人妻順子 虜の悦楽 開発篇-2話
作家名:邪道
文字数:約4970文字(第2話)
公開日:2020年3月22日
管理番号:k024
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<第四夜>黒幕が見せる淫らな爪
帰り際―――。誠が手土産に渡そうとしていた、舶来品の煙草の箱を取りに席を外した時だ。
「順子ちゃん、覚えているよね。あの日のことを、さ」
「な、何のことでしょう…覚えていません」
嘘も下手な素直な性格の順子は狼狽を隠せない。
あの日のこと―――。
すなわち、この男の魔手に堕ち、卑猥な動画を撮影されたあの時のことを意味することは、察しがついた。
「実はさ、順子ちゃん」
背筋に寒気を感じるような声音と、粘着質な目つきに狼狽する順子。
が、松宮はかつて毒牙に掛けた獲物を再び追い詰めるように、それでいて囁くようにさらりと言う。
「今日は嬉しかったよ。ご主人との旧交を温めたついでに、君とのお付き合いも再開させたいな」
「な、何をおっしゃるんですッ?」
気色ばむ順子。
「わかっているはずだよ、順子ちゃん。君の知られたくない姿の映像は、いまだ僕の手中にあるんだから…」
順子は顔面蒼白のまま、言葉を失う。
「世間にそれが公開されたら、君も誠君も立場がなくなるよねぇ…僕は逮捕されたけど、別にわいせつ動画や脅迫で逮捕されたわけじゃない。君の返事次第では、その画像を使ってまた僕は商売を始めるよ」
まさか、そんな昔の恥部を彼が握っているとは―――。
(あれは6年も前の事になるんだわ…)
順子は記憶を呼び戻す―――。
大学の卒業を間近に控えた順子は、一足先に就職した誠からプロポーズを受け、その答えこそは決まっていたものの、どう返事をするかに迷いもあった時期だ。
誠の同級生も就職し、新社会人として忙しく、彼女のネットワークの中では、誠との関係を知りえ、そして彼の心情を察しているであろう相談相手は少なかった。
前科のついた今にしてみれば想像もつかないことだが、マスコミ業界に精通した気さくさをコミュニケーション能力に長けているように錯覚し、誠も尊敬していた松宮を頼ってしまったのは、順子の若気の至りだったかもしれない。
順子は無論相手の下心を見抜けなかった。
彼に誘われるがままに、『純喫茶』なる古風な店でドリンクを少々飲み交わすうち、順子は呂律が回らなくなった。
肉体の自由が利かなくなり、やがて視覚、聴覚すべてが渦を巻きながら、遠のいていくような錯覚に陥った。
ありきたりな罠に嵌ったわけだ。
気が付いた時は後の祭り。
レイプなどよりはるかに屈辱的な仕打ちが順子を待っていた。
それは、まさにあの淫夢でみたとおり、だった。
意識を取り戻した時の、気怠さ。
それを一瞬で打ち消す全裸に剥かれ、X字に磔板に拘束された肉体を認識した時の恥辱感と恐怖。
身悶え捩るたび、手首足首に食い込むベルト式拘束具の感触、
軋む磔台。
悪夢のような監禁劇を体験した順子だが、自慰行為を強要されその姿をビデオに収められた時の恥辱を終生忘れることはないだろう。
忘れえぬ心の傷。
しかしそれは消えぬ心の痛みを残したことは言うまでもないが、同時に密かで甘美な刺激を、性感という秘めたる女芯に刻み込む体験であったことも、認めざるを得ない事実だった。
時折、思い出したように順子を苛む淫夢。
まるで古傷が痛むかのように。
その調教主が再び目の前に現れた今、順子の心は波立った。
<第五夜>またも調教主の魔手に堕ちた人妻順子
数日後の夕暮れ時、新宿のとあるコーヒーバーで、順子は松宮の呼び出しに応じていた。
立ち飲みもできるレトロムードの小洒落た店で、弱みを握られた人妻との密談には不似合いな場だが、順子の心に付け入るスキを与えるための罠であることは、彼女にも察しがつく。
が、夫に内密と念を押された呼び出しに応じ、指定の店に入り、彼のオーダーした特注の仕込み焙煎珈琲を唇に運んでしまう…。
己の気の弱さや、男性のリードに身を委ねやすい女としての性質を改めて自覚する順子だ。
こうも松宮にリードをされてしまった以上、順子に海千山千の黒幕との交渉に勝つ術などあろうはずはなかった。
