化粧品セールスレディの秘密-1話
作家名:バロン椿
文字数:約2930文字(第1話)
公開日:2020年11月30日
管理番号:k071
男性諸氏はお化粧の匂いに惑わされ、クラクラする時もあると思いますが、化粧品セールスはお客様もセールス側も女同士。とても厳しいものがあります。今日の営業会議でも、成績が上がらないと、「アホか!」、「辞めちまえ!」の罵声が飛んできます。そんな時、お休みが取れたら何をするのか?やっぱり男が欲しくなる?ふふふ、今日は特別に二人のセールスレディ、小池淑江さんと吉野知子さんの秘密に迫ってみましょう。
小池淑江
「ただいま……」
小池(こいけ)淑江(よしえ)は39歳。
マンションに帰ってきても、返事をしてくれる人がいない独身だ。
彼女はスワン化粧品大阪支社のセールスレディ。
背丈が155センチと小さいが、とにかくエネルギッシュで面倒見がいい。
お客さまからは、
「小池はん、あれ、今回もお願い」
「奥様、おおきに」
と愛され、職場でも、
「小池さん、教えて下さい」
「金子君、またかいな。しっかりせんとあかんよ」
「すみません、頑張ります」
と男性社員からとても慕われている。
しかし、丸顔のポッチャリ体型だから、男から言い寄られることは、まずない。
実は、一度は結婚したのだが、旦那がもっといい女を見つけて出て行ってしまった。
それからは「結婚はもうええ」と独り身を通している。
勿論、女盛りだから、性欲は人一倍ある。
だから、合コンなどで、男を見つけては、セックスを楽しんでいるが、ここ半年は仕事に追われ、セックスレスだ。
今夜もコンビニで買い求めた惣菜を肴にビールを飲んで、簡単に夕食を済ませ、シャワーを浴びたら、することはあれしかない。
戸締まりを確かめ、寝室に籠ると、ベッドサイドテーブルからDVDを取り出し、それをテレビにセットした。
そして、ヘッドホンを付けると、自分だけの世界。
淑江は枕を背もたれにしてベッドに横たわると、リモコンを取って、「開始」のボタンを押した。
「いいだろう?」
「そんなこと、聞かないで……」
「そうか、それじゃあ…ジュル、チュッパ……」
ヘッドホンから聞こえてくる男女の会話と共に、画面には男が女の性器にしゃぶりつく刺激的なシーンが写し出され、直ぐに「あ、あなた、いや、あっ、あ、あああ……」と女が喘ぐ声が耳に響いてきた。
淑江は両手で乳房を揉みしだき、それから右手を股間に伸ばした。
既に気持ちはその映像に入り切っているから、薄い生地を通して、しっとりとした感触が指先に伝わってくる。
(男が欲しい、太くて長いんが……)
枕元のローターを手に取ってスイッチを入れると、それを股間に当てた。
「あんた……」
脳裏に浮かぶ男のペニスが攻めてくる。
「ああ……」と吐息が熱くなり、合わせ目は潤って、パンティはすっかり濡れてしまった。
淑江は腰を浮かせてパンティを脱ぐと、ローターを持ち直し、中指を合わせ目に差し込んだ。
中はもうドロドロになっていた。
関節を曲げて、円を描くように掻き混ぜると、目も眩むような快感が走り、自分を抑えきれなくなってしまう。
「ああっ!ああっ!! あ、あんた……あかん、あかん、そ、そないなことしたら、あかん、あかん……」
他に誰もいないのに、本能的に人に聞かれないようにと、うつ伏せになって顔をベッドに埋めた。
そして、左手で枕を掴かむと、お尻を高く持ち上げ、右手の指の動きに合わせながら腰を動かす。
自分の指なのにまるでペニスを挿入されているような感じがする。
淑江は枕の端を噛んで堪えていたが、とうとう「い、逝く、逝く、逝くぅ……」と叫んでしまった。
気が付くと、自分の性器や指を拭いたティッシュや、愛液の染み込んだパンティがベッドの上に散乱していた。
吉野知子
7月末の金曜日、午後3時。
売上成果を報告する営業会議が始まった。
「アホか、お前は。顔も見たくない。帰れ!」
目標に達しないセールスレディは容赦ない罵声を浴びる。
パワハラなんか関係ない。
