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事故物件のオンナ-1話



作家名:ライア
文字数:約4580文字(第1話)
公開日:2019年1月13日
管理番号:k014


挿絵の官能小説画像

0



「ふう、ただいまぁ」
誰も居ない独り暮らしのアパートの一室。
なんとなくただいまなどと言ってはみたが、返事などあるはずもない。
少し切ない気持ちになるが、仕方ない。

駅近2LDK家具付き。
こんな物件を、しかも格安で借りられるなんて、私ってばツイてるんじゃなかろうか。
特にどこか古いわけでもなく、築10何年の小綺麗なアパート。

一つだけ問題があるとするならば、この部屋が事故物件だということぐらいだろう。
この物件を不本意そうに紹介してくれた不動産の人によれば、つい数年前に前の住人がこの部屋で自殺して、幽霊が出るらしい。

「ま、そんなのいるわけないしねぇ、あほらしー!」
私はこの通り、昔から幽霊は信じないタチだ。
もし、幽霊が実際にいるにしても、驚きはするだろうが、怖いとは思わないだろう。

そんな私がこの格安物件を逃す理由はなく、即決でここに住むことに決めたのであった。
この上質そうなソファも、テレビなども、前の住人のものらしいが、不動産屋曰く、勝手に使ってもいいとのことらしい。

人の物ではあるが、特に気にはならなかったし、寧ろお金に余裕があるわけではなかった私にとってはとても助かった。
肝心の家具は簡単に掃除すれば使えるものばかりであったし、ありがたく使わせてもらっている。

そもそも、なぜ私が急に引っ越しなんてしたのかというと、良くある話、失恋が原因だった。
数年前から付き合っていた彼と二カ月ほど前から折が合わなくなり、ついに別れることなってしまったのだ。

彼と出会った当初は、やれ運命だ結婚だなどと浮かれたものだが、こんなに簡単に別れることになるなんて、世の中わからないものだ。

「はぁ…。…あーだめだめ!思い出してもつらいだけ!引きずってても何も始まらない!」
そうだ。
気持ちをリセットするために越してきたというのに、ブルーになってちゃいけない。

とりあえず軽く夕飯を済ませて、風呂に入ってゆっくり寝よう。
寝る前にプリンも食べよう、そうしよう。
私は立ち上がって意気込んだ。

社会に出たばかりの私はあれやこれやと仕事を覚えたりするだけで、毎日が過ぎていった。
毎日が忙しくて、このままここで生活を続けていれば、彼のことはすぐに忘れられるような気さえしていた。

ご飯も風呂も済ませた私は、買って帰ってきたお気に入りのコンビニのプリンもぺろりとたいらげて、倒れ込むように布団に潜り込んだ。

ドンドン、ガタッ。

「…んあぁ〜、またかぁ」
ここに住み始めてから、数日。夜中に物音がするくらい、事故物件でなくとも、アパートではよくあることだろう。
最初は慣れるまでの我慢だと思っていたが、その音は日に日に大きくなってきていて、遂に今日は私の眠りを阻害してくるほどだった。

ガサガサ、カタッ、ギシィ。

いつもより、かなり大きい。
隣のOLだろうか、それとも上のサラリーマンか。
こんな夜中に?
いや、それにしては、なんだか物音が近い気がする。
まるで、この部屋にもう一人誰かがいるような、そんな気配。

私は少しどぎまぎ緊張しながら、暗い部屋の中で目を凝らした。
しかし、目が眩闇に慣れてきても、誰かがこの部屋にいる様子はない。
物音だけが段々と近づいてきている。

「ひゃ…っ?!えっ、ちょ…っ?!」
掛け布団がひとりでにめくれる。
もちろんそこには誰も居ない。
私は混乱し、動けないでいた。

ギシ、ギシィ。

安物のベッドのスプリング。
間違いなく、そこに“誰か”がいるのだ。
目には見えないが、今、私の上に誰かが覆いかぶさっているのは確かだった。


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「だ、だれ…っ」
しかし、その“誰か”からは、どうしてか敵意や狂気のようなものは感じなかった。
私を取って食おうなどと言った雰囲気はまるでなかった。
寧ろ、包み込むような優しさを感じる。

そして、ソレは仕事や私生活に疲れた私を労わるように、ゆっくりと頭を撫でてくる。
微動だにできない私は訳が分からず、ソレの好意を静かに受け入れることしかできなかった。

