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シェアワイフ-最終話



作家名:雄馬
文字数:約4310文字(第14話)
公開日:2020年10月16日
管理番号:k054


●登場人物
森晴彦(もり はるひこ)二十七歳
山根温行(やまね はるゆき)二十七歳
森明美(もり あけみ)二十七歳
山根裕子(やまね ゆうこ)二十五歳



挿絵の官能小説画像

それから間もなく、あいつは裕子ちゃんとの結婚を宣言したんだった。あんまり突然だったから、いつもの冗談かと思ってフンと鼻で嗤って、さぞかし裕子ちゃんは迷惑そうな白けた顔をしていることだろうと視線を向けると、はにかんでいたから俺は愕然としたんだ。

あのとき俺は山根をぶん殴ってやろうかと思った。明美も知らなくて驚いていたようだが、笑顔で祝福していたな。

その夜、初めて明美と一夜を共にしたんだ。何故だろう。二人で失恋の傷を舐め合ったのか。いや、そんなんじゃない。明美が山根を好きだったとは思えない。友達以上に考えている風には見えなかった。

俺も裕子ちゃんに、それほど踏み込んだ気持ちを抱いていた訳でもなかった気がする。かわいいし、性格も素直で、あわよくばと思わないでもなかったが、まだそこまで深い付き合いではなかったし、気になるという程度だった。

むしろ明美の方が好きだったと思う。ぶん殴ってやりたいと思ったのは、鳶が油揚げをさらって行くように、俺が気に入る傍から女を横取りするように感じたからだ。

しかし裕子ちゃんが現われるまで一年余りあったのに、その間、山根は明美に対して何の積極的行動にも出なかったところをみると、初めから明美と裕子ちゃんに対する気持ちには隔たりが有ったということか。

あいつは明美の乳しか眼中になかったから、そこまで深入りしなかったのかもしれない。明美を軽く見ていたのなら腹立たしい。だけど結婚せずとも乳だけ物にする事も有り得たが、あいつはそれをしなかった。

ただし何も無かったというのは山根が言っているだけで真偽は不明だ。そのあたりの事情を改まって明美に尋ねたことがなかった。今度縛って糺(ただ)してみるか。

まてよ、もしかして山根は俺のために明美を誘っていたのではないのか。明美はあれでなかなかモテたから、野放しにしておけば虫が付いたかもしれないのだ。山根は、気の長いと言うより押しの弱い俺のために、明美を囲い込んでくれていたのではないのか。

すると山根は俺にとってキューピッドということになるが、果たしてあいつがそんな友達思いの親切な男だろうか。あいつは「いい奴」には違いないが、「いい人」とは言い難い。恋愛の手引きなんかするほどセンチメンタルでもない。

もっとも見返り次第でやらないとも限らないが。何れにしろ結果的に俺と明美の仲を取り持つ役目を果たしたのは事実だ。あいつはやっぱり俺と明美にとってキューピッドだ。

それにしても奴はなぜ突然こんなヘンテコな計画を思いついたんだ?言っていた通り、友達として俺を心配してのことか。それなら俺が裕子ちゃんを抱けば済む事で、あいつが明美の乳を吸ったり揉んだりするのは余計な事だ。

もしかすると実は山根は明美が好きだったのに、俺のために涙を呑んで身を引いたとか。ところが明美を思う気持ちが心の底に澱のように溜まって、それが年を追うごとに消えるどころか嵩を増して心に重く圧し掛かかり、どうしようもなくなって今日のこのヘンテコな計画か。

考えられないことだ。あいつは好きな女を人に譲る程お人好しではないし、一人の女の事でいつまでも思い悩むほどデリケートな心臓に養われてはいない。

山根の性格の美醜両面を考え合わせると、あいつは真に親切心から俺の気持ちを慮(おもんばか)って今度の計画を立てた。そしてその対価に明美の乳を求めた、といったところか。いや、むしろ乳がメインで俺はダシか。

