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ランジェリーの誘惑〜共演者とのキョウエン(狂宴)-8話



作家名:夢野由芽
文字数:約3290文字(第8話)
公開日:2020年4月8日
管理番号:k016


挿絵の官能小説画像

0



グラスを取りに行った里帆はなかなか戻って来なった。
結衣が気になってキッチンへ行こうかと思っていた時、寝室のドアが開いた。

「お待たせしました〜。」
4つのグラスを持って現れた里帆は、
メイド風のランジェリー姿だった。

官能小説の画像

「お、なかなか似合うじゃないか。
キツネ姿もいいけど、
メイドさんもよく似合っているよ。」

「ありがとう。源ちゃ、さん。
選んだ人のセンスも良かったんだと思います。ね、智君。」

「いやあ。可愛い子は何を着ても可愛いけど。里帆ちゃん、可愛いよ。
この前のセーラー服風のもよかったけどね。」
「あ、あれなら、今夜も持ってきました。」

「そっか。じゃあ、あとで。」
「はい。」

(源ちゃ?智君?この前のセーラー服風?今夜も持ってきました?
それより、じゃああとでってなあに?
やっぱりこの3人は、すでに関係があるんだわ。
こんな下着姿を見せたり見られたりする関係なんだわ。)

結衣は自分の予想が当たっていることを確信した。
その一方で、どこか自分だけが蚊帳の外にいるような疎外感も感じていた。
 
(わたしだけが他人のようだわ。新入りさんって言うこと?)

「あ、ごめんごめん。でね、結衣、さん。君へのプレゼント、開けてみて。」
結衣を取り残したままに会話が回り始めたことに気づいた智久が言った。

そして結衣に近づくと、さっき自分で手渡したラッピングを改めて自分の手に取った。
それを源に見せた後、改めて結衣に渡した。

(なんでいちいち確認するんだろ。)

「結衣。せっかくの智久君からのプレゼントだ。開けてごらん。」
源はやはり何の抵抗もなく、眼鏡をかけなおしながら言った。
(智久からわたしが下着をもらうこともOKっていうことなのね。)

そこに口をはさんだのは智久だった。
「いや、源さん。ここではなくて、別の部屋に行って開けてもらった方が。」
「そうか。そうだな。

じゃあ、結衣。ちょっとリビング、いや、バスルームの方がいいのかな。
結衣なりに準備ができたら寝室に戻っておいで。」

源の言葉には明らかに含みを持たせたものだった。
結衣は訝しく思いながらもプレゼントを手に寝室を出た。

(バスルームでプレゼントを開ける?なぜ?そうね。おそらくはそういうことだわ。)

結衣は迷いなく、バスルームに向かった。

早速、ラッピングを開け、中身を見る。
「・・・・・。」


官能小説の画像


パッケージの中には奇麗に畳まれた黒っぽい布が見える。
結衣はゆっくりとそれを取り出し、広げた。

里帆が着ていたのと同じようなメイド風のランジェリーが現れた。
しかも、胸元とスカートの部分はシースルーになっていて、里帆が着ていたものに比べてはるかに露出度が高かった。

(つまりはこういうことなのね。)


結衣はランジェリーを手に取り、目をつむった。
しばらく呼吸を整えてからゆっくりと目を開けると、目の前の鏡には、見慣れた自分の顔が映っている。

家にいるときはそれほど化粧をしているわけではないが、ついさっきまで激しく源と言い合っていたせいか、口紅もはげ、目も幾分腫れぼったかった。

本当ならシャワーでも浴びてすっきりしたいところだが、初めての客を長く待たせるわけにもいかなかった。
そして不思議なことに、結衣自身、少しでも早く寝室に戻りたいという思いがあった。


結衣は思い切って顔を洗うと、着ているものを一気に脱いだ。

視線を上げると、目の前には下着もすべて脱ぎ去った全裸の自分が鏡の中にいる。

(里帆ちゃんに比べたら、多少見劣りがするかしら。)

