して、荷物を取って来ようよ」

悠美がホテルの名前を告げると、彼も起き上がった。
「あのホテルの最上階のレストランで美味しい魚が食べられるんだ。行こうか?」

「そう言えば、お腹が空いてたわ」
「うん。昔『お腹と背中がくっついた』って、歌があったわね?そんな感じよ」

私達はシャワーを浴びると、洋服に着替えて、出掛けた。
彼と出遭う前に歩いた道は、日が暮れたせいでもないだろうが、何処か違う道に思えた。

彼と出遭う前は、ただこの淫猥なセックス三昧の旅行を満喫出来た爽快感で一杯だった。
今は、愛し合う対象が二人になった、その二人と歩いている。心身共に満ち足りている。

「お二人さん。お気持ちはあり難いけど、素敵な二人と腕を組んで歩きたいんだけどね」
有名な彼が、避暑地とは言え、女性二人と寄り添って歩いているのを、誰が見付けてマスコミの話題になるかも知れない。

そう感じて、私も悠美も彼から少し離れて後を着いて歩いていたのだ。
そんな私達の手を取って、彼が私と悠美を両脇にして腕を組んだ。

「い、良いんですか?」

「勿論、良いさ。写真雑誌に撮られて、インタヴューされたら、新しい恋人が二人も一度に出来たって、自慢してやるさ。それより、貴方達の方が、迷惑かね?」

「私は良いの。親に反対されたって。もう関係ない生活してるし。それに愛しちゃってるんだもん。ねえ、優香さん」

悠美が彼の向こう側から、何時もの少女のような清楚で純真な笑顔を私に向けた。

「私も平気。うちの親は、私が会社を辞めて、結婚もしないで、ぶらぶらしてるって想って愛想をつかしてるみたいだから。いやらしい小説書いてるのは、勿論内緒だし、娘があんな小説書いてるって知ったら、世間に顔向け出来ないって、夜逃げするかも」

私も心の底から込み上げて来る嬉しさを隠し切れないまま、彼の腕にしがみ付いた。

ホテルまで一〇分程の道程で人通りは多かったが、ただ中年の紳士が若い女を両脇に抱えて歩いているのに羨望の眼を向けるだけで、街灯の明かりはあったが、彼の正体に気付いた者はいなかったようだ。

ホテルで精算を済ませ、最上階の高級そうな割烹の暖簾を潜って窓際の席に落ち着く。

眼下の湾曲した砂浜のあちらこちらで、数人の若者のグループや家族連れが花火を楽しみ、それから離れた暗がりで、恋人達が身体を寄せて愛を語り合っていた。


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彼らの中にも、私達同様、排泄を曝して官能を貪ったり、アナル セックスでエクスタシーを貪り合ったりするカップルがいるのだろうか?

視線を上げると、波一つない真っ暗な海が拡がり、遠い水平線に色とりどりの宝石を不規則に繋いだネックレスのように漁火が並び、さらに視線を上げると満天に煌く星々。

天の川銀河が白く天空を覆って輝いていた。

その海と空が融合した大自然の様が、深い官能の深淵に心身を沈め、激しいエクスタシーに襲われる瞬間、閉じた瞼の裏側に瞬間弾ける映像と同じように想えた。

彼にオーダーを任せたまま、美味しいワインが運ばれて来ると新鮮な魚料理に舌鼓を打ち、他愛もない会話を交わしながら、何時か心身共充たされていた。

そんな時、彼がワイングラスを手にして、真顔になった。

「性欲を覚えていない時に、冷静に聴いておいて欲しい事があってね。アナル セックスや浣腸、排泄、所謂スカトロと言うのだけれど、そんなテーマの小説や映像は世の中にごまんとあるのだけれど、私はあの類が嫌いでね」

彼は優しい微笑を湛えながらも、真剣な表情だった。

「小説を沢山読んだし、映像も沢山観た。だけど内容は、ほとんど貞淑な、上品な、あるいは真面目な女性を、騙して陥れ、緊縛したり、監禁したり、恐喝したりして、女性を心身とも拘束した状態に置いた上で、多数の男性の前で浣腸し、排泄させ、肛門を指やバイヴ、男性器で甚振る内容ばかりだった」

