詩織の冒険・リベンジ-最終話
作家名:キラ琥珀
文字数:約3390文字(第6話)
公開日:2020年6月28日
管理番号:k035
勝呂に恥ずかしい写真を撮られた時、詩織が真っ先に心配したのは、ネットで拡散することであった。
だが、勝呂の話では、スマホの本体に入っているだけであった。
それならどうにでもなる。
詩織はリベンジの計画を立てた。
二階堂からプロトタイプ・Xのチップを借り、それをスマホにセットした。
これで、他のスマホとペアリング出来るのである。
もちろんこれは非合法である。
二階堂の会社は、製品開発の参考として持っていたのだ。
社外に出さなければ合法なのだ。
詩織は、昨日、会社の部屋で勝呂にスマホを出させて、そのときにペアリングした。
家に帰ってから、勝呂のスマホの中身を分析した。
そして、先程、勝呂のスマホから自分の写真を消し、幼児ポルノの写真を3千枚入れたのである。
なお、幼児ポルノの写真は、裏ネットで見つけたものである。
詩織の腕ならば、たやすいことであった。
もちろん、こうしたことを勝呂に説明するつもりはない。
「これ、詩織の仕業だな」
詩織は、マフィアの殺し屋ですらビビるような表情で、勝呂をみた。
トートバッグから書類の束を出し、勝呂の前に投げた。
「なんだ、これ」
「幼児ポルノは、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金、だったかな? でもさぁ、会社の金の横領だと、それくらいじゃ済まないぜ」
「え?」
勝呂は、書類を取り上げて、見た。
それは会社の帳簿であった。
「あんた、会社の金をごまかしていたね」
「……」
「関連会社へ架空契約。すごく初歩的な手口ね。私にも分かったわ」
「どうして、これを……」
「あの部屋のノートパソコンが、WiFiで経理室のコンピュータに繋がっていたでしょう。それで調べてみたの」
「ちくしょう……あれ、おかしいぞ……」
「分かった? ゼロを二つ増やしておいたの」
「ちくしょう、ちくしょう……あれ……」
「そう。薬品の横流しも加えておいたわ。アンフェタミン系の薬が消えている。暴力団へ行ったのかなぁ……」
「……」
「今度の棚卸で、確実に分かるわね。そうしたら、どうなる?」
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう」
「ワイドショーに出るわね。〈無能な会社員が、横領、覚醒剤を横流し〉なあんてね」
「この野郎……」
「おっと、暴力はなしよ。念のために、この部屋にはカメラを仕掛けたの。それに……」
詩織は、自分のスマホを取り上げた。
「アラートボタンで、三十秒でボーイさんが駆けつけてくるわ」
勝呂は、覚悟を決めたようであった。
「分かった。詩織、謝るよ」
「あんた、会社員のくせに言葉の使い方を知らないの?」
「は?」
「呼び捨てかよ」
「詩織……詩織さん」
「違う」
「……詩織さま」
「違う。女王さまとお呼び」
詩織は、仁王立ちになりガウンを脱いだ。
彼女が身に着けていたのは、エナメル素材の黒いコルセットとTバックであった。
どちらもレースアップのタイプである。
それにガーターベルトに網タイツ。
色は、すべて黒。
ネットで注文して購入したものである。
勝呂は、愕然とし、そして蒼白となった。
「あっ、ひっ、うわっ、ひゃぁ」
わけの分からない声を出した。
詩織は、ネズミを前にしたネコの声を出した。
「謝りな」
「詩織……いや、その……女王様、この度は……」
「態度が悪い」
「は、はい」
勝呂は土下座した。
「わたくしが悪うございました」
「態度が悪い」
「はい?」
「女王を前にして、洋服を着ているなんて、無礼であろう」
「まさか……」
「脱げよ」
「は、はい」
勝呂は、立ち上がり、洋服を脱ぎ始めた。
半分、ベソをかいている。
「あ、あのう……」
「なんだよ」
「パンツもですか?」
「当り前だろう。スッポンポン」
勝呂は、全裸になった。
両手で前を隠しながら立っている。
「手をどかしな」
詩織は、トートバックからムチを取り出した。
スクウェアタイプの乗馬ムチである。
グラフファイバー製で先端は皮で出来ている。
オアソビ用の、シリコン製のヤワなものではないのだ。
詩織は、ムチでオ珍珍をピタピタと叩いた。
「ちっちゃいねぇ」
「……」
ムチを振った。
ピシ。
「ヒっ」
勝呂は悲鳴を上げた。
ピシ。
「痛っ」
ピシ。
「痛いよぅ」
詩織は、ソファに座って、言った。
「はい、それじゃぁ、お詫びの言葉のやりなおし」
勝呂は、また土下座して、声を振り絞った。
