人妻順子 虜の悦楽 本格調教篇-4話
作家名:邪道
文字数:約4650文字(第4話)
公開日:2020年5月19日
管理番号:k024
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<第一夜:人妻はさらなる調教に堕ちる>
「ごめんなさいね、誠さん。急な予約が入っちゃったの…。明日の準備が終わればすぐに帰れるわ。成太のお迎えだけお願いね」
パティシエとして勤務する洋菓子店をとうに退けている間嶋順子は、夫との通話で、偽りの言葉を吐いたことに良心が痛んだ。
(ああ、今日もまたあの男に捕まり、調教を受けるのね…)
順子は被虐の奴隷の心境で、スマホを手にしたまま項垂れた。
あの男とは、AV動画制作者にして、責め師を自認する夫の友人、松宮透だ。
SM好きな間男に握られた弱み。
それは6年前に撮影された自慰行為の動画だ。
それをネタに再びサディスティックな松宮の魔手に堕ちて早、ひと月が経過した。
その間、順子はこの本職の責め師に、あの手この手で苛まれた。
松宮の手法は、単に肉体的に苦痛を与えるのではない。
当初は記憶の底に眠る順子の萌芽的なマゾヒスティックな感性を徐々に呼覚まし、そして磨き上げる様に、策を弄し、手法を変え、じわじわと人妻を追い込んでくる。
順子がどうすれば、恐怖と悦楽双方を味わい、倫理と背徳の狭間でマゾとしての背徳感に浸れるか、まるで手に取る様に把握しているようだった。
彼が運営する会員制ウエブサイト『愛の間男』なるサイトでは、既に順子が責め・折檻に晒される動画がアップされ、相当な再生数を数えている。
すべてが素人であるはずのこのサイトにあって順子はなかなかの『人気女優』のようだ。
その全ての『出演作』で、順子は肉体的拘束を受け、自慰を迫られ、いずれも初心と形容するのは相応しからぬ、あられもない姿を晒し、昇天してしまっている。
(…オナニーシーンを公開されるなんて…)
心の中とはいえ、口にしたことの無いようなセンテンスを思い浮かべる自分に、改めて気恥しくなりつつも、動画に晒された自分の痴態に、言い知れないエロティズムを感じる順子だ。
何が彼女を責め苦の蟻地獄に引き入れたのか―――。
それは、男らの魔手にその身を委ねざるを得ない絶望感や、逃亡は無論、抗うこともできないシチュエーション。
そこで、意にそわぬ悦楽を一方的に与えられる恥辱感により、逆に心身を解放されるかのような、逆説的な無上の悦びの虜に陥ったからに他ならない。
松宮の言葉にはマゾの血を湧き立たす力がある。
淫虐の言霊とでも形容すべきか。
『嬲る』、『いたぶる』、『責め苛む』…そんな言葉が松宮の口から洩れるたび、昇天した後であろうと、順子は奇妙な胸の高鳴りを覚える。
それ以上にここ数日、順子の巨乳を膨張させ乳首を屹立させるほど刺激を与えるキーワードが『拉致』という言葉だ。
<第二夜:人妻は誘拐願望に濡れる>
数日前にローターを差し込まれたまま、駿河問いの要領で吊り責めに遭った順子は、解放された時、責め師が言い残した『予告』を思い返す。
『はははは、なーに、恨みがましい表情をしているんだい、順子ちゃん』
一応は『貞操の仇』を睨んでみるものの、既に性癖を知り尽くした様子の松宮は、人妻の心の襞を心地好くなぞる。
『いやいや、君の方だって旦那に嘘ついてまで、毎度毎度僕のスタッフの誘いに乗って、おとなしく調教に出かけてくるじゃあないの? 退屈な日々の中、僕に捕まり調教を受ける時間が、内心待ち遠しいんじゃあないのかね?』
図星だった。
『とはいえ、型どおりに虐め苛まれるだけじゃあ、刺激が足りなくなってきた頃合いだろ?』
さらに順子のマゾ心理の真相を突く一言の後、松宮は言った。
『順子ちゃん、誘拐プレーをしてみないかい? …いやいやもっと刺激的に拉致プレーといった方が正しいかな。『拉致られる』なんて言葉もあるけど、女にとって男の腕力でいずこかへ連行される、そんなシチュは君みたいな女にとって密かな悦びだろう?』
常に強引に見える一方で、女の願望を察し、それを実現に移す。
そんな点も松宮の魔手に嵌った理由だが、なんにせよ順子は『拉致』という言葉に、異常な性的興奮を覚える今日この頃だ―――。
思い返すと、順子にはかねてから『さらわれ願望』――と呼ぶのが適切か否かは不明だが――があったのではと自分で思う。
幼少期に絵本で読んだ悪い魔法使いに捕まったお姫様が緊縛された挿絵に、言い知れない動揺を覚えたこと。
