アナルファンタジー(1)契機-第7話
作家名:優香
文字数:約5000文字(第7話)
公開日:2020年3月16日
管理番号:k021
「良いの。主人なんてどうでも。私は貴方に逢いに来たのよ」
「そんな事仰って。先生に言いつけますよ」
私は彼女にお茶を出してから、苦笑しながら、席に戻った。
「あーあ。私、ほんとに貴方みたいな子供か妹が欲しいわ。優しくて、可愛らしくて上品で。そうしたら一緒に買い物に出掛けて食事して、毎晩一緒にお風呂に入って身体洗いっこして、同じベッドで抱き合って寝るの」
そう言って私を見る彼女の瞳が何故か妖しく光り、私は思わず視線を逸らした。
それは私がこの事務所で働き出して、彼女と初めて逢った時から、何度か聴かされていた言葉だったが、未だに何故か妖しい胸騒ぎがするのを禁じ得なかった。
私は、彼女のその言葉に相槌がうてないまま、どぎまぎしていると、彼女がいきなり姿勢を正した。
「ねえ。今夜家に来ない?主人にはダメって言わせないわ。何時も彼と二人だけで食事して、あの人ったら、私が腕を奮った料理を美味しいとも言わないで食べるし、何にも話をしてくれないから、つまんないのよ。ねえ、そうして。貰いものだけど美味しいワインがあるし、私、今から帰ってご馳走作っておくから。後で主人の車で一緒にいらして」
そういうと彼女は立ちあがって、デスクの電話を取り、私の返事も訊かずに先生の了解を取り付けた。
「じゃあ、待ってるわね。愉しみだわ」
そう言って出がけに振り向いた彼女の瞳が、さっきと同じように妖しく光った気がした。
「ご迷惑じゃないんでしょうか?」
私はベンツの助手席に小さく縮こまって、先生に訊いた。
「気にしなくても良いよ。聖子は、初めて逢った時から、君が好きだと言ってたし。聖子も多分言っただろうけど、何時も二人だけっていうのも、退屈でね。私も大歓迎だよ」
先生は、そう言いながら笑ってハンドルを切った。
先生の自宅は、街で一番の高台にある高級住宅街でも最も高い部分にあった。
車の中からリモコンで入り口の門扉が開き、車が通ると自動的に閉まった。
所々に監視カメラが設置してあり、赤外線のセンサーだろう、車を反射して光っていた。
ドアから入るなり、奥様が両手を拡げて私を軽く抱き、歓迎してくれた。
すぐにワインで乾杯して食事が始まった。
他愛もない会話から、私の生まれ育ちを当たり障りもなく訊き出され、私も何気なく応え、二人の馴れ初めなどを聴かされ、私も笑いながら聴き役に回った。
そうして時を忘れて談笑しながら、美味しい料理でお腹も満ち足りた頃、私はトイレに行こうと立ち上がろうとした。
「トイレね?そこの廊下の左手よ」
しかし、私はふら付く程ワインに酔ってしまっていた。
「あらあら。小篠さん。酔ったのね?どうしようかしら?主人も呑んじゃったから車で送れないし。あら、もうこんな時間。電車もなくなりそうだし、タクシーは勿体ないし」
「す、すみません。久しぶりにお酒呑んだから、酔ってしまって」
私はふら付く脚を自分で励ましながらトイレで用を足し、リビングに戻ると、奥様は私の為に用意したのだろうか、パジャマを出して拡げていた。
「小篠さん。もう泊まって行きなさい。二階に客間があるし、パジャマは私のを貸してあげる。明日の朝早く部屋に帰って着替えてから事務所に出れば良いじゃない。貴方、明日は少しぐらい遅刻しても良いでしょう?こんなに酔う程呑ませた私達も悪いんだから」
「ああ、良いよ。明日は何もないから、私も休みたいぐらいだよ」
そういって先生はワイングラスを干した。
「ああ、でも、どうしよう。私。ご迷惑掛けて」
「迷惑だなんて。私の方こそ、貴方を誘って。ワインを飲ませ過ぎたかしら?ね?泊まってね?私、貴方は逢った時から他人だと思えないの。一緒にここで暮らしたいくらいよ」
また彼女の瞳が妖しく光った。
彼女の視線に無意識の戸惑いはあったが、独りで電車に乗って部屋まで帰る自信がなくなっていた私は、二人の気持ちに甘える事にした。
それが私の新しい人生の幕開けだったのだ。
「一緒にお風呂に入りましょう。貴方、覗いたり、後から入って来たりしちゃだめよ。私と早苗さんと二人だけで入るんだから」
