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浜辺の君と-後編



作家名:ステファニー
文字数:約4330文字(後編)
公開日:2020年8月2日
管理番号:k047


大手出版社の看板漫画雑誌『週刊少年ジャンボ』の敏腕編集者井崎と、同じ会社に勤めるキャリアウーマンで恋愛に疎い麻宮美香のラブストーリー。



挿絵の官能小説画像

「休日はどんなことしてるの?」
酒が飲めないという美香は、ノンアルコールカクテルの入ったグラスを置いて言った。

「エステ行ったり、ネイルサロン行ったりとかですかね。あとはお洋服を見に行ったり。どうしても海外に出てることが多いので、日本にいる間はゆっくりできることしかしないです」

「へえ、じゃあ、一人で過ごすことが多い感じ?」
「まあ、そうなりますね」

やはりだ。美香に男はいない。
事前に国際部の雪本にも確認はしていた。

彼の予想もやはり同様だった。
デザートを食べ終わり、井崎は会計を済ませた。

その間に美香は口紅を直しに御手洗へと立った。
美香が戻って来ると、二人は連れ立ってエレベーターホールに向かった。

「今日は本当にご馳走様でした。とても美味しかったです」
「そう。喜んでくれて嬉しいよ」

エレベーターに乗り込むと美香は地上階に出るボタンを押そうとした。
井崎はそれを手で制した。

「ちょっと渡したい物があるんだ。部屋、寄ってもらってもいい?」
「そう…ですか。わかりました」

美香は怪訝そうな表情こそ見せたものの、ついてくることに了承してくれた。
エレベーターは井崎があらかじめ押さえておいた部屋がある34階に停車した。

そして当たり前のように二人は降りた。
エレベーターホールを右に曲がり、四つほどドアを過ぎた部屋が井崎の借りた所だった。

「どうぞ、入って」
井崎は鍵を解錠すると、美香に入るよう、促した。美香は当然のようにそれを断った。

「いえ、それはちょっと。私はここで待ちます」
「いいから、入って」

美香の腕を井崎は荒々しく引っ張り、部屋へと引き摺り込んだ。
イヤ、と美香は小さく叫んだ。

ドアがバタンと閉まったのと同時に井崎は美香を玄関脇の壁に叩きつけた。
そしてそのまま唇を奪った。

美香は手に持っていたコートと鞄を落とした。
井崎は美香の唇の先へと舌を侵入させた。

美香は無反応だった。
それでも美香の舌を探した。

美香の胸に服の上から触れた時、井崎は身体が後ろに退かれるのを感じた。
目の前には呼吸の乱れた美香がいた。

「なんですか、いきなり」
美香は鬼の形相で井崎を睨んでいた。

その美香を井崎は抱き寄せた。
「好きだ」

井崎は美香をきつく抱き締めた。
「なんですか、それ。いつから?」

動揺する美香に井崎は丁寧に返答した。
「一目惚れ。あの八月の浜辺で見た時から」

「なんで?」
「綺麗だから。抱きたいと思ったから」

「えっ?」
「やらせて」

「はぁ?」
「だからセックスしたい」

「嫌です。私たち付き合ってないでしょう」
「付き合ってればいいの?じゃあ、今から付き合おう」

「ちょっと考えさせてください。帰ります」
「帰さない。君を抱くまでここから出さない。それぐらい本気なんだ」

井崎は腕の力を一層強めた。
さっきまでもがいていた美香はそれにより動きを止めた。

「わかってくれないかな」
暫しの沈黙があり、美香は力なく無言で頷いた。


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落とした!
井崎は心臓が高鳴るのを感じた。


