事故物件のオンナ-2話
作家名:ライア
文字数:約5970文字(第2話)
公開日:2019年2月12日
管理番号:k014
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「はぁ…、今日も疲れたなぁ…」
仕事も終わり、家に帰って夕飯を食べ、シャワーを浴びた。
立ち上る湯気を解放しようと風呂場のドアを開ければ、いつもの殺風景。
ここに越してきてから特に買い足したものもなく、歳に似合わず全く女っ気のない部屋だった。
私は髪を軽く乾かして、リビングへ向かう。
ベッドに倒れ込むと、ギシ、と弱々しいスプリング。
唯一持ってきた私物といえば、この安物のベッドぐらいのものだ。
お気に入りのブランケットからは自分の匂いがして少し気持ちが落ち着く。
昨日、ここで幽霊に犯されたなんて思えない。
別の男の匂いなんてまるでしないのに。
昨日のアレは自分の妄想だったのかもしれない、そう考えるしかないほどに、昨日誰かがここにいた形跡なんて何一つなかった。
「疲れてるのかなぁ…」
入浴前に入れた温いココアを飲み干して、息をついた。
早く寝てしまおう。
疲れているのなら寝るのが一番だ。電気を消して、布団の中に潜り込んだ。
ギシィ。ガタンッ、キシ…。
瞼を閉じて、微睡みに誘われた頃だった。
ああ、まただ。
近づいてくる気配に私は一瞬、夢か現実か判断できなかった。
しかし、ソレは昨日と同じように私の上に跨り、頭を一撫でした。
その手つきは幽霊とは思えない生きた人のような温かさを持っていて、私を安心させると同時に、昨日のような官能を期待させた。
「…っ、あぁん…っ、ん…、んぅ…」
私は形だけの抵抗をして、組み敷かれた。
触られることに悪い気はしていなかった。
こんなにも優しく、気持ちいいだけの愛撫なんて久しぶりだった。
あれだけ悩んでいたのに、犯されるというタイミングになった今、夢でも妄想でも、どうでもいいとさえ思っていた。
今まで、そういう気分じゃないと言っても、自分本位に無理やり犯してきたり、フェラだけでもさせようとしたりするような男ばかりと付き合ってきたような気がする。
しかし、この愛撫はもっと欲しくさせるような、ネットリとじれったく、いじらしい。
触られているだけなのに、腰がゾクゾク震える。
愛液がトロトロと溢れて、エッチな気分にさせられるのだ。
「はぁ…んッ」
下腹部をゆっくりと撫でられると、子宮のあたりがキュンと熱くなる。
全身が甘く痺れ、官能の吐息が漏れてしまう。
恥ずかしがる暇もなく、次の愛撫が私を震えさせる。
「んっ、ふっ…、はぁっ…」
敏感な部分に触れられているわけでもないのに、どうしても感じてしまう。
気づいたときにはルームウェアのボタンを三つほど外されていた。
むわぁ、と湿った熱気が身体から立ち昇っている。
僅かに覗く谷間からは汗の雫が伝っていた。
自分が如何に淫乱なのかを思い知らされているようだった。
「んんッ?!…んひぃッ、あぁ…ッ、あぁ…、んぅ…ッ」
前触れなく、直に胸に触れられて身体が跳ねる。
さっきまでとは違う、直接的な官能の感覚に、卑しいと分かっていても腰を浮かせてしまう。
しかし、本当に触れてほしい突起には触れてくれない。
そこを避けるようにくるくると指先で弄ばれる。
「はぁ…ッ、はぁぁ…、ふぅぅ〜」
獣のように浅い息を吐きながら直接的な刺激を渇望するが、中々触れてくれる気配はない。
焦らされているとは分かっていても、期待してしまって身体を動かしてどうにか弄ってもらおうとしてしまう。
「ああぁ…、はぁぅ…、んっ」
あぁ、なんて濫りがましいのだろう。
きっと今、私は幽霊の思うがままにされているのだ。
「はぅぅ…、んふぅ…っ、はぁぁ…っ」
熱い吐息ばかりが漏れる。