とはいうものの、いまさら体型の違いなど気にしていてもしょうがない。

結衣は軽くファンデーションを塗り、
普段はめったには使わない、濃い紅のルージュを塗った。

鏡の中に、妖婦の姿が映っていた。

鏡の中の自分を見つめながら、結衣は智久からもらったランジェリーを身に着けた。

(これは智久からのプレゼントであると同時に、夫である源さんからのプレゼントなのだ。)
結衣はそう理解した。

そう理解したうえで身に着けたランジェリーは、結衣の想像を超えたものだった。

(嘘っ。何、これ?里帆ちゃんが着てたのなんかと比べ物にならないわ。)
パッケージを開けた時から想像がついていたことながら、結衣は改めて露出度の高さに戸惑った。

そう。鏡に映る自分の姿は、とても女優新牧結衣とは思えないような姿だった。
ドラマや映画のシーンで、監督から要求されたとしたら、果たして自分はどうするだろうか。

いくら演出とはいえ、ここまでの露出はあり得ない。
結衣はそう考えた。

(これなら、いっそのこと、何も着ていない方がいいんじゃないのかしら。)

結衣はそう思った。
と同時に、そう思わせるくらいに、
この下着はセクシーなのだということも感じていた。

結衣はもう一度、ルージュを塗った。
明らかに手がわずかに震えている。

鏡の中の自分は、明らかに、普段の化粧の範囲を超えた、まるで娼婦のそれだった。

(このランジェリー姿で、この化粧で、わたしは今から夫や槍P、
そして初対面の古岡里帆の前に立つのだ。
これは新しい自分なんかじゃない。

今まで周りにはひた隠しに隠してきた、
いや、自分自身でさえ気づいていなかった、
自分のもう一つの姿なのだ。)


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たった今、身に着けたばかりなのに、
ショーツの薄い布地はすでにうっすらと濡れてきた気がする。
(濡れてる。ランジェリーをつけただけで………。)

結衣は自分の指でその部分の様子を確かめたくなる衝動を辛うじて抑え、バスルームを出た。

「お待たせしました。」
結衣はドアの前で笑顔を取り繕い、寝室へと入っていった。

「・・・・・。」
寝室にいた3人が一瞬、言葉を失った。
ドアを開けて現れたのは、自分たちの知らない新牧結衣の姿だったからだ。

そのほとんどがシースルーのメイドのランジェリーを身に着け、テラテラと光るほどのルージュを塗った妖しい女がそこにいた。

「ゆ、結衣。よく、似合う、よ。」
「ホント、結衣さん、素敵、です。」
「結衣、さん。色っぽい、よ。」

誰もが誉め言葉を口にしつつも、真正面から褒めるには憚れるような、結衣の姿だった。

「智久さん、素敵なランジェリー、ありがとう。
似合うかしら?
ねえ、源さん。これでお望み通りでしょ?」

結衣は派手なランジェリー姿の自分のどこも隠すことなく、全てを曝け出した状態のままで、夫である源に迫った。

「あ、ああ。結衣。君は、とても素晴らしい女だ。」

そう言う源の声は震えていた。

源は源で、動揺していた。
自分で計画してきたこととはいえ、いきなりこうなるとは思わなかったのだ。

(結衣は、突然の第三者の登場を受け止めきれないだろう。)
そう考えていたのだ。

夫の行為に挑発されたとはいえ、何の準備段階もなく、
突然の第三者の登場を受け入れることなどできるはずはない。

結衣はこの提案に迷い、最終的には拒否して、今日は終わるだろう。
それならばそれで、また次の方法を考えていけばいい。
ことを成就するためには、いくつかの段階を踏まねばならないのは当然だ、と。

源はそう思っていた。

しかし、結衣の決断と行動は、源の予想を遥かに超えた。

単に{受け入れる}だけではなく、結衣はそれに自ら挑んできたのだ。

(自分は源の言いなりになって、仕方なくこうするのではない。 
 自分の意思で、この道を選んだのだ。)

その決意の表れのルージュだった。

真っ赤に、どぎつく塗られたルージュは、一時代前の娼婦を思わせた。
今夜の突然の来客に対して、いや、夫である源に対しても、
自分は娼婦のように接しよう、という結衣の心の表れだった。

おそらくはそれだけではない。
女優として、女としての、古岡里帆への対抗意識でもあっただろう。
年齢は明らかに里帆の方が若い。

しかし女優としての経験も、当然、女としての経験も、自分の方が豊かなはずだ。
ならば、女としても、女優として、里帆に負けるわけにはいかない。
これは里帆との共演であると同時に、戦いなのだ。

里帆がランジェリー姿で寝室に現れた時の男たちの驚きと欲求を、自分は超えなければいけない。
それが女優新牧結衣のプライドでもあった。

(自分の家というステージで、主役はあくまでもわたし。)
そんな結衣の心の叫びが聞こえてくるようだった。




(続く)





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