まさか彼と別れたショックで、こんな偶像を作り出してしまったのだろうか。
それとも、これはただの夢か。
「あっ…、ちょっと…、だめっ」

ぼぅっと考えていると、ソレは私の身体をまさぐり始め、私は思わず声をあげた。
するり、するり。
さわさわ。
テロテロな薄いルームウェアの上から、愛撫するかのような気配。

さわさわ。
するする。
顔、首、鎖骨、肩。
さわり、するり。

胸の横はさっとすり抜けて、腰はゆっくりと行き来したりしている。
身体のラインをなぞるようなペッティングは、私の体温を少しずつ、少しずつ上げていった。
「んっ…、あぁ…っ」
部屋の中で一人、喘ぎを漏らす私。

大事なところは敢えて避けるように私を焦らされる。
ソレは私の腰あたりを特に気に入ったらしく、優しい手つきでくびれや臍を厭らしく愛撫した。
「んぅ…、そこばっかり…、あぁ…」

状況の異常さなんて、最早忘れていた。
私は耐え切れなくなって、太腿をもじもじとさせてしまう。
セックスは随分ご無沙汰で、オナニーすらも忙しくてする暇などなかった。

その上、こんな風に厭らしく焦らされるなんて、意地悪な幽霊だ。
腰だけでビクビクと身体を震えさせてしまう。
「あぁ…、だめ…っ、だめぇ…っ」

力なく、うわごとのように抵抗する。
しかし本当は、早く刺激が欲しいという淫らな欲が渦巻いていた。
「こっちも…、してよぉ…」

私は自らルームウェアを脱ぎ、下着姿になって誘った。
脚を拡げ、愛液で濡れた下着を見せつけた。
今日の下着はどんなだっただろう。

そもそも幽霊に下着の柄を気にすることはあるのだろうか。
考えているうちに、ソレの手は私の太腿へと伸び、またゆっくりと撫で始めた。
ソレは人間のような形をしているようで、太腿の内側を指先で無造作に動かしてみたり、手の平で擦り上げるようにしてみたり。

ソレは未だに大事な部分には触れようとしなかった。
もはや私のショーツは期待のあまりにびちゃびちゃになっているというのに。
「んぁ…っ、はぁっ…、ここ…おまんこ…はやく…ぅ」

こんな卑猥な誘惑、したこともなかった。
元彼はかなり性急で、誘う間もなく挿入されたものだった。
この幽霊は少し意地悪な性格をしているのかもしれなかった。

幽霊はよくできました、と言わんばかりに私の頭を撫でてから、下着の上からしなやかな指先でするりと秘部を撫で上げた。
「あぁっ!…ひっ、ひぅんっ、あぁんっ、あぁあっ」

直接触られたわけでもないのに、私は恥ずかしくも浅ましく喘いだ。
ぞくぞくと駆け抜ける背徳感が、私を快楽の沼へとずぶずぶと引き込んでいく。
「ひゃぁ…っ、んぅ〜!んっ、あぁっ、ひぃんっ」


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ソレはしつこく、そしてわざとらしく音を鳴らすように、くちゃくちゃになった秘部を擦り上げる。
私の下着は既にヌルヌルになっているみたいだった。
指が下着を滑るだけで、くちゅん、くちゅっ、と淫猥な音。

恥ずかしい。
誰だかわからないけれど、こんなにびちょびちょに濡らしているのを聞かれていると思うと、羞恥で顔が真っ赤になってしまう。
「あぁんっ、もっとぉ…もっとぉっ」

腰が一人でに浮き上がり、更なる刺激を追う。
得体の知れないソレに押し付けるように求めた。
ショーツの中はむわむわと湿り、おもらしでもしたかというほどに濡れている。

もっと、もっと触ってほしい。
その優しい手つきで絶頂まで誘ってほしい。
私はくらくらと熱い頭でそんなことばかり考えていた。

そんな私の思考を感じ取ったのか、ソレは急に激しく私を追い詰め始めた。
くりくり、カリカリ。
下着の上から爪や指で的確にクリトリスだけをいじめられる。

クリクリ、カリッ、カリッ。
カリカリカリカリッ。
「んんッ!…ッあぁ…ッ!あひぃッ、んぃッ」

一層激しくなっていく愛撫に、私は逆らうこともできない。
求めていた刺激よりも、酷く官能的で厭らしいのに、まだ欲しくなってしまう。
もっと乱してほしいと思ってしまう。