巨乳を求める気持ちが澱のように溜まっていたのだろう。これが羽の代わりに尻毛を生やした醜いキューピッドの限界か。しかし奴の狙いが乳だけなら、これからも仲良くやっていけそうだ。

山根は結婚三年目が危ないとか言っていたな。次は五年目かな。その次は七年だろう。二年に一度くらい今度のような気晴らしをすれば、末永く平和に暮らしていけそうだ。

しかし毎年の方が効果は上がるだろう。確実を期すなら半年に一度。可能ならば毎月。気持ち的には毎週末・・・・・・。

「明美、愛してるぞ!あっ、ドーモ、こんにちは。こんばんは」

ああ、びっくりした。夜中でも若い子が働いてるんだな。しかしあの仲居さん、何だか俺の足元を見て行ったようだけど、宿屋の従業員だからって洒落じゃないよな。

あ、しまったスリッパ忘れた。そうだ、山根のを履いて帰ろう。あいつを裸足で帰らせれば辻褄が合う。シンデレラじゃないんだから、履物から足がついても嬉しくない。

おや?帯に妙な物が。げっ!スリッパじゃなかった。トランクス穿くの忘れてた。うまいモンがはみ出てなかっただろうな。大事は小事から顕れるものだ。

明美に勘付かれずに部屋に戻る仕事も残っている。気を引き締めよう。家に着くまでが遠足だ。


「お、戻ったな。バレなかったか」

「うん、大丈夫だ。だけどパンツが何処かにいってしまった」

「森のか」

「いや、裕子ちゃんの」

「部屋にはあるんだろ」


シースルーランジェリー一覧02


「うん。脱がしてしまうと後で探すのが大変だから、太ももに残しておこうと思って、こういう具合にゆっくりと頬ずりするようにズリ下げて、片足だけ抜いたら、顔に押し付けて深く息を吸い込みながら、このように――」

「もういい!人の妻にやらかした破廉恥な行為を、悦に入って身振り手振りで夫に語るな。気分悪いわ。部屋にあるなら問題ない。それより明美ちゃんのパンツを持って来たから戻しといてくれ」

「なんで持って来るんだよ」

「持って来るつもりはなかったんだが、名案が仇になった」

「またダメな名案思いついたんだろう」

「OL風の団体が居たろう。たぶんその一人だと思うが、自販機で何か買ってたんだ。深夜だし、背後を素通りは却って変かと思って『こんばんは』って挨拶したら、振り返るなりスゲー顔して走って行った。

乳の見えそうなタンクトップに、下は短パンだか下着だか分からないような格好だったから、こんな時間に誰にも会わないつもりで出て来たところを見られて驚いたんだろうと俺は思ったよ。でも違った。脱衣所で鏡を見て俺もびっくりした」