奥様は私の手を取って強引に立たせると、先生を甘く睨み付けた。
私はもう彼女の言いなりだった。
「はいはい。お二人でごゆっくり」
先生は笑いながらワイングラスにワインを注いだ。
二人で洗面所の脱衣室で洋服を脱ぐ。
「せ、先生と一緒にお風呂に入るんですか?」
「あら。顔に似て純情な事をおっしゃるのね?夫婦だったら当たり前よ。そのままお風呂でしちゃう事もあるし。貴方、恋人と一緒にお風呂に入った事ないの?」
嫌ではなかったのに、健二と一緒に風呂に入った経験がないのは、今から想い起こせば不思議だった。
あの行きずりの紳士とは一緒にお風呂に入ったのだったが、否定した。
「あ、ありません。そ、そんな」
私はうろたえながら、恋人と一度もお風呂に入らなかった事を後悔し、あからさまに応える奥様を羨ましいと想った。
身体を隠すタオルを出してくれるかと想ったら、彼女は素っ裸のまま私を浴室に誘った。
二人で向き合ってシャワーを出す。
彼女の裸身を恐る恐る見て驚いた。
洋服を着ている時は私より痩せて見えるのに、私よりも二回りも豊かな乳房で、乳首がつんと尖って上向きになり、彼女が裸身をかがめても決して垂れる事はなかった。
腰は私よりもくびれ、臀部は成熟した女性特有の完璧なまでの曲線を誇っていた。
女の私でも惚れ惚れするような裸身だったのだ。
視線の遣り場に困り、うろたえて立ちすくむ私の裸身に、彼女はお湯加減を調節したシャワーを振り掛けた。
「酔ってるからお湯に浸からない方が良いわね?シャワーだけにしましょう。ああ、でもやっぱり、早苗さんの肌って若いわ。シャワー掛けてもお湯を弾くものね。それに早苗さんのおっぱい、素敵だわ。形が良くて整ってて」
そう言いながら彼女は自分の裸身にもシャワーを振り掛けてからシャワーノズルを置くと、両手を伸ばして私の乳房を包んだ。
私は少し拒んだが、彼女は構わず、私の乳房を軽く揉み立てた。
彼女の掌で、乳首が一気に勃起して転がった。
私は恥ずかしさの余り、身をすくめたが、彼女は気付いたのかどうか判らないまま、すぐに手を離した。
「奥様のおっぱいの方が、す、素敵です。大きくて張りがあって。奥様、わ、腋毛っ?」
初めて目の当たりに彼女の乳房を見つめた時、その裾野の腋の間から黒々とした毛が覗いていたのに、私は驚いて想わず言葉にしてしまっていた。
「これ?主人がね。セックスしてる時に両手を上げるでしょう?その時に腋毛が見えるといやらしくて昂奮するからって。貴方も伸ばしたら?その方がなんとなくセクシーになったように想えるわよ」
彼女は何気なく応え、私と自分の裸身全体にもう一度シャワーを振り掛けた。
その言葉を聴いたとたんに、私の媚肉の奥底がずきんと疼いた。
「さあ、洗いっこしましょう」
私の手を取ってボディシャンプー液を大量に出し、自分の掌にも同様にした。
私の乳房に液を塗り始めた彼女に真似て、私も彼女の乳房に液を塗り付ける。
同性の乳房に触れるのも触れられるのも、生まれて初めてだった。
媚肉の奥底に官能の疼きが生まれる。
「本当に貴方のおっぱいって素敵ね。形が良くて弾力があって、触ると変な気分になっちゃう」
媚肉の疼きが大きくなって来た。
彼女は私を抱き寄せると、私の背中を軽く愛撫するように液を塗り付けた。
私も慌てて彼女の背中に同様にする。
二人の乳房が重なると、彼女は意識してか無意識にか、自分の乳房で私の乳房を愛撫するように蠢かした。
乳首が何度か触れ合い、彼女の乳首も硬く勃起しているのが判った。
背中を撫でていた彼女の両手が脇から臀部に降りて、私の両方の尻肉を撫で摩った。
私も戸惑いながらではあったが、同様にしていた。
一層激しく疼き始めた媚肉の奥底から、どくんと愛液が滴り、膣粘膜が潤うのを感じた。
《ああ、どうしよう、このままだと、感じてるのがばれちゃう》
お尻どころか、谷間の女性器や肛門の窄まりまで、彼女の指が伸びて来そうに思えて、私は不安と期待に戸惑いながらも、媚肉がさらに激しく疼き出したのを感じた。
軽い目まいがするような官能を覚え、次の瞬間、彼女の唇が私の唇を覆いそうな錯覚に陥って眼を閉じた私だったが、彼女はそれ以上の事をせずに私から離れた。