彼が苦々しい表情で、ワインを空け、新たに注いだ。
「私は、何冊か読んだ事があります。すごく腹が立ちました。許せないと想って」

事実、興味を覚えて何冊か読んだが、憤りを覚えて途中で放り出した。
世の男性は、こんな内容で興奮するのだろうかと想うと、男性不信に陥ったりもした。

「私も、何冊か読んだわ。すぐ嫌になって止めたわ。だから優香さんの本の解説と粗筋を読んで、もしかしたらって想って読んで。その通りだったわ。だからファンになったの」

悠美が私と彼の貌を交互に見詰めて、口を尖らせた。

「その女性達、勿論小説は架空の話だからどうでも良いし、映像の場合、女優さんは演技をしてる訳だし、仮に本当に、浣腸される事や大勢の男性に排泄を観られる事に快感を覚え、バイヴや男性器で犯されてエクスタシーに襲われたとしても、それは生理的、物理的なものでしかなくて、心情的なものではない、と想うんだ。女性のそうした性癖はあって然るべきものだと、否定はしないがね。ただそれは男性優位の状況から、女性が強制されて生まれるものではなく、女性が自身の内部から目覚めるはずだ、というのが持論でね」

「私だって、さっきバイヴでおま○ことお尻の孔を愛撫されて、死ぬ程イッたわ。それは相手が貴方だったから、悦びが深かったの。ただ単にセックスしてイクのなら、一昨日も昨日も大勢の男を相手に、イキまくったけど、あれはそうよね?優香さん」

「そうね?愛情も何もなくて、ただおま○ことお尻の孔を刺激し続けられたら、イクわ」

「その小説や映像の内容は、それで女性達が被虐的な性癖に目覚めて、愛してもいない男達の奴隷のような状態になって、それでも彼らから受ける様々な凌辱を心から悦んで受け容れる、という結末がほとんどだよね?私は、それは絶対信じたくないし、あり得ないと想う。

その女性達を男達の呪縛から解き放ってやれば、彼女達は被虐的な性癖を失う事はなくても、そんなセックスの奴隷ではなくて、悠美さんや優香さんのように、本当に愛し合える相手とだけ、そんなセックスを求め合う事が出来るはずだと想ってるんだ」

「ああ、勿論、そうだと想います。私も奴隷のように凌辱される事を強制されている状態では仕方がないかも知れないけど、それを心から悦んでって言うのは信じないわ」

「私も、ましてそんな小説や映像を観て興奮する男性も信じないわ」
悠美も同意して、ワインを勢い良く?み乾した。

「少なくとも、私は貴方達を、そんな形で考えたり、扱ったりする事は絶対にないと約束するよ」
「ああ、勿論、信じてます」

「それは、さっき、貴方が私達を愛してくれた時に、解りましたもの」
「ありがとう。じゃあ、帰ろうか」


今度は荷物があるので、歩いて帰るのは無理だった。
タクシーで彼の別荘に戻る。

「そうだ。折角だから、泳ごうか?」
彼がリヴィングで勢い良く洋服を脱ぎ始めた。

「い、今からですか?ああ、でも、夜の海って泳いだ事ないわ。少し怖いもの」
悠美が戸惑いながらも、楽しそうに彼に背を向けて洋服を脱ぎ始めた。


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「私は子供の頃、何度も泳いだわ。気持ち良いのよ。すごく」
私も彼の視線から逃れる様に、急いで全裸になると、バッグから水着を出そうとした。

「裸で泳ぐんだよ。水着はいらない」
「ええっ?だ、誰かに見られちゃうわっ、は、恥ずかしいっ」

「私は、高校生の時、夜の海で泳いでいて、全裸になった事があるけど、誰にも観られなかったし」

「心配要らないよ。この別荘の裏木戸はすぐ狭い砂浜で、一〇メートル程で海だ。南側が断崖絶壁だし、北側の砂浜は二メートルのフェンスで仕切ってある。そこから南側の岬まで、三〇メートルほどの幅でブイを浮かせて五〇センチ程のフェンスで囲ってあるからね。誰も入って来れないし、見られる事もない」

「素敵。優香さん、行こうっ」
子供のように無邪気な笑顔の悠美が、全裸になった私の手を取って歩き始めた。

私と悠美の裸身の後を、同じく全裸になった彼が追い掛けて来た。
裏木戸を抜けると、彼の言った通り、狭い砂浜の向こうはすぐに波打ち際だった。

さっき、ホテルの最上階のレストランから窓越しに眺めた風景とほとんど同じ光景が視野に拡がった。



(続く)





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