「この度は……わたくしが悪うございました」
「だから?」
「はい?」
詩織は、両足を勝呂の背中に乗せた。
「悪いと思っているんだろう?」
「はい」
「それなら、態度で示してもらおうじゃないか」
「つまり?」
「つまり、テメエは、女王の奴隷になるんだよ」
「そ、そんな……」
「るせ――」
「でも……」
「それとも、なにか? 幼児ポルノをワイドショーに持っていくか? 横領とヤクを警察にチクるか?」
「そ、そんな……」
「分かったな?」
「は、はい」
詩織は、トートバックから首輪を出して、勝呂の前に投げた。
「それをつけな」
「これ……首輪……」
「そうだよ。奴隷の犬だから、首輪をつけなきゃね」
勝呂は、泣きながら首輪をつけた。
「よし、じゃぁ、部屋の中をお散歩しな」
「は、はい」
「なに?」
「はっ?」
「なんて言った?」
「だから……はい、と……」
「……」
「あのう……どこか間違っておりますでしょうか?」
「テメエは犬なんだぜ」
「はあ? あっ、分かりました」
「分かったな?」
「はい、じゃなかった、ワン」
勝呂は、四つん這いになって部屋中を歩き回った。
詩織は、立ち上がり、彼の後ろについて歩いた。
「ほら、もっとしっかり歩け」
ピシ。
「ワン」
「声が小さい」
ピシ。
「ワン、ワン」
ピシ。
ピシ。
ピシ。
詩織は、冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出すと、ソファに戻って座った。
「おい、こっちへ来い」
「ワン、ワン」
「よし、そこだ。そのまま動くな」
勝呂は、詩織の前で四つん這いになったままである。
詩織が、彼の背中に足を乗せた。
そのまま、ビールを飲み、フライド・チキンを食べた。
「これ、新茜が丘駅の商店街のヤツだろう?」
「ワン」
「けっこう美味いんだよな」
「……」
「あれ、オマエ、どこを見ている」
勝呂は、詩織の目の前で四つん這いなのである。
詩織の両足が肩にかかっている。
つまり、彼の目の前には詩織の淫裂があるのだ。
「テメェ、見たな」
「そ、そう言われても……。目の前にありますから……」
「ヤカマシイ! 立て」
勝呂は直立不動になった。
肉棒も直立している。
「おい、それ、なんだ」
「……」
詩織がムチで叩いた。
ピシ。
「勝手に勃起しやがって」
ピシ。
「そんなもの、見たくねぇ。下着を着けろ」
「は、はい」
「なに?」
「いえ、その……ワン、ワン」
勝呂は、脱ぎ捨ててあったパンツを掴もうとした。
「それじゃないよ」
「はぁ?」
「あれだ」
詩織は、ムチで化粧台の机を指した。
そこには、スーパーで買ったブラジャーとパンティが置いてあった。
最初の計画では、ネットで売っているエロティックなランジェリーを着せるつもりだったのだ。
だが、ゲス野郎には勿体ない。
それで、スーパーで安い下着を買ったのである。
勝呂は、四つん這いになって化粧台へ行った。
ブラジャーとパンティを身につける。
そして、四つん這いでソファに戻ってきた。
「よし、次は、これだ」
詩織はトートバックから太い鎖を取り出した。
勝呂は観念して、鎖を首輪につけた。
「よし、よし、いい子だ」
詩織は鎖の端をテーブルの脚に固定した。
詩織は、ムチを叩いて命令した。
「お座り」
ピシ。
「お廻り」
ピシ。
「おちんちん」
ピシ。
「お座り」
ピシ。
「なんか、喉が渇いたなぁ」
詩織は電話を取り上げた。
「ルームサービスですか? はい……ええと、ウイスキーと、ハムの盛り合わせ……そう、それでお願いします」
詩織はテレビをつけた。
メニューを調べ、オンデマンドで『007 スペクター』を見始めた。
何度も見た映画ではある。
だが、夫のいるロンドンが出てくるので、なにか懐かしいのだ。
勝呂もバカではない。
あることを考えて、そわそわした。
だが、お座りしたままである。
動けば、またムチが飛んでくるであろう。
ちょうどジェイムズ・ボンドがMの部屋から出てくる場面のとき、チャイムが鳴った。
「はあい」
詩織は、立ち上がり、ドアへ行こうとして、止まった。
「おっと、この恰好じゃまずいな」
ガウンを羽織った。
そして、ドアへ行こうとしたとき……。
「あ、あのう……」
「なんだよ?」
「わ、私は……」
「そのまま座っていなよ」
「でも、この恰好を見られたら……」
「知るか」
詩織はドアを開けた。
勝呂の悲鳴が部屋に満ちた。
(終わり)
※本サイト内の全てのページの画像および文章の無断複製・無断転載・無断引用などは固くお断りします。
メインカテゴリーから選ぶ