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被虐の目覚め〜快楽責めに堕ちる人妻〜-1話



作家名:影山有佐義
文字数:約4500文字(第1話)
公開日:2020年5月30日
管理番号:k031


挿絵の官能小説画像


大原咲奈(さな)はガラガラの電車で、マスクの中に深いため息をついた。
これもコロナ渦の一つに違いない。

社長の前田譲吉からの電話がかかってきたのは昼のことだった。
「君に荷物が届いている」

咲奈はインターネットで注文しておいた物を思い出して青ざめたのだった。

「あっ、すみません。今日、会社が臨時休業になったことを忘れてしまっていて」
「困るな、私物を会社で受け取るなんて」

「申し訳ございません。あの、そのまま私のデスクに置いていただけますか」

「いや、今日中に取りに来てくれないと困るね」
「わかりました。必ず本日伺います」

受け取りが社長の前田ならすぐにでも取りにいかねばならない。
咲奈がインターネットで注文したのはアダルトグッズだった。


夫の健一郎とは、ここ一年間セックスしてない。
お互い、まだ30歳前なのに健一郎の性欲は衰えてしまっている。

結婚して数年間は、ほぼ毎日同じベッドで育んできた愛だったが、一向に子供を授からなかった。
あきらめの気持ちが大きくなるのに比例して回数は減っていった。

そして、たまのセックスにも健一郎は避妊具を着けるようになった。
もう、子供は必要ないという意思表示だろう。

やがて健一郎は性欲もなくなり、今では別室で寝るようになった。
そんな夫に咲奈も興味を全くなくしていた。


咲奈は生理前に旺盛になる性欲を自慰で抑え込むしかなかった。
インターネットで官能小説を読むうちにアダルトグッズを知り、注文したのだった。

その配達先を会社にしたのまでは良かったが、うっかりコロナによる休業を忘れてしまっていたのだ。


咲奈は社長の譲吉が大嫌いだった。
60歳を過ぎた初老で背は低いが、眉の太さやギョロリとした目、横幅の大きな体と、顔から体のつくりが全て大きい感じの男だった。

咲奈をことのほかお気に入りで、その日の服装やプライベートなことにも口出ししてきた。
会社の飲み会では、必ず咲奈を隣に座らせ酌をさせるのだった。

社内でいらぬ噂をたてられたのも、一度や二度ではない。
小さな会社なのでセクハラを訴えることもできなかった。


本来だったら会社で荷を受け取って、さっさとロッカーにしまい込み自宅に持ち帰るつもりだった。

譲吉から荷を受けとったら、早々に帰宅するつもりで咲奈は家を出た。


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閑散とした商店街を抜け、小さなオフィスビルに入る。
咲奈は倉庫運営をする会社の事務を担当していた。