ルームウェアの隙間からチラリと覗くピンクの突起は硬く立ち上がっている。
きっと彼には私の下着が既にびしょびしょに濡れていることさえもお見通しなのだろう。
「やだぁ…っ、見ないで…ッ、はぁんっ」
姿が見えない幽霊がどこを見ているのかなんてわからない。
半開きにして喘ぎを漏らす口元を見ているのかもしれないし、胸や濡れた下半身をじっくり見ているのかもしれない。
それとも全身を舐めまわすように見ているのか…。
「はぁ…っ、はぅぅッ、んうう〜ッ、あぁっ」
想像しただけなのに、全身がぞくぞく震える。
もっと見て欲しくて無意識に脚を拡げてしまう。
脚を拡げると陰部の唇がぱかりと開いて、堰き止めていた愛液がとろりと零れてショーツが濡れる。
こんなに濡れているのだから、もう透けて大事な部分が見えてしまっているかもしれない。
意識し始めると、あちこちから視線を感じてしまう。
本当に見られているかも分からないのに、想像の視線だけでイってしまいそうだった。
みっともない妄想をしていると、ピンッ、と諫めるように爪で私の右の乳首を軽く弾かれてしまった。
「んッ、くぅぅ〜ッ?!はぁぁッ、あぁっ、んひぃッ、あぁっ」
前触れなく快楽に突き落とされて、私は口を半開きにして短く喘いだ。
ピンッ、ピンッ、ピンッ。
容赦のない責めが刺激に飢えたメスに与え続けられる。
その度に大げさなほど全身を痙攣させている惨めな女は紛れもなく私なのだ。
今までこんな風に性に呑まれたことなんてなかったのに。
「あひッ、んひぃぃ〜ッ、はぁっ、あぁ…ッ、だめぇ…ッ!」
まるで真性の淫乱のような喘ぎ。
乳首を刺激される度に、ピクリっ、と蜜壺が痙攣している。
ヒクヒクッと入り口が開閉して、昨日のように太いモノを欲しがっている。
見ず知らずの私を性欲の為に犯すなら、すぐに挿入すればいいものを、この幽霊は決してそうはしない。
それどころか、こちらが待てなくなるほどに執拗な前戯を長時間してくるものだから、焦らされているこちらはたまったものではない。
「んぅ…、はやくぅ…ッ」
私は耐えかねて、下着を脱ぎ捨てた。
こんな風に自分から求めるなんて。羞恥のあまりに泣きそうになってしまうが、もうこんなの我慢できない。
蜜壺は既にびしょびしょにふやけていた。
脚をそろりと拡げて、挿入しやすいような体勢になる。
「はぁ…っ、はぁぁっ…、んぅ…、もうだめ…っ、我慢できない…からぁっ!」
自分で触ってしまいそうなくらいだった。
腰は不自然に浮き上がって、脚はパカリと大きく開き、薄い茂みの隙間から勃起した陰核が丸見えだ。
ヘコヘコと腰がダンスして、見えない肉棒を探すようにあちらこちらへと浅ましく彷徨う。
その間も、幽霊は乳首や腰をいじらしく弄っている。
「んんん〜っ、はぁ…っ、はぁぁ〜ッ、そこ、じゃなくてぇ…っ、…ココ…ッ早くください…ッ!」
腰が止まらない。
茂みが揺れる。
その奥で勃ち上がった豆は桃色というには可愛すぎた。
充血しきったその紅は、外気に触れてぴくぴくと蠢いている。
「やぁ…っ、焦らしちゃ…やだぁっ、ください…ッ、昨日みたいに…ッ」
ここまでしてしまったら、もう恥ずかしさなんて捨てるしかなかった。
くぱぁ、と指で入り口を開けて中身を見せつけた。
「ココ…ぉ、んっ、…おまんこ…ください…っ、あぁっ」
そこまで言うのを待っていたのか、幽霊はようやく私の太腿を掴んだ。
今日もどこの誰かも分からない幽霊に犯されてしまうんだ。
自然に口角が上がり、涎が口の端から零れて頬へ伝った。
グググ、とヌルヌルになった入り口にゆっくりと割ってくる硬い肉棒に、私は唾をごくりと飲み込んだ。
1
連日の夜の行為はあまりにもリアルで夢と思い込むには最早無理があると自覚していた。
