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アナルファンタジー(3)運命-第2話



作家名:優香
文字数:約3790文字(第2話)
公開日:2020年7月13日
管理番号:k038


挿絵の官能小説画像

「まさか、こんな処で偶然遭うとはね。妻がここで貴方に引き合わせてくれたんだろうね?彼女はここを酷く、気・に・入・っ・て・た・からね。後で貴方達にもご紹介したいね。えーと、沢山話したいんだが、何から話そうか?

ああ、その前に、悠美さん。貴方の素敵な恋人に、貴方の口から、私と、いや、私の妻と貴方の事を、話しておいた方が良いと想うんだがね?あなたの恋人は聡明そうだから、多分理解してくれると想うよ。嫉妬はあるかも知れないけれど、もう過去の話だし」

彼はそう言うと、優しい微笑を湛えたまま、ブランディ グラスを傾けた。

悠美が、何かを決意するように、ブランディを一気に呑み干して私に向き直り、私の手を握り締めた。

「ゆ、優香さん。お、怒らないでね。わ、私っ、こ、この方の奥様っ、ゆ、優香さんも知ってるわよね?すごく有名な人だったから。本名は愛美さんって、その方と愛し合ってたのっ。私、テレビで初めて観て、私と似てるって知ってから彼女の熱烈なファンになってっ、コンサートには必ず行ったし、プロモーションのサイン会やイベントにも、学校サボってでも必ず行ったわ。

ある日のサイン会で、彼女が私にメモをくれたの。携帯電話の番号を書いた・・・。私は電話して彼女と待ち合わせて。そして・・・、ゆ、優香さんとしてるような事、し、したわっ。愛美さんの事、愛するようになって。彼女は、自分の夫、こ、この方にっ、お、教えられたって言ったわ。それから、わ、私を、じ、自分達の、よ、養子にして、ま、毎晩三人で愉しみたいって。

わ、私も、か、彼女を心から、あ、愛してたから、す、少しその気になっていて、で、でも、彼女の病気が発覚して、逢えなくなって、それから、あっと言う間に彼女は亡くなったの。この別荘は私と愛美さんが初めて二人で旅行に来た処なの。その時は有頂天だったし、助手席に座ってただけだったから、余り憶えていなかったけど、さっき急に想い出したの」

悠美は溢れる涙を拭おうともせず、話し続けた。

「ま、愛美さんは、《私が愛している貴方を、私を愛してる夫が愛さないはずはないわ》って、何時も言ってたけど、その頃の、私は、こ、この方に、し、嫉妬していて、私の愛する彼女が、自宅に帰った時は、私にしているような事をされて、悦んでいるんだって想うと、胸が張り裂けそうだったし、その反対に、この方に対して、申し訳ないっていう気持ちもあって。でも、何時か、この方に遭う機会があったら、お詫びしなきゃって、ず、ずっと想ってたの。ゆ、優香さんっ、ご、ごめんなさいっ」

悠美は、そこまで話すと、感極まったように泣きじゃくり、私の首にしがみ付いた。
私は悠美を抱き締め、髪を何度も撫で付けた。

「そ、そうだったの。で、でもね、ゆ、悠美、貴方が私に謝る事なんてないのよ。いいえ、私は逆に、その女性、愛美さんに感謝するわ。こ、この方にもっ。だ、だって、あ、貴方が、愛美さんと愛し合わなければ、貴方と私が出遭う事なんて一生なかったんだって、想わない?

こ、この方が、彼女を愛し、彼女が貴方を愛したから、貴方が私の小説の虜になるような女になったんでしょう?だ、だから、あ、貴方は、わ、私に、あ、謝る必要なんかっ・・」

私は、悠美の誤解を晴らそうと話しているうちに、何故か、彼に対して、悠美の性癖に関しては勿論周知しているだろうが、私の性癖もとっくに理解されているだろう事も、そして、もしかしたら私と悠美は、彼ともそんな性癖を充たし、充たされる関係になるのでは、という予感めいたものさえ感じ始めて、言葉が途切れ途切れになっていた。


「悠美さんもだが、優香さん?と仰るのかな?貴方もやっぱり賢そうだ」
彼はそう言うと、ブランディをまた一口呑んだ。

「私が少し話を付け足すのを許して欲しい」
彼は私と悠美の貌を見て微笑んだ。

多分奥様の事を想い出しているのだろう。
私達の貌を見ながらも、遠い眼をしていた。

「彼女とは、彼女のファースト アルバムのジャケット写真を私が手がける事になってね、被写体として彼女を観た時、彼女が、アイドルには珍しく、本当に“素”を出している事に気付いてね。撮影が終わってから少し時間を貰ってプライベートで話してるうちに、全ての面で想いが共通している事が解ってね。

彼女が私と恋愛し、結婚したのは、私が男性でありながら、女性的な感覚、性癖を持っていたからだ。いや、いわゆるホモ セクシャルではなく、女性の感覚で女性を愛するというニュアンスなんだが。それと、どんなに高貴な人でも上品な人でも、或いは高級な洋服や宝石で着飾っていても、人間は生きてる以上は、精神的には喜怒哀楽があるし、嫉妬もすれば、人を憎んだりもする。

