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神津島の奥さまたち-1話



作家名:金田誠
文字数:約2940文字(第1話)
公開日:2020年12月12日
管理番号:k073


男子大学生5人組が、常夏の伊豆七島の神津島に童貞を捨てにいく。そこで、ウブな4人のうちの2人が、二人の主婦と出会って・・・。



挿絵の官能小説画像


私が二十歳のとき、バブル経済は終盤を迎えていたが、まだ世の中は熱狂が渦巻いていた。

その一つの象徴が、伊豆七島だった。

私たち大学生五人は、夏休みにフェリーで伊豆七島の一つ神津島へ向かった。

当時は、竹芝桟橋から三光汽船が伊豆七島界隈を席巻していて、毎日フェリーが行き来していた。

汽船内での宿泊を含めて三泊四日の旅を計画していたが、フェリーは若者たちでひしめいており、客室で寝泊まりするのは不可能だった。

あぶれた彼らは汽船内の広いデッキに陣を取り、思い思いの夜を過ごすことになる。

その日は台風の影響で出航時間が遅れたものの、すでに温帯低気圧となって、日本を通過しており、神津島行きを断行すると汽船側は判断していた。

もしも島近辺のうねりがひどい場合は、着船せずに東京へ帰るかもしれないとアナウンスされてもいた。

わざわざ出航し数十時間揺られて帰らせるなんてことは、さすがにないだろうと私たちは高を括って、払戻しせずにデッキの一角を陣取った。

すると、隣りに女性五人組がやってきて座った。

友人の一人がトランプをバッグから取り出す。

「高校生じゃないかな?トランプ一緒にやろうって誘ってみようぜ。佐藤お前、行ってこいよ」

言い出しっぺの赤川が、私に突撃するよう迫った。

「なんで俺が?」

「お前が一番見た目も話し方もソフトだからだよ。こういうのは、第一印象が肝心なんだ。オドオドしてたり、逆にガツガツしてたりすると、引かれるから。お前がちょうど適任なの」

赤川は、ニヤッと笑って自分の肩を私に軽くぶつけてくる。

彼は私たちのリーダー格で、率先してグループを引っ張る。ただ自分は動かずに、理屈で人を動かすのだ。

口が上手くて、調子がいいのだが、周囲の状況をよく観察しているので、彼の判断は信頼に値する。

また、この中で彼が唯一童貞ではなかった。

「ということで、よろしく」

強引にトランプを持たせる。

私は仕方なく立ち上がって、隣りに向かった。

「こんばんは。良かったら一緒にトランプやらない?」

輪になっている集団の誰にともなく、トランプをかざして問いかける。

全員がこちらを向いた。

一瞬キョトンとした表情を見せたかと思うと、みなが笑みを浮かべ女子同士が互いの顔を見合わせる。

ボス格であろう女の子が口を開いた。

「いいですよ。やりましょ」

明るく答えてくれたことにホッとする。

「じゃ、他の男たちを呼んでくるね」

振り返ると、会話を聞いていた男たちは、すでに腰を上げてニヤニヤしながら女子集団の中に入ってきた。

私たちは車座になって、大貧民やババ抜きをやった。島まで片道9時間かかるので、時間はたっぷりある。

体力の有り余っている若者たちは、お菓子をバリバリ食べながら一睡もせずにゲームで盛り上がった。

そのうち外の様子が薄っすら見えるようになると、私たちは船外のデッキに繰り出した。

陸が全く見えない大海原の水平線から眩しい光が立ち上ってくるのを眺めた。

到着までには時間があるので一度船内に戻った。

さすがに何人かは横になってしまう。

私もウトウトしていたが、そのとき船内が慌ただしくなった。

「おい、島が見えるぞ」

誰かが叫ぶ。

多くの若者が船外デッキへと向かっていった。

私も後を追う。


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甲板に出ると、海の向こうに陸が見えた。

ようやく神津島に到着だ。

ところが、しばらくしても島に近づく気配がない。

止まっている?