考えても解けない謎を抱えたまま悶々とした頭は、昼間の仕事にも支障をきたし始めていた。
仕事をしていても、ふと夜の行為を思い返しては恥ずかしくなる。
昨日もあまりに焦らされたせいか、挿入された後、すぐに果ててしまった。
そして、そのまま眠ってしまったようだった。
このもやもやの気休めになるかもわからなかったが、思い立った私は会社の帰りに不動産屋さんに電話してみたのであった。
「“柏木 和哉”かぁ…」
教えられた名前を唱えてみるも、その響きは特に珍しいものでもなく、そして聞き覚えすらもなかった。
個人情報の問題で前の住人の名前以外は教えてもらえなかったが、きっと私の部屋に現れたのはこの人なのだろう。
なぜか根拠もなくそう思った。
しかし、そうだとすると私は益々わからなくなった。
彼がどうして私を抱くのか、あんなにも優しくしてくれるのか。
彼は今日も来るのだろうか。
意味もないのに新しい下着を買ってしまっていた。
少しセクシーな薄いピンクの下着。幽霊相手に何をやっているのだろうと自分に呆れる。
カタンッ、ギシ、ギシィ。
今日もだ。
彼だ。
心臓がドクドクと脈打った。
私は怯えるフリをしながら、浅ましくも、濡らしていた。
2
『ん〜?お前、地獄ではなく天国行きの人間ではないか?』
死後。
僕は閻魔大王を前に、地獄の裁判を受けているところであった。
ここでは罪の重さを測り、どの地獄へ行くかを一人一人言い渡されるのだ。
そもそも僕は自殺なんてしたので、地獄行きは仕方のないことだと思っていたのだが、閻魔によるとどうやらそうではないらしい。
僕は何かの手違いで天国へ行くはずが地獄へ連れてこられてしまったようであった。
平然とした閻魔の玉座の周りには美しい女たちが集い、閻魔に奉仕をしているようであった。
跪いてグロテスクな巨根を美味しそうに咥える者、赤黒い太ましい腕に絡みついて零れ落ちそうな程の胸を押し付ける者、血管の浮いた恐ろしい太腿に股間を擦り付ける者。閻魔の人間離れした肉体に、白く細い女たちが不釣り合いで、厭らしい。
時折、じゅぷじゅぷ、くちゅくちゅ、と厭らしい水音が聞こえてくる。
『ああ本当だ、お前のデータがない』
閻魔の横にいた整った顔立ちの若い鬼がタブレット片手に慌てだした。
地獄の名簿も遂にIT化していたのか、と妙に感心した。
『こっちも忙しくって…!手違いなのは申し訳ないけど』
忙しなく働く鬼たちにはくっきりと黒い隈が付いていて、中々に地獄というのもブラックなようだった。
しかしだからと言って、大人しく地獄行きはたまったものではない。
『う〜ん、こんな初歩的なミスをするなんて天国の奴らにバレたら地獄の名が立たん…。
すまんが、ちょっとした裏ルートでもう一度成仏してはもらえんか』
閻魔は少し唸ってからそう言った。
つまり、僕は幽霊として現世に戻り、成仏すれば天国へ行けるというのだ。
『あまりに凄惨な事故や災害などでしたら、もう一度人生をやり直していただくこともできるのですが、自殺となるとそういう制度がございませんで…』
若い鬼はマニュアルのようなものを見ながら、眉を下げた。
「それは構わないですけど…。成仏ってなにすればいいんですか」
自殺したことに後悔はなかった。
人生をやり直す気もなかった。
死最後にこんな稀有な体験をするだなんて思ってもいなかった。
『そうじゃのう…。…、あ!お前生前に好きな女がいたらしいじゃないか。
そいつとセックスして最高のオーガズムに導いてやれば、スッキリして成仏できると思うぞ!』
閻魔はお茶目な笑顔で僕にそう提案した。
まあ、確かに大好きだった女性はいたが、そんなに上手くいくものなのだろうか。
『そこは任せてください』
さっきまで慌てていたはずの若い鬼は得意げににやりと僕に笑いかけた。
3