流れで同意してしまったが、美香は焦っていた。
井崎がどういうつもりで誘い込んでいるのか、全く読めなかった。

こんなことを一度許してしまうと、癖にされてしまうのではないか。
そんなことは御免だった。

ベッドサイドに浅く腰掛け、耳飾りを外しながら、美香はそう考えていた。
対岸では井崎が服を脱ぎ捨てているようだ。

背を向けているため見えないが、金具の音がしているので、ズボンのベルトをいじっているのだろう。
美香はノロノロとセーターを脱いだ。

白いカシミヤ混のラメが入ったお気に入りの一枚だ。
美香は丁寧に畳んで窓際の応接用チェアに掛けた。

「大丈夫?手伝おうか?」
井崎が美香の背中に触れた。

準備が整ったようだ。
「あっ、いえ…」

別に、と美香が言う前に井崎はスカートを下ろしにかかった。
花柄のシフォンスカートがバサリと床に広がった。

矢継ぎ早にピンクのブラとショーツも剥がされた。
どちらも力なく床に転げ落ちた。

「すっげぇ、キレイ…」
井崎により強制的に身体の向きを反転させられた美香を見て、井崎は呟いた。

美香は望んで素肌を見せたわけではないけれど、そう言われると顔が熱くなるのを感じた。
「ずっとこうしたかった。あの夏の日から」

井崎は美香を抱き寄せ、口づけをした。
唇が重なる音がいやらしく暗がりの部屋にこだまする。

乗り気でなかったにも関わらず、美香は胸が高鳴った。
美香の口内に舌を侵入させたのと同時に、井崎は美香をベッドに倒した。

井崎は美香に覆い被さりながらもキスを止めず、美香の舌を攻撃した。
あんなに嫌がっていたはずなのに、肌と肌が触れ合う度に美香の体内には電流が走った。

舌と舌が絡み合う度に、意識が何処かに飛んで行った。
肩に置かれていた井崎の手が下がってきた。

さっきまでは触れられたくないと思っていたのに、今は次に起こることを受け入れていた。
「アッ…」

優しくではあるが、力強く、井崎は美香の胸を揉んだ。
キスも止めていない。

両乳房を同時に回し揉みし、やがて固くなった乳頭に指先が向いた。
「乳首、準備万端だね」

美香は恥ずかしかった。
こんな姿を井崎に見られるなんて想像もしていなかったにも関わらず、身体はしっかり反応していたからだ。

井崎は首筋を舐めながら舌を下ろし、美香の右胸で動きを止めた。
停車したのは桜色をした乳首の上だった。

「イヤ…」
美香はビクッと全身を震わせた。

井崎は右手で美香の左胸を揉み、右胸は唇で吸った。
美香の乳頭を井崎は舌で刺激する。

時には早く、時にはゆっくりと。
するつもりはないはずなのに、身体は本能に従ってしまう。

もはや美香はこれを止めることが出来なかった。
その証拠に太腿が開きつつあった。

井崎は右から左へと乳頭キスを移した。
そして右手を美香の下半身へ這わせた。

「アッ、アアン…」
綺麗に処理されたアンダーヘアの奥に隠れた丸いスイッチを井崎は入れた。
すると美香の胸が上下に揺れた。

井崎は強弱をつけながらクリストスを刺激した。
そのうちにみるみると下から透明な液体が溢れてきた。

「大丈夫、俺、エッチ上手だって言われてるから」
井崎は吸っていた乳首から一旦身体を離し、美香の下半身へ重ねるように移動した。

湿った美香の陰部に指を入れ、入口を確認する。
見つかった。

井崎はすでに振りかざした状態にある木刀を真剣に変えるべく美香の会陰に押し入れた。
「アッ!!イヤッ…、アアアッ…」


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女体独特の温かさが井崎の男根を包む。
久しぶりの感触だった。