「はい、次。吉野さん」
「はい……」
吉野(よしの)知子(ともこ)は小池淑江と同じセールスレディだが、今月の売り上げが目標に遠く及ばず、自然と蚊が鳴くような声になってしまう。
「今月の売り上げは?」
「あ、あの……」
「いくらだ?」
「ぜ、ゼロですが……よ、予約はあります……」
「ゼロ? アホも休み休み言え。予約と言ったって誰のものだ?」
「蓑田さんです」
「蓑田?あのばあさんか?アホか!先月も『年金が入りますから大丈夫です』って言ってたけど、結局、『孫のお祝いに使って、ダメでした』と言ってたばかりじゃないか。寝惚けているのか?」
彼女は36歳、背丈が160センチでスリム。
女優の大塚寧々に似た美人だが、成績が悪ければ、そんなことは関係ない。
「やる気あるのか?」
「は、はい、勿論です……」
「口先だけなら、なんとでも言える。嫌なら辞めてもいいんだぞ」
「そ、そんな……ひ、酷い……」
遠慮ない課長の罵声に涙が零れ落ちるが、実は2ケ月前に失恋してしまい、気持ちは仕事どころではなかった。
「課長、もうええでしょう。知子さんのことは私がサポートしますから」
見かねた淑江が間に入った。
彼女はエネルギッシュで、成績も抜群だから、近藤課長も一目置き、彼女の言うことは無視できない。
「まあ、君がそう言うなら、任せるけど。吉野さん、しっかりしてくれよ」
「はい、分かりました」
「じゃあ、次は横山さんかな?」
ターゲットが別のセールスレディーに移ると、知子は「ふー」と大きなため息をついて、へたり込むように椅子に腰を下ろした。
すると、助けてくれた小池淑江が「お疲れさん」と後ろから背中をツンツンとペンで突いてきた。
「ほんま。ありがとう。助かったあ」
振り向いた知子の顔には涙はなかった。
二人は体型も性格も違うが、深夜まで飲み歩くほどの仲良し。
明日は気晴らしに信州旅行に出掛ける。
だから、もう頭の中から課長の罵声は消えている。
「この借りは長野で返してもらうから」
「ええわよ、お安いご用よ。」
時刻は午後4時を過ぎている。
あと1時間も我慢すれば、この会議も終わり、解放される。
それまでは、椅子に座っていればいい。
ターゲットは逃がさない
盛夏。
「暑いなあ」
「ほんま。大阪と同じや」
小池淑江と吉野知子は長野県長野市の善光寺に来ていた。
じっとしていても汗が出てくる暑さに、人込みは避けたいものだが、ここは違い、本堂地下の「お戒壇巡り」に並ぶ人たちで列ができていた。
「お錠前に触れるかしら?」
「頑張らなくちゃ」
こんな会話が交わされているが、小池淑江は少し前に並ぶ高校生らしい男の子に目をつけていた。
それに気がついた吉野知子が周りの人に分からないように、小池淑江の耳元で「どないするん?」と囁くと、ニヤッと笑って、「まあ見てて」と言うと、「ちょっとすみまへん」とその男の子の後ろに割り込んだ。
そんなことを知らぬ、独りで信州旅行に来ていた高校2年の飯田(いいだ)浩一(こういち)はスマホで「一寸先も見えない暗闇の中を手探りで進み、やがて御本尊様の真下に懸かる『極楽のお錠前』に触れる」を見ていた。
本堂を進み、地下に繋がる階段の前にくると、「足元に気をつけて下さい」と係員が注意を促していた。
そして、そこに降りると、光一つない暗闇の世界。
中からは、「あ、あ、あった!」、「え、どこ?どこなの?私は触れてないわよ……」と運よく錠前に触れた者、触れられなかった者、それぞれが楽しそうな声が聞こえてきたが、淑江は狙いを定めた男の子に後ろから抱き付いていた。
「あ、いや、えっ……」と慌てた彼は振り向こうとしたが、淑江はピタッと体を寄せる。
錠前に触れようが、触れまいが、そんなことはどうでもいい。
「あ、ごめん、堪忍よ……はぐれたら、ここから出られへんから、外に出るまで、つかまらせて」と胸を押し付ける。凹凸は彼にも分かる筈。
(続く)
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