カードキーで解除して3階の事務所にあがった。

無数に並ぶデスクはがらんとしていた。
社長の譲吉は一番奥の社長室にいるはずだ。

ノックをすると譲吉のしわがれた声が応えた。
「申し訳ございませんでした。大原です」

ドアを開けると正面に譲吉が大きなデスクに座っていた。

「今回、このような私物を会社受け取りにしてしまって、申し訳ございませんでした」
咲奈は譲吉とのやり取りをなるべく少なくするよう下手にでた。

「荷物の中身は何かね」
「はい、化粧品です」

譲吉のねちっこい性格なら中身を聞いてくるだろうと、あらかじめ想定していた。

「ほう、化粧品かね」
「はい……。あの、荷物いただけますか」
「ふむ」

机に小箱が置かれた。
受け取ろうと手を伸ばした咲奈が固まった。

当然あるはずの包装紙がない。むき出しの小箱が机の上に置かれているのだ。

「随分変わった形の化粧品だね」
「な、中身、見たのですか」

「ああ、最近は君のような美人に変な物を送り付ける不届き者がいるからね」
譲吉が分厚い唇を湿らせた。

「ああ、そ、そうです。私の物に間違いありません。それ、か、返してください」

「君、これはローターじゃないか」
譲吉が口角を上げてニヤリと嗤った。

「ロ、ローターって、何ですか」
「何をうろたえているのだね」

「ち、違います! いえ、やっぱりそれ、私のじゃない!」

「さっき、私の物に違いない、と言ったじゃないか」
真っ赤に顔色を変えた咲奈はワナワナと震えだした。

「ほら、これだろ」
譲吉はポケットからローターを出して、コードから下がる楕円をブラブラと揺らした。

すでに、小箱から中身を出して自分のポケットに入れておいたらしい。

「ひっ、ひっ、で、でも違う!」
狼狽する咲奈を楽しむように見ながら譲吉が嗤う。

「中の送り状には、君の家の住所と電話番号が書いてあったぞ」
「うっ、うっ」

ブブブブブッ

「ひぃいいいっ」
譲吉によって発動されたローターは思ったより大きな音がした。
「これは、かなり強力だね。君、これ使ったことあるのかね」

もう、隠しおおせないと観念した咲奈は真っ赤に顔を染めたまま俯いた。

「咲奈、安心しろ。これは、ワシと咲奈の秘密にしてやる」
酔った時に譲吉は咲奈を名前で呼び捨てする。

そういう時は、下心がある時だと咲奈は知っている。

「素直に答えてごらん。こうしたアダルトグッズは使ったことあるのかね」
「いえ、今回が……、初めてです」

消え入りそうな小さな声で答えた。
「おおっ、そうか、咲奈。いい子だ、ちゃんと答えられて」

こんな状況でも、褒められて咲奈は少し気が緩んだ。
「旦那さんは知っているのかね」

「いえ、知りません」
真面目に答えてしまった咲奈は、墓穴を掘ったことすら気が付かなかった。

「それは、旦那さんに知られては困るはずだ。だから、会社で受け取るつもりだったのだね」
「はい、そうです」

「旦那さんにも誰にも知られたくないだろ」
いきなり脅しの矛先が向けられて咲奈は目を見開いた。

舌なめずりした譲吉が言った。
「大丈夫だ、咲奈。さっきも言った通り、これは咲奈と私だけの秘密だ」

咲奈はブラとショーツだけの姿で譲吉の前に立たされていた。

「下着だけになりなさい」と言われた時、咲奈は頑なに拒んだ。
だが、「自宅にいる旦那さんに連絡してもいいかね」と言われて、従わざるを得なかった。

グレーがかったフルカップのブラとビキニショーツの組み合わせは、日ごろジムに通ってしっかりとワークアウトしている咲奈を際立たせていた。

サンダルを履いた足首は締まり、そこから延びる、ふくろはぎから腿まではアスリートのようだった。

薄く脂質が乗ったヒップからくびれたウエストまでのラインは女性には憧れであり、男性には情欲をそそるシルエットだった。
顔も体も、まだまだ20代前半を思わせる健康美だった。

応接用のボックスシートを引っ張り出し、足を組んだ譲吉は立ちつく咲奈を満足そうに見ている。

「思った以上に綺麗だ。そのまま後ろを向きなさい」
「ああ……」

絶望的な気分のまま、咲奈は後ろ向きになった。
夫の健一郎にすっかり興味を無くした咲奈は、いつか現れるかもしれぬ白馬の王子のためにボディメイクをしてきたのだ。

それが、こともあろうに大嫌いな譲吉に晒すことになるとは夢にも思わなかった。

「やや小ぶりな尻だが、その上がり具合は素晴らしい。旦那の目は節穴だな」
譲吉は興奮を抑えきれず賛美の声が大きくなっている。

奈落の底に落とされた気分の咲奈には、いくら称賛されても譲吉の言葉は心に響かなかった。

「旦那はこんなに綺麗な妻を寂しがらせるなんてどうかしているな。セックスはしてないのか」
デリケートなプライベートまで、遠慮なくずけずけはいってくるのが譲吉の常だ。