今後の連絡にと、携帯番号、メアドは無論、ラインのアドレスを交換させられ、じわじわと松宮は順子の身を我が物とする準備を進めてくる。
「それでさ、順子ちゃん…」
微かにグレーがかった眼鏡の奥で、本題に入りかける松宮。
しかし、順子は既に精神的には完全に彼に屈服させられ、虜同然だったといっていい。
無論、憧れでも行為でもなく、この男の捕虜、奴隷という意味で、だが。
「あの動画を…まだ持っているんですか」
「無論だよ。無様に素っ裸でSMチックな磔板に拘束された君が、熟々に濡れまくりのアソコに、極太の人造ご神体を奉納され、振動された途端オーガズムに達し…。ククク、バージンみたいなイキ貌を晒した映像は、僕の『素人美女強制オナニーアーカイブ』にキッチリ保存されているよ」
松宮は卑猥なキーワードを織り交ぜつつ、順子を嬲るように見つめてくる。
「ど、どうして…松宮さん、あなた逮捕されて改心したんじゃないんですか? …そんな猥褻動画も警察に取り上げられたはずでしょ?」
善良な市民である順子は、泣きべそをかきそうな表情で松宮を、それでも気丈に見返した。
「そんなヘマはしないさ。僕はあくまでも傷害罪で服役しただけで、『本業』の裏動画製造は手入れされなかったからな。インディーズAVを作っている仲間の協力もあって、秘密裏に地下で活動しているから、それまで撮りためた数々の女たちの痴態を失わずに済んだわけさ。出所してからの飯のタネにもなるし、ね」
夫、誠は知る由もなかろうと順子は推察しているが、松宮の本業はAV制作会社のオーナーだ。
それも単なる正統派のアダルトモノではなく、盗撮モノ、また素人女を騙しては自慰行為を強要し撮影する、SMラブホに連れ込みいきなり本格調教をする、といった犯罪行為同然の変態企画モノばかりだ。
その餌食となった過去を持つ順子としては、その際の動画が松宮の手にいまだ存在することが、順子の恥辱心を刺激し続ける。
「実はね、順子ちゃん。僕は会員制アダルト動画サイトを運営しているんだが…これがなかなか評判でね。質のいい顧客に恵まれている」
さらに順子の動悸が高鳴る。
「ま、まさか…私の…あんな…卑猥な姿を…」
「フフフフ、安心しなさい、アップはしていないさ、今のところは、ね。が、僕の見立てでは過去に撮影した数多くの女の中でも、君はなかなかマニア受けするタイプだよ。何せ、5年前の君は田舎の純情娘めいていて、どこか男心を刺激するというか、支配欲をそそるというか…。今はそれに人妻の貫禄と母性が備わったからね。愛する男に磨き上げられて、あのぽっちゃり感のあるムチリとした裸体も今は、成熟した小熟女の肉体へと変貌を遂げているのだろうからねぇ」
白いブラウスの下で蠢く、その地味な性格からは想像もつかないナイスバディに、絡みつくような邪な視線を感じ、順子は全身を火照らせる。
それは怒りや屈辱以外の、複雑で淫靡な感情の伴うものだった。
「そこでさ」
と、松宮は切り出す。
「6年前の初々しい君の濡れ場の存在を秘匿する代わりに、今の女の色香に満ち満ちた君の姿を、会員限定で公開させてほしいんだよ」
「そ、そんな…いやです」
蚊の鳴くような声音で俯く順子。
しかし、過去の恥辱体験を盾に取られては、抗う術がないことは順子にも察しが付く。
「会員限定サイトならば、バレる確率は下がるし、秘密は厳守される。もちろん匿名にしてあげよう。断れば…ご主人の学校に、君の動画を送り付けるっていうのもアリだな」
「そ、そんな…」
粘着質な脅迫を続ける松宮。
「警察になんて相談しなさんな、順子奥さん。警察が動けば、証拠物件として君の恥辱的動画が大勢の目に晒されるわけだ。言っとくけど、警察なんて助平な連中の集まりだからね。大勢の女たちの調教動画と一緒に君が瞬く間に絶頂に達し、アへ貌を晒すところを捜査員にまで鑑賞され、被害者として僕から受けた一部始終に関し調書を取られるわけだな」
「ああ…」
順子は惨めな表情でカクンと項垂れる。
もはや自分に逃げ場はないのだ。
そう思うと、絶望からか、急激に眩暈が生じる。
「あ、あ…ど、どうしたのかしら」
目の前の景色全てが回転し、遠ざかっていく…。
(あ、あの時と同じだわ)