肉体的には、食べるし眠る。勿論性的に熟すればセックスするし、セックスすれば快感も求める。そのセックスも種々様々だがね。また生理的には排泄するし、鼻毛も伸びるし、目やにも耳垢も鼻糞も出来る。日本の道徳教育や倫理観とは、そうした人間の生理を隠すものだったんだね。

おれは、真に女性を愛するとは、そうした生理さえも受け入れるべきだと想ってるし、愛すべき女性には、愛しているなら、愛して欲しいなら、それを隠さないで欲しいと想ってる。という話をしたら、驚いた事に、彼女も若くして、同じ考えをしていたんだ。奇しくも彼女が私に尋ねた。


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《ウンチしている私も愛してくれますか?鼻くそをほじってる私も愛してくれますか?》私は、もしそれが本当なら人生を共にするのは彼女しか有り得ないと決めた。その夜私達は愛し合い、お互い心身共に認め合って、私達は人生を共にしようと誓った。それから少しして、彼女は未だ短大生だった悠美さんと知り合った。

貴方と初めて愛し合った日の夜、彼女は私とのセックスでも本当に燃えた。それ以来、私とセックスしながら、必ず貴方とどんな風に愛し合ったかを話してくれた。そして貴方と愛し合っている様を私に語る事で彼女は驚く程昂まっていたんだ。私が彼女の女性器やお尻を軽く愛撫するだけでイッてしまう程にね。

そして私に愛撫されながら、貴方と二人で愛撫されているようだとも言った。イク時私の名前と貴方の名前を同時に叫ぶ事もしばしばだった。私はそれが決して嫌ではなかった。妻が悦んでくれるのが私の悦びでもあったからね。良く私とセックスしている最中に貴方に電話をして、オナニーしている貴方と一緒にエクスタシーを極めるのが無上の悦びであったみたいだしね」

《電話で、悠美がオナニーをしてイッて。愛美さんが彼とセックスしてイッて!》

それで、先程彼は「電話で愉・し・ん・で・るのを聴いていた」と。
彼は未だ視点を定めないまま、ずっと遠くを見ながら語った。

誠実そうで、一言一言言葉を選びながら、奥様を今でも心から愛しているのが伺える、そんな語り口調だった。

「私は貴方に嫉妬した事は一度もなかったと言えば嘘になるかも知れないが、私はそれよりも彼女と貴方が愛し合う事にある種の悦びがあった。さっきも言ったように、貴方と愛し合う事で、彼女がどれだけ昂まっているかを知ったからだ。そして彼女は口癖のように言い始めた。

三人で暮らして毎朝、毎晩愛し合えたらどんなに素敵だろうって。そして私も次第に本気でそう考えるようになり、彼女を愛するのと同じくらい貴方を愛せるだろうと感じていた。いや、もうその頃には貴方を愛していた、と、多分想う」

悠美は私にすがり付いて私の手を握り締めたまま、彼の話を聴きながら時折、びくっと身体を震わせた。

「そんな時、妻の病気が発覚した。妻は入院生活を送るようになり、貴方に逢えなくなった。それが一番の苦痛だと洩らしていた。貴方に逢いたがったが、マスコミが何時もいたから、貴方に迷惑が掛かる事を恐れてね。それを一番悔しがってた。自分が普通の女だったら、貴方に何時でも逢えるのにと。

死期の近づいた妻が最後まで言い続けていた言葉がある。貴方は信じてくれるだろうか?つまり、私の口から言うのもおかしいかも知れないが、その、私と貴方が愛し合ってくれるようになれば、良い・・・と」

瞬間、悠美の身体が大きく痙攣した。
話し始めてからずっと遠くを見ていた彼が、悠美の貌に視線を移した。

私は言葉を失っていた。
いや、今私が何かを言うべきではないだろう。

「わ、私は、この人、優香さんを、こ、心から、あ、愛しています」
しばらくの沈黙を破って、悠美が口を開いた。


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「あ、貴方の言葉は、し、信じます。か、彼女を愛した貴方が、彼女に愛された貴方が、わ、私に嘘を言うとも想わない。私も、ほ、本当は、彼女が望んだように、あ、貴方方と一緒に暮らして、さ、三人で、あ、愛し合えたら、そ、それは、ど、どんなに素敵な事か、って、想う時もありました」

静かに語りながら私に抱き着いた悠美の身体はずっと震え続けていた。

彼女は思い切ったように、テーブルの上に置いていたブランディ グラスを手に取ると、一気に呑み干した。

「今、想ってる事を正直に言います。か、愛美さんの願いを叶えてあげたい。あ、貴方と、あ、愛し合う事を拒む気持ちはありません。あ、貴方が、彼女から聴いて、わ、私を、あ、愛するようになったと、お、仰るように、わ、私も、い、何時か、か、彼女を通して、あ、貴方を、あ、愛するようになっていました」

私は、驚いて悠美の貌を見た。



(続く)





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