「手や足は自分で洗いましょうね?おま○こもよ」
彼女は平然と女性器の俗称を言葉にした。
彼女のキスや、指が肛門の窄まりまで触れるのを期待し始めていた私は、少し拍子抜けをしていた。
シャワーで裸身を流し、洗面室で身体を拭き合い、彼女はネグリジェに、私は素肌の上に貸してもらったパジャマに着替えた。
厚手ではなかったので、乳首の在り様が先生に解ったら、と心配したが柄物で、透けてもおらず、見え難かったので安心した。
彼女は驚いた事に、私がいるにも拘らず、薄手のネグリジェの下には何も付けず、乳房の膨らみも乳首も、そして下腹部を妖しく飾る恥毛も透けて見えるままだったのだ。
「主人が好きなのよ。視て昂奮したらすぐに抱けるからって」
彼女はそう言って悪戯っぽく微笑み、可愛い舌を出した。
考えてみれば、二人は夫婦だし、私も今一緒にお風呂に入って、乳房も恥毛もお互いの視線に晒したのだし、私だって部屋にいる時はパジャマどころか裸同然だったから、彼女のそれは不思議でもなかった。
「二日酔いになるといけないから、先にお休みなさい。階段を上って、トイレの手前の右側のお部屋よ」
「判りました。お休みなさい」
先生がお風呂に立ち上がり、奥様が入れてくれた冷たいはちみつレモンを一気に飲むと、私は彼女の言葉に従って、言われた部屋に入って、窓際に立った。
この街の一番の高台にある家の窓から夜の街を見下ろす。
宝石箱をひっくり返したような美しい夜景。
夥しいきらめきの中で、男と女が愛し合い、憎み合い、悦び、悲しみ、生きている。
あの輝きの中に、私の肛門を愛してくれる男性がいるのだろうか?
あの輝きの奥に潜む闇の中に、私と同じような性癖を持つ女性がいるのだろうか?
私はしばらく景色を眺めた後、冷たさが心地良いベッドに横たわった。
さっきの彼女との痴戯で湧き起こった疼きは未だ収まっていなかった。
ショーツの中に指を潜らせ、女陰の襞に触れてみる。
《ああ、こんな、わ、私》
奥様に借りたバスタオルで拭く訳にはいかなかったので、濡れたままだったのだが、女陰はお湯とは異質の粘り気のある粘液が夥しく絡みついていた。
《だ、だめよ。ここではだめ》
さっきのお風呂場での奥様との痴戯を想い出して、私はそのまま指を蠢かしたい衝動を必死で抑えて指をショーツから抜き取り、シーツでも拭く訳にもいかず、口に含んで舐め取った。
妖しい独特の愛液の味が口の中に拡がる。
眠れない。
どうしよう。
媚肉の疼きは少しは収まったものの、未だくすぶり続けている。
その時だった。
「ねえ、貴方、今夜はだめよ。早苗さんに聴かれるわ」
「大丈夫だよ。あれだけ酔ったんだから、もう眠ってるよ」
奥様の甘えるような声が階段を上る二人の足音と共に、私の心を貫いた。
《まさか?向かいの部屋がご夫婦の?》
心配した通り、二人の足音が私の寝ている向かいの部屋に吸い込まれて行った。
すぐに二人の妖しい潜み笑いと、奥様のかすかな喘ぎが聴こえて来た。
耳を塞ごうにも、手が動かない。
私は二人の声を聴きたがっている自分に気付いていた。
《もしかして?ドアを閉めてない?》
ドアを開く音は確かにした。
ドアを閉めた音は?
確かではない。
ドアを閉めているこの部屋にまで、二人の秘めやかな声が聴こえる。
此方の部屋のドアを少し開けたら、もっと。
私は震えながらベッドから起きて、スリッパを履かずに裸足のまま忍び歩き、音を立てないようにドアを開けた。
《ああ、やっぱり》
此方のドアの隙間から、二人の部屋のドアの隙間越しに、二人の姿がサイドランプの薄明かりに映し出されていた。
ダブルベッドの白いシーツの上で、先生の裸の背中と、悶えるように蠢く奥様のなまめかしい白い両脚が見える。
生まれて初めて見る他人のセックス。
覗き視。
それも尊敬する先生と素敵な奥様の。
公私共に常に紳士的であろうとする先生と、上品で知的で美人の奥様が、どんなセックスをするのか。
他人のセックスを覗き視る行為に対する背徳心が、私の心を一層妖しく燃え上がらせ、媚肉を疼かせる。
(続く)
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