「フフフフ、君の返答は聞く必要もない。僕の手中に堕ちる運命なんだからね。下手な抵抗をされないよう、少々おとなしくしていてもらおう。なに、この店のオーナーは僕の友人だからね。君を眠らすことも織り込み済みというわけだよ、フフフフ」
「あ、ああ…」
5年前と同じ相手に同じ手法で、人妻となった順子はまたも虜の身と相成った―――。
<第六夜>蘇る恥辱の記憶…
―――意識を取り戻した順子は、かつて味わった囚われの身の感覚に、諦観に満ちた呻きを漏らした。
「ああッ…ま、まただわッ」
X字に固定された肉体の自由はなく、身悶えるたび手首足首に拘束具の感触が走る。
「は、裸で…磔なんて…」
恐怖と屈辱に唇を震わせながら、現在の危機的状況を呟いてみる順子。
順子の認識は完全に正確なものではなく、彼女は全裸ではない。
開かれた女陰を覆い隠すのは、白いオープンショーツだ。
へその下に可愛らしいプチリボンが印象的ないわゆるエロ下着だ。
家庭的でもある順子には、あまり縁のない扇情的な下着で、透ける布地の下には、陰毛が浮かび上がる。
松宮が罠にかけた女への『ステージ衣装』として用意したアクセサリーだ。
きわどい下着姿で磔にされた痴態を、真正面から狙う三脚の上のカメラを目にした順子は己の身に降りかかる厄難に思いを至らせる。
「ククク…いかがかね、ひさかたぶりに囚われの身となった感想は? 僕の動画撮影用スタジオにようこそ」
磔板の背後から、いっぱしのスケコマシの表情で現れたのは松宮透だ。
「ああ、松宮さん、これはどういうことですか!? わたしを…どうする気なの…?」
と、愚問だとは思いつつ、『囚われの身』という言葉に、奇妙な胸の高鳴りを覚え、露わになった乳房の奥で鼓動が激しくなる。
「まだわからないのかね、それともカマトトぶっているだけかい、順子ちゃん? いい加減に観念することだ。そんなエロい下着一丁で大の字磔の女が、されることくらい想像がつくだろう」
言葉を失う順子に、松宮が追い打ちをかける。
「安心しなさいって、順子ちゃん。君だっていい歳した人妻だ。ご亭主から夜な夜な愛されて、女の性感を磨き上げられているんだろう? バイブを挿入されて、振動させられた途端、世にもスケベなよがりっぷりで、潮を吹いただけじゃ飽き足らず失禁までした6年前より、はるかに成長しているだろうしねぇ」
順子の『黒歴史』ともいうべき過去の監禁体験。
それは起動させられた極太のバイブの威力に、激震とも電撃ともいうべき快楽を超えた衝撃を受け、ものの数十秒のうちオーガズムに達し、あられもない姿をこの松宮に撮影されたことだ。
「実は僕のサイトである企画を立ち上げたんだ。その名も『人妻自慰倶楽部』だ。わかるね、順子ちゃん、他人の、それも素人の嫁さんのオナニーシーンをとっくりと集めたSMモノだ。君にもぜひ出演者の一人として、痴態を晒してもらおうっていう寸法さ」
「そ、そんなッ!」
順子が悲痛の表情で、涙ぐむ。
「フフフ、僕も念願かなって、またこうして君を捕らえ、あの手この手で恥辱的な責めを与える機会に恵まれたんだ。順子ちゃんを悦ばす為、手を変え品を変え、じわじわといたぶりぬいていくつもりだから覚悟したまえよ」
「き、鬼畜だわッ、貴方は変態よ」
と、順子は気色ばむ。
しかし松宮は順子の秘めたる感覚を呼び覚ます様に、言葉でその恥辱感を昂らせにかかる。
「その通ぉーり! でも君だって満更でもなさそうじゃないか? ククク、そんなに乳首をおっ勃てて…。おやおや、ショーツが湿っているじゃない?」
「い、いや、そんなことッ…あるもの…ですか…」
声音に説得力が伴わない順子。
そこを松宮は見透かしている様子だ。
「磔にされると気分が変わるでしょ。そのどでかいおっぱいの下で、処女喪失の時みたいに心臓がバックンバックンって感じかね? さしずめ、気分は虜の身のお姫さんってとこか」
嘲笑交じりの突っ込みだが、順子の圧し殺そうとしている淫乱な感覚は、まるで柔肌を守らんとする乙女が暴漢から下着を取り去られるように、乱暴かつ巧みに露わにされてゆく―――。
(続く)
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