ヤンキー連中の手に堕ちたヒロインがイケメン青年に救出してもらう少女漫画のワンシーン。
売れっ子アイドル演じる女刑事が、犯人グループに襲われ監禁される場面。
いずれも順子は秘めたる熱い感情を抱き、その虜となる女を自分に置き換え、妄想に耽ったものだ。
が、現実の世界で順子がそんなシチュに陥ることがある筈もなかった。
現実的には夫以外の異性とはほとんど交流を持たず、初恋の男と家庭を持った田舎育ちの純朴な主婦にとって、松宮が切り出した『拉致プレー』は無縁のものだった。
少なくとも今日その時までは…。
心の奥底に秘めた、待望の瞬間は突然やってきた。
松宮の指定した場所は、最初に彼の魔手に堕ちた際、待ち合わせたレトロムードの小洒落た店―――。
(またこの店に呼び出すなんて…松宮はいったい何を考えているの?)
スタンドバーで、焙煎珈琲のカップに、薄ピンク色の唇をつけたその瞬間、背後を取り囲まれる気配に肉体が硬直した。
「間嶋…順子さん、だね?」
ググっと肩をわしづかむ屈強な男は、日頃、彼女をいたぶる松宮のアシスタントではなかった。
これまで平穏に生きてきた社会の者とは、明らかに発する空気が異なる4人の男。
「そ、そうですが…」
そう答えるのが精一杯になるほどの威圧感。
「出ようか…?」
「あ、あの…松宮…さんは…?」
「松宮は来ない。あんたの交渉相手は、変わったんだよ。恥ずかしい動画、亭主の勤める学校にばらまかれたくなきゃあ、おとなしく一緒に来ることだな…」
低く抑えつつも、逆らうことを受け付けない声音に順子は、魅惑の肉体を恐怖に震わせた。
<第三夜:人妻は監禁体験にアブノーマルな性癖を開眼する>
―――ここがどこかはわからない。
一つ言えることは、順子自身、長年の願望だった拉致、そして監禁を体験してしまっているという事実だけだ。
微かに身動きするだけで、手首と足首にひやりとした金属製の枷の感覚が走る。
ほぼ全裸で大の字に拘束された順子。
ほぼというのは、松宮に着用を命令されていた、マイクロ・ミニビキニ風のショーツ姿に剥かれていたためだ。
どちらかといえば家庭的、悪く言えば豊満だが垢ぬけない順子には不釣り合いなセクシー下着だ。
が、逆にそのギャップがあられの無さを醸し出し、虜囚の人妻に華を添えている。
が、そんな惨めともいうべき、囚われの絵図を順子は自分で把握できずにいる。
ここに『護送』される車中で黒い布で目隠しをされたため、衣服を無理やり脱がされて以降、この監禁場所でも足の裏に伝わるひやりとした感触と、繋がれた四肢の感覚だけでしか、自分の置かれた状況を理解できないでいる。
が、しかし、順子はこの恐怖のさなか危機的状況に、ふしだらにも濡れていた。
(これって…拉致監禁とか? 松宮から交渉相手が変わったって…どういうことなの? ああ…私どうなるの? 裸同然にされて鎖で縛られて目隠しなんて…)
順子とて普通の主婦に過ぎず、この非日常的な体験に恐怖を覚えぬ筈はない。
しかし、怖れと緊張から来る鼓動とともに、男たちの手中に堕ちこれからどんな目に遭わされるのかしれないという絶望感が、じんじんと湧きあがるような甘い痺れをも生み出す事実を認めざるを得ない。
身悶えるたびに、肉体に虜の証である手枷足枷の感触が走り、不覚にも乳首は屹立し、マイクロビキニを模したショーツの秘所には、既に愛液が滲み、内股にみだらな雫が漏れ出ている。
「うぅ…」
次第に火照ってゆく肉体は心悸亢進が高まり、膣からぬるりとした熱いラブジュースが噴き出すような錯覚に順子は戸惑う。
放置されればされるほど濡れてしまう、マゾヒストのサガをこんな拉致監禁体験の状況下で露呈してしまうとは…。
自分の変態っぷりに狼狽するしかない順子の耳に、やがて数人の足音が忍び寄る物音が聞こえてきた―――。
「あ、あぁ…あなたたちは誰なのッ? わたしをどうするつもりッ?」
大きな乳房を揺らし、紅潮した肌が波立ち、激しくへその穴を上下に運動させつつ、順子は声音を強めた。
「間嶋順子さんよ…あんたが無事に帰れるかどうかは、返答次第だ」
コーヒーバーで声をかけてきた男と思わしき、正面に佇んでいるであろう男の声に向け、順子は尋ねる。
「ど、どういうことなの?」
「俺たちは、あんたと深い仲だった松宮を追っている。行き先を知ってるはずだ」
「ま、松宮…さんが…あなたたちに何かをしたの?」
「それはあんたには関係ねえだろうがッ!」
足元で、何かが空気を切り裂き、床のコンクリートを打ち鳴らす音が響いた。
(い、いやだわ、鞭とか?)