「あぁっ…んっ、はぁっ、もっとぉ…、んっ、くぅんっ」
 直接触ってほしくて、濡れて重たくなったショーツも鬱陶しい。
私はショーツを興奮と期待で手が震えるまま脱いだ。

まどろっこしくて、片足にかかったままの状態になってしまった。
ようやく外気に触れた秘部の入り口は、くぱくぱと誘うように開閉している。
間もなくそこに、硬いものが当てられた。

幽霊にも付いているんだなんて的外れなことがふと浮かんだが、直ぐに身体は受け入れようと疼き始める。
夢なら、それでいい。
こんなにも気持ちよくしてくれるなら、今だけこの幽霊に委ねてもいいような気がしていた。

「…いいよ、来て…っ」
尋ねられてもいないのに、私はそう答えた。
なんとなく幽霊が戸惑ったように感じたから。

私は自ら腰を進めて、ソレをナカへと誘いこんだ。
ずぷぷ、ぬぷっ。
やけに質量のあるソレはまるで人間のモノと同じだった。

焦らされていた私の秘部は、卑しい音とともに悦ぶようにすんなりとソレを飲み込んだ。
「あ“…ッ、あひぃぃッ!…んっ、くぅぅ〜ッ!」
内側からゾリゾリと這い上がってくるような異様な気持ち悪さと絶望的なほどの快楽。

セックスとはこんなに気持ちいいものだっただろうか。
私は我を忘れたように喘ぎ、恍惚した。
「あっ、あっ、あぁぁっ!んぅっ、ひゃぁぁ…、あぁ…っ」

パンパンッ、ぬちゅり、ぬちゅりっ。
強弱をつけた責めとどこか優しいセックスに私は一瞬で堕とされた。
私は見えないものに犯されている。

好きなようにされて、激しい快楽に無理やり屈服させられている。
そんな屈辱的な背徳に酔いしれる。
「もっとぉっ、もっと犯してぇっ!もっと気持ちよくしてぇっ、あぁっ」

絶頂が見え始める。
身体をくねらせて求めた。
奥まで欲しい。
激しく犯してほしい。

目の前には誰もいないのに、私の身体はその“誰か”を求めていた。
「あぁ〜ッ!それだめぇっ、んんっ、はぅんっ!あぁっ、そこ好きッ!んっ、もっとぉ、もっとしてぇぇ〜ッ」

ぐりぐりと奥を抉られながら、腰を小刻みに揺らされる。
痺れるような感覚が全身を巡り、頭が熱くなる。イキたい。それしか考えられない。
「あぁっ、イクぅッ!だめ、イっちゃうぅッ!激しッ、激しいのキちゃうっ、んんんっ、はぁっ、ひゃぁぁっ?!」

ズズッ!勢いよく突き上げられ、私は絶頂した。
「イクイクイクぅ〜ッッ!!」
私ははしたなく叫んでいた。

久しぶりに体力をありったけ搾り取られるような激しいセックスをした。
私は誰かもわからない幽霊に犯されてイってしまった。
「はぁっ、はぁっ…、はぁっ」

肩で息をしながら、私は無理やりに眠りの波に呑まれていった。
私は思考を手放して、疲れ切った身体をベッドに預けた。
眠るまでの間、また、頭を撫でられているような気がした。


1



次の朝、スマホのアラームでいつも通りの時間に目を覚ました。
寝起きでぼぅっとする頭の中、昨日のセックスを思い出し、ハッとする。
見回せば、シーツは乱れ、髪もぐちゃぐちゃだ。

何より汗ばんでいるのが気持ち悪い。
「あぁ、やっぱり昨日のは…」
本物の幽霊だったのだ。
しかし、昨日ソレが喋ることは遂になかった。

どういう意図で私を抱いたのか、どうしてあんなに優しくしたのか、わからないことだらけだった。
もしかして、ここで自殺した人と関係あるのかもしれない。
「とりあえず、シャワー浴びて会社に行かなきゃ」

今ここで悩んでいたって解決しないだろう。私は伸びをして、立ち上がった。



(続く)





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