現世へ戻るための手続きにもいろいろあるようで、予想外に時間がかかってしまった。
すぐに幽霊になれるものと思っていたが、現世ではもう数年が経ったというではないか。
僕が想いを寄せていた彼女、由紀さんは、今は僕が死んだ後の物件に住んでいるそうで驚いたが、きっとあの若い鬼が何かしたのだろうと深くは考えなかった。
幽霊となった僕は、今は由紀さんの家となったアパートの一室に潜り込んだ。
僕が住んでいた頃に使っていたソファ、キッチン、クローゼットはなんと殆どそのままになっていて驚いた。
つまり、僕の物が彼女の生活の一部として使われているのだ。
僕の部屋に、女性の甘い匂いが立ち込めていて、酷く混乱する。
言いようもない感動と興奮に惚けていると、間もなく彼女が帰宅したようだった。
スーツを身に纏った彼女はパンプスを脱ぎ捨て、こちらに気づくこともなく、早足でリビングへと向かっていった。
しばらくぶりに見た彼女は、少しの幼さを残したままで、激しい愛おしさに囚われ、胸が締め付けられる。
「はぁ。疲れたぁ…」
仕事が終わったばかりなのか、彼女が帰るなりスーツを脱ぎ始めると、僕は悪い気がしながらも、目を逸らすことができなかった。
由紀さんの僅かな汗とシャンプーの匂いが濃くなっていく。
次に間もなく現れた美しい双丘は、ぷるりと振動で揺れていて卑猥だ。
ピンクのブラジャーに押し込められたハリのあるその肉の塊は、今まで何人の男に揉みしだかれたのだろう。
その後、その厭らしくも美しい果実は、ホックを外されて解放される。
そして僕は、その肉塊の先に控えめにくっついたピンクの突起に圧倒された。
あぁ、今すぐにでも吸い付きたい。
柔らかそうなその肉体に埋もれたい。
僕の下半身はカッと熱を持っていて、すぐにでも彼女を押し倒したいと思った。
由紀さんと同じ屋根の下で暮らし始めて数日の間は、どうしても勇気が出ず、彼女を犯すことはできなかった。
出来ることと言えば由紀さんの近くで彼女の寝顔を見守ることだけだった。
こんな僕が彼女に触れてもいいのか、彼女は受け入れてくれるのか、様々な不安が浮かび上がってくる。
好きだった女性と同じ家に住んでいて、手を出せないなんて拷問のようだった。
しかしある日、僕はとうとう我慢できずに由紀さんを犯してしまった。
幽霊という姿で彼女に触れることができるのか、半信半疑だった。
恐る恐る由紀さんの潜る布団を持ち上げると、彼女は目を見開いてびくりと震えたようだった。
僕は慌てて彼女の頭を撫で、落ち着かせようとした。
「あっ…、ちょっと…、だめっ」
由紀さんが声をあげた。
今まで触れたくとも触れられなかった魅力的な身体が目の前にある。
肌触りの良い薄いルームウェアの上から、彼女の肢体を弄った。
柔らかく、しなやかな肌に恍惚とした。
由紀さんには僕の声も姿も見えないらしく、少し戸惑っていた。
しかしその戸惑いも少しの間だけで、彼女はすぐに僕を受け入れてくれた。
清純だと思っていた彼女は、見えない“誰か”に犯されて感じる淫乱だったのだ。
そのことに嫉妬しながらも酷く興奮している自分がいて、今すぐにでも目の前の愛しい女性を力づくに組み敷いて、繋がりたい衝動に駆られた。
しかし、焦らされて感じている由紀さんが可愛くて、つい意地悪をしてしまった。
その後の彼女もとても可愛らしく、僕を求めてくれた。
彼女のナカは淫乱な身体に似合わず、処女のようにキツく締め付けられ、何度も果てそうになった。
大した経験もない僕がこの先、由紀さんを“最高のオーガズム”に導くことなんてできるのだろうか。
一縷の不安に苛まれながらも、その日は眠る由紀さんを穏やかな気持ちで日が昇るまで撫で続けていた。
(続く)
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