その時、船内アナウンスが入った。

「ご乗船の皆様。台風の影響でうねりが高く、接岸できない状況です。ここにいても仕方がないので、東京に帰ります」

えーっという唸りが、大海原に響き渡った。

あちこちで、うげぇと喉を絞るような音が上がる。

船べりに駆け寄る若者たちが、海に吐瀉物を放り出しているのだ。

その様子を見ていた私も、込み上げてくるものを抑えきれなかった。

食べたものを全て海に吐き出した。

今までの睡眠不足とうねりを身体が無意識に我慢していたのだろう。

緊張の糸が切れ、吐きまくる周りの光景に触発されてしまったのだ。

一通り胃の中のものを出した私は、船内に戻った。

あとは、仲間全員とヤケになって爆睡するしかなかった。

東京に戻り、払戻しをするか再び出航する便に乗るかを選択することになった。

仲良くなった女子たちは、払戻しを選んだ。

苦しい航海にはなるが、私たち五人は全員一致で目を血走らせながら、新しいフェリーに乗り込むことにした。

翌日の朝、無事に神津島へ降り立った私たちは、民宿に寄って荷物を下ろし海に出た。

台風一過の晴れわたる空に灼熱の太陽。

すでに砂場は熱く、裸足では立っていられない。

シートを敷いて寝そべるが、とにかく暑い。

それでも寝不足がたたって、全員がうつ伏せで眠ってしまう始末だ。

誰かが「暑い。もう無理だ。民宿に帰ろう」と言い出すまで、数時間が経過していた。

オイルを身体に塗っていたにも関わらず、部屋の布団で横になると、肩から背中にかけて敷布が擦れ、激痛が走った。

「お前、肩に水膨れがすごいできてるぞ」

そう言った友人の肩も背も酷い状況で、ほとんど火傷だ。

全員、瀕死の重傷で寝られず喘いでいる。

「ヤバいよ。この痛み。夜に繰り出せなくなる。とりあえず、冷やそう」

赤川の言葉に従って、宿で氷をもらい身体中に当てまくった。

数時間後、なんとか動けるようになり、夕食を堪能した私たちは、待望の夜の島に繰り出す。

付近は若者でごった返していた。

特に商店街があるわけでも、お祭りがあるわけでもなく、海沿いの道いっぱいに人がわんさかいるのだ。

私たちは、ぶらぶらしながら女子集団を物色するが、目ぼしい女子には男たちがすでに大勢声をかけまくっている。

「どうする?声かけして振られた男の後に突撃するか?」

ガードレールに寄りかかった赤川が私たちに尋ねる。

すると、湧いてきたように、三人組の女子が突如近くに現れた。

私の見つめる向こうに気づく赤川。

「おいおいチャンス到来だぞ。再び、佐藤の出番だな。おい、行ってこいよ」

そう言われた私は、ここまで来たんだから当たって砕けろだと腰を上げた。

彼女らは、電灯の下にいるが、暗いので顔はよく見えない。

シルエットからは、至ってみんな普通の体形だ。

「こんばんは。よかったら、海辺で花火しない?あっちに何人かいるんだけど、遊びたいなあと思って。どうかな?」

私が友人たちのいる方向を指差すと、そちらを見て三人がお互いに顔を見合わせた。

「いいよ」

笑顔で応えてくれる彼女らに近づく。

顔面偏差値は、みんな普通だ。

若い。

おそらく高校生だろう。

全員Tシャツにホットパンツ姿だが、その中で一人だけ大人びた雰囲気をもった長髪の子がいる。

私たちは海辺に繰り出し、打ち上げ花火や線香花火で遊んだ。

彼女たちは栃木県から来た専門学校生だという。

私たちと同い年だ。

話しているうちにいくつかの群れに分かれた。

赤川は髪の長い女と。

他の4人が女子2人と。

ガタイの良い青山と大人しい白井が、ガンガン女子に話しかけていく。

いつもとは違って、下半身の赴くままに突っ走っているのが明らかだ。

あぶれたのは私と黒田だ。

気づくとリーダーたちの姿が見えない。

連れ出しに成功したらしい。

残りの女子の中に好みのいなかった私は

「赤川たちもいなくなったし、花火はあの2人に任せて、路上に繰り出そうぜ」

と黒田を誘った。




(続く)





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