「……」
「最近、セックスしたのは何時だね?」
下を向いたまま咲奈は答える気もしなかった。

ブブブブブッ

「ひっ」
咲奈がびっくりして顔をあげると、譲吉がローターのスイッチを入れてブラブラ揺すっている。

「こんなものを使わなきゃならないくらいに寂しかったのかね、咲奈」
「こ、怖い!」

「怖くなんかないよ。ほら、答えてごらん。最後にしたのは何時だい」

咲奈が答えあぐねる姿を見て、譲吉が立ち上がった。
「さあ、答えるんだ」

「いっ、いつだったか、お、覚えていません」
「覚えてないほど、してないのかね」

譲吉がローターをユラユラさせながら、咲奈に近寄ってくる。

「そ、そうです! 覚えてないほど、い、いえ、もう一年くらい、していません」
「そうか、一年もしてないのか。それじゃ、私が咲奈を慰めてやろうじゃないか」

「い、いっ、いっ、いえっ! 結構です」
目の前の譲吉がニンマリと嗤った。

「使い方だって、解らんだろう。ほれ」
コントローラーをズボンのポケットに入れて、振動するピンクの楕円を太い指で摘まんで咲奈の首筋に当てる。

「ひいいっ、やめてください!」
「こんなに可愛い咲奈を放っておくなんて、いけない旦那だな」

首筋から胸元までローターを滑らす。
「あああっ、だ、ダメです!」

「怖がることないよ。ほら、ゆっくり、ゆっくりするからね」


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ローターを左右のカップの裾野を、8の字を描くように滑らせている。
「咲奈、ローターの振動に集中するんだ。ほら、ローターは今どこにいるんだい?」

「うううっ、しないでください」
「答えなさい咲奈。今は左のカップの下だろ」

カップの左上からスタートしたローターは、今、左下に移動している。

「ほら、こんどはどこにいる?」
「み、右です」
「右のどこ?」

「今、右の下です」
「そうだ。ほら、じょじょにローターが8の字を描きながら頂上めざしているのがわかるかい」

「ひっ、ちょ、頂点」
「そうだ。頂点には何があるのかな、咲奈」

ブブブブッ

振動するカップに乳首が反応して、すでに痛いほど勃起している。
「ほら、咲奈。もうすぐ登頂するぞ。少し振動を強めにしてやろう」

バブブブブブッ! 

ポケットからコントローラーを出した譲吉が振動調節レバーのツマミを回した。

「あっ、ああっ! くぅっ!」
「ほらほら頂点がカチカチになっちゃっているぞ」

カップ越しの乳首の周りを8の字を描いていたローターが、左右の乳首の往復に変わった。

「あっ! ダメ! ダメええええっ!」
口を手で覆った咲奈が背中をそらせた。慌てた譲吉が咲奈の背中を支えた。

ビクビクと体を震わせている咲奈を見て、譲吉が嗤った。
「これはびっくりだな。ローターをブラに当て込んだだけでイクとはな」

咲奈はどうしてこうなったのか分からなかった。
もともと感度は良いほうだとは思っていたが、まさか嫌いな譲吉にブラ越しの乳首を刺激されただけで達するとは信じたくない。

「乳首が敏感なのだね。いいぞ、加奈」
「うっ、うううっ……」

ショックが隠せない咲奈を再び譲吉が責め始めた。

「ちょっと、ローターの刺激が強すぎたね。よしよし、少し弱くしてやろう」
ローターを調整し直した譲吉が再びカップ越しの乳首を脅かす。片方の乳首にローターを当てたまま、もう片方を指で摘み上げている。

「ほ〜ら、こんなに立っている。コリコリしちゃうぞ、ほりほり」
「あっ、あっ、あっ! ダメっ!」

「ほら、今度はこっちをコリコリ」
ローターと摘まむ指を左右入れ替えて、刺激のバリエーションを変えていく。

「はうっ、はあああっ!」
「指でコリコリされるのとローターでグリグリされるの、どっちがいいかい」

ローターが執拗に乳首を掘り起こしている。

ブーンブブブブッ!

「ひいっ! イク、またイッちゃう!」
仰け反りかえった咲奈を支えながら譲吉が声をあげて嗤った。

その嘲笑を浴びせられながら咲奈は、今までにない欲情を感じていた。

逃げ場のない状況に追い込まれ、支配される被虐の性に目覚めたことを咲奈は、まだ理解できていなかった。




(続く)





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