「どうした。帯にパンツがぶら下がってたか。俺はさっきそれで仲居さんを脅かしたんだ」

「ハハ、間抜けな奴。俺はかぶってた」

「アホだ」

「かぶらないで覆面みたいにすれば良かった。それなら流石に忘れなかっただろう」

「そうかな。俺はマスク着けたままコーヒーを飲む男を知っている」

「俺か。たしかにずっとしてると覆面式でもうっかりするかもしれん。それじゃあまるで変態だ。やっぱりかぶって正解だった」

「どっちも不正解だ!それにしても見失った下着は何時も自分で身に着けてるんだな」

「うむ。殷鑑(いんかん)遠からずだ」

「でも気がついてくれて良かった。明美のパンツかぶったフルチンの男なんか見たくないからな。だけど大丈夫か?変態が徘徊してますって通報されないか」

「別にパンツかぶって歩くのは犯罪ではない」

「真夜中に女物の下着かぶって人に声を掛けるのは犯罪に近い。今頃盗まれた下着がないか、皆で鞄ひっくり返して大騒ぎしてるんじゃないのか?」

「忘れられない旅の思い出になるだろう。それよりどうだった」

「うん、最高だった」

「それは良かった。俺の方も最高だった。パイズリはさすがに無理かと思ったが、何とかなった」

「やったのか」

「やった。もっとも人がアレをパイズリと認めるかどうかは分からんが。とにかく俺は満足した」

「無慈悲なスペシャル編み出して、無理矢理やったんじゃないだろうな」

「スペシャルと言えばスペシャルか。無慈悲でも無理矢理でもないが。いや、寧ろ慈悲深いパイズリとでも言うべきか」

「何だソレは。やっぱり変な事やったのか」

「俺が何かしたと言うよりは、俺と明美のコラボレーション、かな」

「引っ掛かるな。何やった。それから呼び捨てやめろ」

「聞きたいか。俺と明美の初めての共同作業の顚末を」

「何が初めての共同作業だ。何かトンデモナイ事やったな」

「いや、別に」

「ちきしょう、何やった。言え。事と次第によってはタダでは済まさんぞ」

「聞かない方が、森のためかもしれんぞ。ムフフ」

「何がムフフだ!まさか明美の・・・・・・・・・・・・・。いや、よそう。知らない方がいい事もある。そもそも平和の為の計画だったんだ。わざわざ藪をつついて蛇を出すのは本末転倒というものだ。


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そうだそうだ。今夜の事は、それぞれの胸にしまって墓場まで持って行くことにしよう」

「ちょっと待て。知られると平和が乱れるような事を貴様はしたのか。死ぬまで隠し通さなければならないほど悪逆非道な事を裕子相手にやったのか」

「熱いな。そろそろ戻ろう」

「待てよ。ぬわっ!お前、なにチンポ立ててんだ」

「ん?俺のはいつもこの角度だ」

「そんな角度で日常生活が送れるか。裕子に何をした。一人で回想するんじゃない!」

「何時だ。お、もうこんな時間か。寝とかないと明日運転つらいぞ」

「寝られるか!寝て欲しければ、今お前の頭の中に渦巻いている不埒な光景を、良心に従って、何事もかくさず、何事もつけ加えず、細大漏らさず、丁寧に分かり易く話して聞かせろ。さもないと、明日は俺のロイスが絶叫マシンと化すぞ」

「さてと」

「オイ、話はまだ終わってないぞ」

「もう寝る。先行くぞ」

「コラ!堂々とチンポ立てて出て行くな」


「おい、昨日の話聞かせろよ」

「昨日は最高だった」

「それは聞いたよ。何をどうして、どんな風に最高だったか教えろ。お前は俺と明美ちゃんが開発したパイズリが、どんなものだか知りたくないのか」

「知りたくない」

「どうしたんだ、変だぞ。何があった。まさか、裕子と変な約束したんじゃないだろうな」

「バレなかったって言ったろ」

「それはそうだが、何か俺に言っておかなければならない事が有るんじゃないのか」

「俺は明美を愛している。死が二人を分かつまで、否、死が二人を分かつとも、永遠に愛し続ける」

「何なんだ、それは。それを俺に聞かせてどうするんだ。寒いじゃないか。他に何かあるだろう。裕子のアヌスどうかしたのか?俺のスペシャルやっちゃった?怒らないから言ってごらん」

「山根の裕子ちゃんを愛する気持ちは、裕子ちゃんの肛門の安否に左右されるのか」

「まさか、そんなことはない。裕子の肛門が広がったって塞がったって、俺の気持ちは変わらない。たとえ森が俺のスペシャルをやっちゃったとしても、裕子に対する俺の愛は毫も揺るがない」

「それならいいじゃないか」

「うん・・・・・・ええっ?やっぱり、やっちゃった?」


「じゃあな」

「おぅ、ありがとう。運転気をつけてな。もうすぐだと思うと油断するからな。家に着くまでが遠足だぞ」

「アホか」

「じゃあね、裕子ちゃん。また遊ぼうね」

「べぇ〜」

「べぇ?あっ」



(終わり)





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