過去にも女性経験は豊富にある。
だからこの感覚は何度も味わったことはあるはずだ。

だが、美香のそれは何かが違う。
こんなにも心地のよい、昇天してしまいそうな気分を味わう挿入は初めてだ。

意識がどこか遠いファンタジックな異世界へ飛んで行く。
もはやこの世ではないようにすら感じるのだった。

美香は美人だが、お世辞にも豊満とは言い難い肢体だ。
形は整っているものの胸の大きさは人並みであり、腰は細いため臀部は貧弱だ。

それなのにこの色気はなんだろうか。
桜色の乳首。

丸く上を向いた乳房。
贅肉のほぼないウエスト。

手入れされたアンダーヘア。
ほんのりと花の香りが漂う陰唇。

繋いだ手の先には、細やかな模様が彩られた爪。
全身が抜かりなく磨き上げられているため、女としての価値が高い。

それが美香の色気を作り出しているのだ。
だが、それだけでもまだ理由として足りない。

「アァッ…!!」
悶絶する美香も同じことを思っているのだろうか。

それはわからない。
ただ井崎はしっかりと感じている。

美香の女陰で抽送していると、それだけでパラダイスにいるようなのだ。
美香は不思議な異世界へと井崎を誘う。

間違いない。
井崎と美香の身体はベストマッチなのだ。

「気持ちいい。麻宮さん、いや、美香さん…。イイ…、本当にイイよ…」
井崎は息も絶え絶えにそう言った。

過呼吸になりそうだった。
男根を上下させる度に美香の女陰の生温さが井崎を襲う。

これがたまらなかった。
気を保つために井崎は美香の乳房を咥えた。

美香がまたしても官能の吐息を漏らしたため、井崎は正気でいられなくなった。
「美香さん、…もうすぐ………、いっ……、逝きそう…だよ」

幾度かの突きを経て、井崎はオーガニズムに達した。
美香の女陰から急所を取り出すと、あの独特の臭気が発生した。

その現実を紛らわすように井崎は蒸気した美香の頬を見つめた。
「美香さん、良かったよ。すごく」

井崎がそう言って美香の額に触れた時、美香の瞳から涙が溢れた。
「どうしたの?何かあった?」

「いっ…、いえ…、何でもないです…」
美香はそう言うが、雰囲気から尋常ではない事態が読み取れた。

その時だった。
井崎の太腿にヌルッとした感覚が走ったのだ。

灯りを落としているため、色はわからなかったが、鉄のような匂いが鼻孔をついた。
「美香さん、これ、血?」

「ごめんなさい」
ベッドサイドにあった箱ティッシュから数枚を抜き取り、美香は井崎の太腿を伝う血を拭った。

井崎はその手を止めさせた。
「いいよ、そんなことしなくて」

美香はやはり腹が痛むのだろう。
前のめりになり、自身の身体を抱え込んだ。

「痛いでしょう?横になってていいから」
美香は尚もごめんなさいと言おうとしているようだが、それは言葉にはならなかった。

なんとか美香を落ち着かせてから、井崎は話し出した。
「処女卒業おめでとう」

美香は井崎から顔を背け、肩を震わせ、嗚咽した。
「ごめんなさい…、私…。退きますよね、いい歳して…」

美香は井崎よりふたつ年下だと雪本から聞いていた。
だから今、31歳なのだろう。

「いや、全然」
井崎がそう言うと、美香の震えは止まった。

落ち着いたのを確認してから井崎は美香の肩を引き寄せた。
「もっと知りたいな。美香さんのこと」

「どんなことですか?」
美香は顔を見せずに答えた。

「何でも。行ってた大学のこととか、趣味でもいいし」
「私、女子大です。卒業してから少しイギリスに語学留学して、その後は院に行って、ここに推薦で入社しました」

駆け足だったが、よく美香の経歴と人柄についてわかった。
きっと真面目な人生を送ってきたのだろう。

「仕事は楽しい?」
「はい。ずっとこういう仕事がしたいって、学生の頃から思っていたので、今はすごく充実してます」

「そろそろ結婚したいとか思わないの?」
「あんまり考えたことないです。それより毎日が忙しいので」

「友達は結婚ラッシュとかないの?」
「留学してしまってから、友人とは疎遠になりました。だから結婚式すらも出席したことありません」

井崎は美香の肩をぎゅっと抱いた。
「そっか」

美香の肩の力がすっと抜けた。
どうやら眠気が襲ってきているようだ。

枕元のデジタル時計は煌々と12:45を示している。
眠くなるのも無理はなかった。

井崎も美香を胸に抱いたまま、瞳を閉じた。




(終わり)





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