「あんたは質問にだけ答えるんだ、いいな? もう一度訊く、松宮はどこにいる? どこに雲隠れした!?」
男は人妻の顎に手を掛け、目隠しされた順子の貌をくいっと引き上げる。
「し、知らないわ、ほんとですッ…。それに松宮さんとは、別に深い仲とかじゃ…」
「…この女、案外強情そうだな。少々カラダに尋ねる必要がありそうだ」
次の瞬間、ビッビッという鈍い音とともに、順子の背中を乾いた痛みが駆け巡る。
「あああああ――――――――ッ!!」
味わったことの無い責め苦の痛みに、思わず順子は悲鳴を漏らした。
一振りごとに、じんじんと鞭の痺れが柔肌に食い込み、それがまた甘美な『いたぶられ感』を昂らせる。
その都度、順子は嬌声にも似た喘ぎを漏らし、ナイスバディを悶えさせる。
「おら、おら、亭主に内緒の密会に、そんなエロい下着を着てきて、深い仲以外のナニモノでもないだろうがよ、この雌豚が!!」
「ああッ、や、やめてくださいッ…ああッ…堪忍してくださいッ…ああァァ〜〜〜〜ッ」
痛みに身を委ね、鎖に繋がれた魅惑の肉体を波打たせ苦痛に耐え忍ぶ順子。
が、内心は、念願の想いがかなったような快感と開放感に弄ばれているのだから、皮肉なものだ。
(ああ、コレよ、この卑猥な感覚ッ!! 見知らぬ男たちに捕まって裸にされて鞭で打ち据えられるなんてッ…なんて…なんて恥ずかしィのぉ―――――ッ!?)
自分でもあられのない悲鳴を漏らしつつ、心の中で快哉を叫びながら、マゾの本性を圧し殺そうとするも、その態度には明らかに悦びの色が隠せない。
「水ッ!」
恍惚の表情を目隠しの下で浮かべつつ、あまりの刺激に項垂れ甘美な責め苦に酔いしれる順子を、折檻に力尽きたと勘違いしたか、冷水を浴びせる男の一人。
「ふん…今日のところはこのくらいにしてやる…。が、近日中にあんたにはもう一度、ご足労願うとしよう」
「ああ…」
手枷と足枷を外される感覚にも、解放される喜びは微塵もなかった。
代わりに、男の一人が漏らした言葉に言い知れない嗜虐心を駆り立てられる順子。
「どうやら、あんた、松宮にカタとして売られたんじゃあねえか。まぁ、いずれにせよ、あんたみてぇなスケベな人妻を公然といたぶれるんだから楽しみなこった。松宮の居所を白状する気になるまで、あの手この手で責め苛んでやるから、覚悟しときな!」
微かに心地良さを感じる素肌の痛みと、両脇から乱暴に裸体を抱えられる敗北感を味わいつつ、順子は恍惚の表情だ。
(ああ、いずれ、この男たちにまたいたぶられるんだわ…)
絶望にも似た背徳的な悦楽の痕跡が、鞭の痣同様に、その肉体に刻み込まれたことを痛感する順子だった。
(続く)
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